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婚約者は語る

主人公以外の視点になります。

やあ、良く来てくれたなラフィーニ。


そう固くならないでくれ。

此方が無理を言って来てもらったのだ、大抵のことでは咎めないさ。

もっとも、貴方は社交界に出ていてもなんの心配もせずにすむ貴重な友人の一人だとハーディも言っていたぞ?

だからそう、気楽にしてほしい。


とは言え、貴方も国境軍のや、回りくどいのは嫌いだろう?

ハハ、そうだよハーディの受け売りだ。

彼らはみんな話が長いと機嫌が悪くなるから注意しておいたほうが良いとな。

だが、貴方はそうでもないのかな?

なんだか夜会で会うより穏やかな表情だ。

……あぁ、マハルバル伯爵か。

確かに彼女は辣腕に見合った性格だったな。

そんなご当主の目が光っていれば緊張するのも納得だ。

ここには告げ口するような者もいないから安心してくれて良いぞ。



さて、今日来てもらったのは他でもない、貴方に相談したいことがあるのだ。

実は先日、ハーディに指輪を貰ってな。

ありがとう、そう、今も着けているこれだよ。

この石はハーディが討伐した魔物の核石を使ってくれたらしい。


…………わかるか?

そうなんだ、この核石は聖魔術での祝福が付与してくれてあるんだが、どうも複数の効果発現までさせてあるようなのだ。

……あぁ、恐らくは勲章扱いになった討伐対象の内、何れかの魔核だろう。


いやいや笑い事じゃないだろ?

ハーディらしいって……だがあれらは全て三級以上の危険度の魔物なんだぞ?それをこんなあっさり……


む、確かにハーディにとってみれば大した敵ではないのかもしれないが……。

だがそれでもな、


うぅん……、それはそうかもしれないが。


まぁな、ハーディにとっては数ある魔核の一つでしかないのだろう。

きっとこれからも増える一方だろうしな。

心配ではあるが、ある程度は諦めて予防線だけ張っておこう。


そりゃあ学院時代にあれだけ簡単にあしらわれたのだ。

俺ではハーディの限界なんて分からないさ。

三級でも雑魚扱いならハーディが対等に戦うレベルなんてまともに予想もできないよ。

あの日決闘で見せてもらったあの圧倒的な強さですら、正直どれだけ加減しているのかも分からない。


なに?

ラフィーニにも分からないのか?

本当に底の知れない強さだな…………まぁ、そこがまた格好良いのだが。


いや、すまん、ついな。


おぉ、分かってくれるか!

だよな?そうだよな?

だってあの強さだ、武に触れたことがあるものなら誰もが一度は必ず目を奪われる……奪われずにはいられないに違いない。

あんなにも眩い光は他にないとも。

気付いたが最後、目を逸らすことなんてできないさ。

あの輝きはまるで麻薬のようですらあるよな。


え?


………………まて、ちょっと待ってくれ。

なんでラフィーニがそれを……は?ガイウスが?

なんでアイツが…………なに?ハーディの家に遊びに行っているのか?ガイウスが?


…………………………………………。


………………………………。


……………………。


…………なるほど。

俺の耳目がわりに向かわせていたのにあっさり見破られた挙げ句、まさか対象の家に堂々と訪ねていたとは。

いや、全く思いもよらなかったなぁ。

ラフィーニ、貴重な情報をありがとう。

とても役に立ったよ。

あとで何か礼をさせてくれ。


んん、確かにそこまで知られてしまっているならもう今更秘密でもなんでもないかもしれないが…………分かった、なら礼の代わりにもう少し白状するよ。


但し、他言は無用だぞ。

これ以上広められてはかなわないしな。


そうだな、うん、確かに俺がハーディを好きになったのは交流戦で対峙するよりも前だ。

名前だけはハーディが入学するときにはもう報告が上がっていたし。


うん?そりゃあハン氏の主筋だからな、最低限の情報くらいは押さえているよ。

ハン氏以外の二氏や主要な貴族達のことだって知らない訳にもいかないだろう?

勿論マハルバル家の長男であるラフィーニのことも聞いていたぞ?

悪い話はなかったからそんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫だ。


まぁ、そういうことでハーディについて話だけは知っていた訳だが、実際に目にしたのは俺が正学院に入学して二年目……つまりハーディやラフィーニの入学した年の交流戦だった。


いや、俺は観覧席から見ていただけだよ。

出ているわけないじゃないか。

二年といえばまだ十五だぞ。

身体が出来上がりつつある上級生たちに敵うわけないだろう。

ハーディが特別すぎるんだ。

だってあの時のハーディはまだ入学した初年だろう?

だというのに選考に入っている方がおかしい。

しかも三部門全てで大将とか、とんでもなさすぎる。


士官学校は入学にも卒業にも年齢制限がないのだから余計に差がありそうなものだというのに。

開催前に聞いたときは報告してきた相手にしつこいほど確認してしまったくらいだ。

その時はとりあえず流石はハン氏と思って無理やり流したが、当日までは正直なところ半信半疑だったよ。


だが、実際の試合を見て、納得した。

最初にあった武術の立合い……あの時、あの空間だけ、時の流れが変わったのかと思うくらい衝撃的だった。

あんなにも圧倒的な恐ろしさを、俺はそれまで全く想像もしたことがなかったよ。

指南役も衛兵も、我が父上の護衛を見た時ですら、あそこまで鮮烈な恐怖と死の予感を感じさせられたことはない。

ようやくまともな思考が戻ったのは次の魔術の試合がいくつか消化された後だったくらいに。


もっとも、その後また大将でハーディが出てきたから僅かな時間でしかなかったけどな。

そこからは戦略が終わるまでずっとハーディは出場し続けるから俺も結局ずっと見とれっばなしだ。

ルゥ=プスの申し子という評判は全く誇張ではなかったとはっきり認識させられたよ。

本格的に好きになったのはもう少し後だが、あの交流戦が一番初めの分岐だったことは間違いない。




しかし、前から聞いてみたかったのだが、ハーディはいつからあんなに強かったんだ?

どう考えても入学以前から相当な力があったと思うのだが。


…………そうか、やはりそんなに幼い頃から才能が開花していたのだな。

その割には名が知られていない気もするが、バルカ卿の考えがあったのかな?


そういえば、もうひとつどうしても聞いておきたかった事があるんだが、良いか?


その、………………、


…………ラフィーニは何時ハーディの妻になるんだ?


だって幼馴染なんだろう?

幼い頃からいつも隣でハーディと過ごしていたんだろう?

士官学校でだってずっと一緒だし国境軍でもパーティーを組んでいるんだろう?

そんなに長い間あんな魅力的なハーディと共にいて好きにならない訳がないじゃないか。

ただでさえ最近はハーディの存在に気付いた令嬢達が一斉にライバルに変わりつつあるというのに、幼馴染なんて……!

手強すぎるだろう!

あの優しいハーディが長年側にいて好感を持っているラフィーニの申し出を断るとは思えない。

いつだ?

せめて予告しておいてくれ……!

俺にだって心の準備が必要なんだ、ちょっとくらい猶予をくれたっていいじゃないか!

ラフィーニ相手に反対なんてしない、約束する。

それだけは誓ってもいい…………そんなことをしてハーディに疎まれるくらいなら、




…………泣いてなど、そんな顔もしていない。

だが悪かった、確かに取り乱してしまったな。

もう大丈夫だ。

落ち着いたから、しかし、各家でも擦り合わせや都合があるのは間違いない。

もし既に希望している時期などがあれば教えてほしいのは本当なのだ。

だから、


…………え?

なに、…………だって……、

結婚しないなんて………………なに言ってるんだ?


ハーディだぞ?

幼馴染なんて素晴らしい立場にいるのに、連れ合いにならないなんてありえないじゃないか。

あ、もしやまだ言えないということか?

何かハーディと約束しているのだろう。

すまない、でしゃばった真似をしてしまったな。

分かった、それならば大人しく時期を待とう。

ハーディとラフィーニなら悪いようにはしないだろうしな。


は……?

ありえないとは、どういうことだ?

……??

ハーディはそういう対象ではない、とは?


???


ハーディを好きなら結婚するのではないのか?


……好きだが、結婚はしない?

なにを言っているんだ??


?????


…………………………………………、


…………………………。


……………なるほど。

そうか、ラフィーニはハーディとそんな約束をしていたのか。

確かにそれであればハーディは結婚相手にはならないな。


すまない、深読みしすぎてしまったようだ。

失礼なことを言って申し訳なかった。

うん、ごめん、俺もちょっと心配しすぎているのはわかっているのだが……。


だが、そういう幼い頃の約束とかはいいな。

やっぱり少しラフィーニが羨ましい。


いや、そういう訳ではないのだ。

あんなに素晴らしい人なんだから、大勢の相手に好意を持たれ多くの家と縁を繋ぐのは当然だ。

それは勿論わかっている。


だがそうなると、やはり……な。


俺は初めから押し掛けているし、それを成立させるためにハーディには英雄の位を取ってもらうような無茶もさせてしまった。

勿論、ハーディなら英雄になるのも時間の問題だっただろうし討伐も簡単なことだったのかもしれないが、だからと言って甘えてばかりいるのではすぐに愛想を尽かされてしまうだろう?

顔を合わせるとつい我が儘も言ってしまいがちだし……。


む、だってハーディはあんなに格好が良いんだぞ。

ラフィーニは別としても誰だって好きになるに決まっている。

コニーに独占されるならともかく、大勢の中で自分にだけ視線が向かなくなったらと思うと怖いよ。

ハーディはそんなことしないと思っているけどさ。


夫として妻を複数人を迎えることは考えたこともあるが、複数人の一人になるなんてこと、一年前は考えたこともなかったよ。

覚悟はしたつもりだったが、妻というのは改めて凄い人達だな。


え?

ベタ惚れって……それはそうだが、

違う?

違うって何が……、

ハーディが……?

メ、メロメロ!?

だれがっ?!だって、そんな、


…………うそだろ?

まさか、だってそんな素振り全然、


……本当に……?

そんなに違うか?


もしそれが本当なら、そりゃあ嬉しいけど、


いや!違う!

そうじゃない、ハーディはちゃんと俺を好きだと言ってくれるし特別扱いもしてくれてるんだが……でもあんまりスマートで格好いいから……その、単に王子だからそうしてくれている部分もあるのかと……。


………………本当に?

俺たちを相手にしている時はそんなに違うのか?

甘々って…………そうか、でも幼馴染のラフィーニがそう言うならきっとそうなんだろうな。


……え?

誰から見ても分かるって?

そうか……?


指輪……そうだな。

確かに、これだけのものを渡してくれるほどには思われているとちゃんと信じなくてはな。

ハーディは吝嗇ではないが、価値も分からずばらまくような人でもない。


そうだ!

指輪だよ!

そもそも、今日ラフィーニに来てもらったのはこの指輪のお返しを一緒に考えてもらえないかと思って呼んだのだった。

ハーディの好みを教えてもらおうと思ってな。

話が逸れてすっかり別の相談をしてしまった。

すまなかったな、だが、話を聞いてもらえて良かった。

本当にありがとう。


……ん?

なんだ?

………………そうか、分かった。


ラフィーニ、どうやらコニーが訪ねてくるようなんだが、この場に加えてもいいかな?

恐らくコニーの相談も俺と同じことだと思うから。


むぅ……からかわないでくれ。

それは勿論、俺の指輪と同じハーディからのプレゼントについての相談だよ。

ハーディはなんでも喜んでくれそうだが、どうせならもっと喜んでほしいし。

しかし手持ちの情報ではハーディの好みが殆ど不明でな。

きっとコニーも困っているはずだ。


そうか、ありがとう。

ではもう暫くしたら来るだろう。


おや……?




「コニー」




リオ様、ラフィーニ様ごきげんよう。

突然の訪問にお応えいただき感謝いたします。


うふふ、急に申し訳ありません。

だって待ちきれなかったんですもの。

急いで来てしまいましたわ。


でもリオ様のお返事はちゃんと待ちましたのよ?

隣のお部屋でですけれど。


もう、お二人だけで相談なんてずるいです。

私も一緒にハディ様へのお返しを考えたかったですわ。

まだ決まってはおりませんこと?


……良かった、また一人で悩むことになるのかと思ってしまいましたわ。


それでラフィーニ様、ハディ様はどんなものがお好きなの?

お菓子とか?

お酒のほうが良いのかしら?

ハンカチやチーフに刺繍をしたものでは華美すぎる?

鎖飾りや指輪ではお仕事の邪魔になってしまうかしら?

お洋服なら三人で揃うように誂えたいわ。

それとも本や魔術具のほうがお好き?


いろいろ調べてみたのですけれどハディ様にはこれといったご趣味もお好きなものもあまりないようですし……。


まぁ、やっぱり!

ラフィーニ様から見てもお仕事がご趣味なのですわね。

なんて真面目な方なのでしょう……!

さすがハディ様ですわ。


でも、そうしますとやはり少し悩んでしまいますね……。


……え?

宝石、ですか?

ドレスも?

だれが?

花束を抱える??

私たちが??


?????

それはいったい、どうして……、


……………………。


えぇ??

それでハディ様が喜んでくださるのですか?

それだけで?

なぜですの?


まぁ!ラフィーニ様ったら……。

ハディ様には私たちの笑顔が一番なんて、お上手ですこと。

もしそうならとっても嬉しいことですわ。


でも今回はそれじゃダメなんですの。

だって折角ハディ様からこんなに素敵な贈り物を頂いたんですもの、私たちだって形に残る物をお渡ししたいですわ!

それで、それを見るたびにちゃんと私たちのことを思い出していただきたいのです。

ねぇリオ様?


そんな……、なんて呑気なことを仰いますのラフィーニ様!

相手はあんなに素敵なハディ様ですのよ?

あんなに素敵で、お優しくて、お強くて、気高くて、スマートで、頼もしくて…………一番素敵な方なんですもの!

今こうしている間にもハディ様に憧れる方はどんどん増えているのですわ!

油断大敵ですのよ。


え?

私がですか?


いいえ、まさか。

ハディ様は誰よりも素晴らしい方ですもの。

たくさんの方を妻として受け入れられるのは当たり前のことですわ。

私たちと一緒に旦那様を支える方が増えるのは喜ばしいことです。

反対なんて。


でも、その分共に妻となられる方はしっかりチェックさせていただきますわよ?

だってハディ様はお姿も立ち居振舞いも素敵ですけれど、同じくらいとってもお優しくて細かいところまでちゃんと目を配ってくださるんです。

だから、ハディ様がなんとも思っていなくても、少しでも優しくしていただいた方たちはきっと皆すぐに好きになってしまいますわ!


いくら認めているとはいっても、そんな軽い気持ちの方まで迎えていたらあっという間にお城いっぱいくらい奥様が出来てしまうに違いないですもの。


そうでしょう?

やっぱり、リオ様ならわかってくださると思っておりましたわ!

ティベリエったらハディ様はさすがにそこまでは好かれないでしょうなんて、全然わかってくれないんですのよ?

ハディ様はあんなに格好良いのに。

もう。


それに、せっかく今は私とリオ様だけしかいないんですもの。

たくさんアピールして、たくさん振り向いていただいて、たくさんたくさん好きになっていただきたいの。


今なら私とリオ様で、ハディ様の両目を独占!ですわ!

両手だって一人ずつ繋いでもぴったりですのよ?

ふふ、食事の席だっていつも隣の席に座れてしまいます。

こんなに素敵な特権を使わないなんて勿体なさすぎますでしょ?

人数が増える前しかできませんもの。


え?

うぅん…………他の方が増えるのが心配でないのかと仰られましても……、


そうですわね…………正直に申しまして、まったく心配ではありませんわね。


だって、お相手がハディ様ですもの。

ハディ様は世界で一番、いっちばんっ!素敵な旦那様ですのよ?

そんな方が私たちを愛していると言って、幸せにすると約束してくださったんですもの。

そう言ってくださった以上、ハディ様は私たちが傷付くようなことは絶対になさいませんわ。

えぇきっと、天地が割れてもハディ様のお言葉は覆らないにいがいありません。


もし新しい出会いによってどんなに素晴らしい方にお会いしたとしても、ハディ様がその方だけ、ただ一人だけを見ることはないでしょうし、その方と私たちが合わなければ妻としてお迎えになることもないでしょう。


だってハディ様はこの世で最も誠実で、高潔な方ですもの!

私たちが少しでも不幸に思うような選択をなさるはずがないのです。


だから私たちはハディ様を信じて、向けていただける愛情に全身全霊で向かい合うのを最優先にするべきです。

その結果として私たちが心のままに愛を伝えても、ハディ様は必ず全て受け入れてくださいますわ。

絶対です!




…………あら?

まぁ、ラフィーニ様、どうしてそんな顔をなさいますの?


えぇ?

何故ですの?

恥ずかしくなんて……どこがですの?

ねぇ?

そうでしょうリオ様?


ふふ、おかしなラフィーニ様。

一番心配だった婚約者の座は認めていただけたんですから、もう不安なことなんて何もありませんわ。

これからは私たちがちゃんと愛をお伝えし続ければ、絶対に幸せな家庭が築けますから。

えぇ、絶対に。


だって私たちの旦那様は、世界で一番素敵なハディ様ですもの。




_

主人公以外の視点……難しいですね。

その内また別の誰かでリベンジしたいです。


コニーは主人公と同じくらい主人公に幻想をいだいています。

が、概ね主人公の目指す方向と合っているので齟齬は生じません。(笑)

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