好きだよ
一年半後――。
「太田! 遅いって!」
「わりーわりー。電車乗り遅れた」
私と太田は、中学校に近い駅にいる。
今日は、太田が帰ってくる日だ。
私と太田は無事に志望校に入学した。私は地元の普通科のある学校、太田は他県のスポーツ専攻のある高校。
「ったく、久しぶりに会えるってのに、気を緩めんな」
「しょーがねーだろ。この辺、一本電車逃したら、次一時間後だぜ?」
そう。今日会うのはとても久しぶりなのである。
私はバイトをし、太田は部活で忙しい。二人の休日が合う日が中々なかったのである。そのため、今日は一年半ぶりの再会である。電話やメールはしていたが、やはり生で会うのが一番である。
「ほらもー、早く太田ん家に行くよ!」
「えー」
「勉強全然出来てないんでしょ? 留年してもしらないよ」
「なあ、古和田。明日もバイト無しだろ? 泊まってけよ」
「別にいいけど、寝るまで勉強するからね」
「……寝るとき古和田を抱き枕代わりにしていい?」
「だめ」
私はきっぱりと断ると、太田の腕をつかんで歩き出す。
「あ、ちょっと待って」
太田が、そう言った。
「行きたいところが、あるんだ」
太田に連れられて来たのは、墓地だった。
少し歩くと、『小倉家之墓』と掘られているところに着いた。
そうか。二年前の今月、小倉さんが亡くなったのか。
太田はしゃがむと、手を合わせる。私も太田のとなりに座り、手を合わせて目を閉じた。
小倉さんとはあまり話したことはないが、西田くんから少し話を聞いたことがある。亡くなった後だけど。
小倉さん。西田くんは、元気にしているよ。今は機械系の学校に入って、ちゃんと友達も出来ているらしいよ。小倉さんが亡くなってから、少し元気が亡くなってたけど、心配しなくても大丈夫たから。
ところで、小倉さんは西田くんのこと、どう思っているのかな? どうやら、西田くんは小倉さんのことが好きみたいだけど、小倉さんはどうなのかな? 両思いだったら……とても悲しいけど、西田くんは今でも小倉さんのことが好きだよ、きっと。
あ、ちなみに私は太田と三年くらい付き合ってるよ。……なんて、自慢っぽいかな?
あんまり長話もなんだし、このくらいにしとくね。
私は目を開け、立ち上がった。
太田は、まだ手を合わせている。
そして目を開けると、
「俺は、全部覚えてるぜ」
と言った。
太田は立ち上がる。
「よし、いこうぜ」
「ねえ、さっきのどういう意味?」
私の顔を見ると、顔をくしゃっとさせて笑う。
「バカにしかわかんねーよ」
「はあ?」
「帰ろうぜ」
どうにも気にくわないが、私は太田が差し出した手を握った。
「なあ、太田?」
「あ?」
ふと空を見上げると、私は顔を緩めた。
「好きだよ」
空にはハートの形をした雲が二つ、並んでいた。




