Epilogue
「ユウ兄、ユウ兄」
からだをゆさぶる手。
意識をゆさぶる声。
もう朝か?
そんな寝ぼけた思考を振りはらい、現状を思い出す。
「ミイ、無事か……」
応えつつ顔を上げると、ミイが泣きそうな顔で、その場にへたりこんだ。
「死んじゃったかと、思った」
「そんなにヤワじゃない」
俺は頭を振りつつ立ち上がり、ミイに手を貸した。
「クゥとカチュターシャは……」
「まだ意識はないけど、だいじょうぶ」
「ともかく、ここを出よう」
とっくに死んだ船。
長居は無用だ。
クゥたちを持ち上げようとする横に、ミイがきた。
「どうした?」
「手伝う」
言うと、ミイは「んしょ、んしょ」と、カチュターシャのからだの下にすべりこみ、背中で持ち上げた。
「ぬう」
「重いだろ。俺がやるから」
「ひど! 女の子に重いとか言わないであげて!」
「いや、意識のない人間っていうのは重いんだよ」
「このデリカシーなし!」
「わかったわかった」
俺は苦笑する。
「まかせてもいいか?」
「もちのろん」
ミイは親指を立て、エルフを背負って歩きだした。
船は、完全に静止しているようだった。
俺たちは、ゆっくりと廊下を進む。
「……運動不足を、痛感、なう」
息切れしながら、ミイがつぶやく。
「あとっ、どのくらい、だっけ」
「もうちょいだ。がんばれ」
「おう……」
やがて、目的地が見えてくる。
俺たちは、クゥとカチュターシャをその場に下ろし、息をついた。
船の出入り口。
このさきに、なにが待ち受けているのか。
ボタンを押し、扉が開いた。
出口からさしこんでくる太陽の光に、俺は腕で視界をさえぎった。
そのすきに、ミイが横をすり抜け、外に出る。
「こらミイ、俺がさきに――」
俺は腕を下ろし、広がる青い空と同時に、だいじな人のすがたを見た。
「朝陽だよ、ユウ兄」
ミイがふりかえる。
その手をさしだす。
俺はミイのやわらかな手をにぎり、外の世界へと踏み出して、彼女とならんだ。
空の青が目にしみる。
視覚のシステムに微々たる不具合が生じているらしく、まぶしい。
慣れるまでのあいだ、俺は考える。
ここはどこだろう。
地球だろうか? 異世界だろうか?
ここはいつだろう。
過去か? 未来か?
考えてもしかたない。
ともかく、どこかで、いつかなのだ。
今度は、どんな世界にたどりついたのか。
「行こう」
ひとつだけ、たしかなことがある。
俺にとって、たったひとつの、たいせつなこと。
つないだ手と手のあいだ――ぬくもりが、教えてくれること。
「万事おっけぃ」
ここは、ミイのいる世界だ。




