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居候従兄妹と株取引の青春ラブコメ  作者: まるせい


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第八話

 ◆陽菜視点◆


「この辺は遊ぶ場所が一杯あるから、近所の学生達が休みによく来るんだよ」


 茉莉花さんに誘われるままに歩いていくと、賑やかな繁華街に到着しました。

 アウトレットモールに映画館。ゲームセンターやカラオケにボーリング場。フィットネスクラブ等。様々な娯楽施設が立ち並ぶそこは様々な人々で溢れていました。


「凄いですね。皆楽しそうにしています」


 春休みという事もあり、学生が多々見られる。その内の半分ほどは男女ペアで構成されているので休日デートを楽しんでいるのでしょう。


「陽菜ちゃんは苦手な施設ってあるかな? 私はプールとかはちょっと……」


「特にはありません。それにしてもスポーツが得意そうなのに泳ぐのは苦手なんですか?」


 一見すると何でも出来そうなオーラがある茉莉花さんなのですが、人は見かけによりません。


「別に泳げるんだけどさ……。その…………男の子の視線が…………ね?」


 そう言って恥ずかしそうに俯きました。

 なるほど。確かに私でも彼女を見てしまうかもしれません。


 均整に整ったプロポーションは溜息が出るほどに美しく。健康的な肌と明るい表情はこの上なく魅力的です。


「そう言われると私もプールはちょっと…………」


 男の子の視線については私も体験があります。竜也さんですら時々エッチな視線を向けてくることがあるので仕方ない話だと思うのですが、積極的に見せたいものではありません。


 二人の満場一致でプールは無しになりました。


「それじゃあカラオケにしよっか? 持ち込みオーケーの所があるからコンビニでお菓子と飲み物買って行こうよ」


「そうですね。偶にはぱーっと歌うのもよさそうです」


 彼女の提案に乗ると私達はコンビニへと向かい、お菓子と飲み物を調達しました。

 そして二人してカラオケ店の入り口に差し掛かった所で。


「あれって峰岸君じゃない?」


 茉莉花さんが指差した先には毎朝真っ先に顔を合わせる男の子が居ました。


「そのようですね。カラオケから出てきましたね」


 どうやら今までカラオケをしていたみたいです。あと少し時間がずれていたら店内で出くわした所ですね。

 そんな彼の隣には連れがいました。


 金髪碧眼にドレスと言われても納得できるぐらい高価そうな服。何より目に止まるのはその美しい美貌。

 彼女が立ち振る舞うたびに周囲はその挙動を追いかけてしまう。


 そんな不思議な魅力を持つ少女。


「茉莉花さん。あの人は…………?」


 私は竜也さんの隣に居る人物が気になりました。


「アリス=ゴールドマンさん。私達と同じ中学出身で成績学年1位の天才だよ」


 彼女の説明を聞きながら私は二人から目が離せませんでした。

 竜也さんはというと楽しそうな雰囲気でアリスさんに話しかけています。対するアリスさんは面倒くさそうな雰囲気こそ出しているものの気を許しているのか口元を緩めて彼に答えています。


 二人の足がレストランに向かうと、二人して店の中へと入っていきました。

 そして暫くすると窓際に向かい合って座る二人が現れます。


 あまりにも自然体で接する二人に私は自然と思ったことを口にしていました。


「あの二人。付き合ってるのですか?」


 窓辺にうつる美男美女のペア。それはとても絵になるのか、通行人達も通りかかりにあの二人へと目が向いています。


「そういう噂もあるよ」


 対して、茉莉花さんは努めて冷静に答えてくれました。


「……私達もカラオケいこっか」


 いつまでも見ていても仕方ない。私達は連れ立ってカラオケに入るのでした。






 ◆竜也視点◆


 今日は疲れた。

 毎度の事とはいえ、アリスの我侭にも困ったものだ。


 あいつと知り合ったのは僕が中学に入った頃。それからこの腐れ縁が続き、今でも付き合いがあるのだから。

 あの時の僕に助言できるのなら「もう少し距離を置くように」と言いたい。


 色んな場所を散々連れまわしたアリスは最後に最寄の駅までエスコートをさせた上で帰っていった。

 ここまで僕を引っ掻き回す奴なんて後にも先にもあいつぐらいだろう。


 そんな訳で結構遅くなってしまったので急ぎ帰宅をしたのだが。


「お帰り。晩御飯もう食べちゃったわよ」


「よう。デートかこのっ! すみに置けないな」


 出迎えてくれたのは母と父だった。珍しく家に居ると思えば既に酒を飲んで寛いでいる。


 デートではない。溜まっていた優待券を消費してきただけだ。

 僕とアリスは株取引という共通事項で繋がっている。


 株には保有していると『優待券』というサービスを受けられる銘柄がたくさんある。

 僕とアリスは結構な株を保有しているので、放っておくと優待券が溜まってしまうのだ。

 溜まった優待券には使用期限がある。放置していると期限切れになってしまいそうな優待券を使う必要があるのだ。


 そんなわけで、僕とアリスは株式市場が休みの日を狙って優待券の消費をする為に行動を共にするのである。


 つまりは……。デートなんかじゃないって事なんだよね。


「陽菜さんは?」


「お風呂に入った後で部屋に居るとおもうわよ」


 僕は両親を残して部屋へと戻った。




 突然だが僕の部屋は二階の一番奥になる。そしてその手前が客間を挟むと父と母の寝室になる。

 何故そんな説明をするかというと、客間のドアが半分開いているからだ。


「た。ただいま」


 僕はその半開きのドアに向かって帰宅の挨拶をつげた。


 恐らく、僕が帰ってきて階段を上る音を聞いたからだろうか?

 半開きのドアからは二つの瞳がじっと僕を見つめている。


「……おかえりなさいです」


 良かった返事があった。ドアと同化しているのか身体を晒す事無く。それでも部屋に戻るわけでもなく佇む陽菜さんの存在に、僕はその場で無視して自室へ戻る選択肢が無かった。


「えっと。夕飯はもう食べたんだよね?」


「……食べました」


「お風呂も――」


「入りました」


「そろそろ眠かったり」


「しませんっ!」


 どうしよう。何か不機嫌そうだ。空腹で苛立ってるとか、風呂上りでのぼせているとか、眠くて目つきが悪くなっているとかそういう理由では無く完全に機嫌を損ねている。

 やはり今日は無理を言ってでも断っておくべきだったんじゃ無いだろうか?

 

 僕は陽菜さんの様子を観察しつつとりあえずどのように接すれば良いのか策を考え始める。


「今日はさぞ楽しかったですよね?」


「ああ。まあ別に……」


 楽しかったのは確かだが、疲れた。


「そうですか。お友達と遊べてよかったですね」


 言葉の端々に棘が見え隠れしている。きっと僕だけが楽しんでいたので激オコなんだろうな。


 だけど、陽菜さんをアリスに紹介するのはちょっとな……。三人で周るのは僕の身が持たない。


「えっと立ち話も何だから部屋で話さない?」


 僕はとりあえず荷物を置きに戻りたかったので、彼女にそう提案してみる。

 そうすると。彼女は部屋の中へと引っ込んでしまった。


 暫くして「どうぞ」と声がする。どうやら部屋に招かれたらしい。


 久しぶりに客間に入る。

 客間という事もあって畳が敷かれている他にはカーテンと布団が一組あるぐらいだ。陽菜さんも長期滞在を予定していないのでこれで十分なのかもしれないが、女の子の部屋に入ってこれは何となく寂しいきもする。

 そんな和室の片隅にぬいぐるみが置かれていた。


「へぇ。可愛いぬいぐるみだね。実家から持ってきたの?」


 話の取っ掛かりになるかと思い、ぬいぐるみを手にとってみた。


「茉莉花さんとゲームセンターに行った時に取ったんです」


 聞き捨てなら無い名前が聞こえた。


「あれ? 君らってそんな仲良かったっけ?」


 何故か焦りを覚える僕。背中を冷たいものが伝った。


「ええ。#色々__・__#教えて貰いましたので」


 『色々』。その言葉の意味が非常に気になった。二階堂さんに話してほしくない事柄が2~3思い当たるからだ。

 とりあえず二階堂さんと何を話したのかは置いておこう。藪を突いて蛇が出てきてはかなわないし、これ以上彼女の機嫌を損ねると来週からお菓子を差し入れてもらえなくなるかもしれない。


 最近では戦いの後で差し入れられる彼女からのお菓子が一日の最大の楽しみになっているのだ。

 それと彼女と話すたわいの無い時間も僕にとって安らぎたりえるのだから……。


「明日ももしかして二階堂さんと遊ぶ予定なのかな?」


 なのでどうにか彼女の機嫌を取り戻したい。友達との楽しいひと時を思い出してくれれば機嫌も直るかもしれないのだ。


「明日は一日暇です」


 流石に二階堂さんも毎日遊んでいるわけではないようだ。そしていっそう不機嫌になる陽菜さん。

 僕はどうすべきか考えて駄目もとで提案してみた。


「じゃあさ。明日は僕と遊びに行かない?」


 駄目だろうな。女の子同士で遊ぶのならともかく、僕なんかが相手じゃ。

 そんな感想を抱いていた僕だったが、目の前で彼女の顔に急激な変化が起きた。


 背景があるのならツボミだった百合の花が一斉に開花したような。


「行きます! 世界が滅んでも。明日寿命が来ても。雨が降っても行きます」


 そう言って僕の手を握ってくる。

 世界が滅んだり寿命がきたら無理せずに土に還って欲しいんだけどね。


 何故か急に機嫌が良くなった陽菜さんに「おやすみ」を言うと、僕は自室へと解放された。

 なんだかんだで明日が楽しみだ。


 僕はニヤニヤするのを抑えながらも勉強机に向かうのだった。

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