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10.憧れのジューンブライド

10.憧れのジューンブライド


 待ち合わせ場所に居たのは本当に意外な人だった。彼がそこに居るのは偶然?でも、他には誰も居ない。ひょっとして待ち合わせ場所を間違えた?で、なければ時間を間違えた?

「やっぱりあなたでしたか」

 その人は心地いいトーンの声で話し掛けて来た。

「どうして?」

「相談所のデータベースであなたを見つけた時には削除し忘れているのかと思ったんですが、確認したらまだ決まっていない方だと聞いてすぐに申し込みました。だから、先日あなたが次の打ち合わせには彼と一緒に来るのだとおっしゃったときにはショックでしたよ」

 逸見さんの話はまさに青天の霹靂とでもいうか、夢でも見ているのではないかと思えるようなものだった。

「どうして、逸見さんが結婚相談所の…」

 私がそう言って彼の左手に目をやると彼は指輪をはずしてこう言った。

「これ、会社の方針なんです。結婚もしていないプランナーじゃ、これから結婚しようというお客さんに信頼されないからって」

「それじゃあ…」

「ええ!僕は独身です。会社からは早く結婚しろと言われていたんですけど、こういう仕事をしていると出会う女性はみんな婚約者が居る方ばかりだし」

「でも、それなら私だって…」

「そうですね。だけど、さすがにおかしいと思いますよ。ニ年近くもずっと一人でしか来られなかったですから。」

「そ、そうですよね。見る人が見れば、やっぱり分かっちゃいますよね」

「でも、確信はなかったし、それを言い出すのは失礼なことだし、あなたを傷つけてしまうかもしれないと思ったので…。う思ってからはあなたのような方とお付き合いできたらどんなにいいかと、そればかり考えていました。このままずっとあなたの婚約者が現れなければいいと思っていました。」

「私も。あなたが独身だったどんなにいいかと思っていました」

「それじゃあ、話は早い!」

 そう言って、逸見さんは今までしていた指輪を海に向かって放り投げた。

「いいんですか?ちゃんとお付き合いもしていなのに…」

「何を言っているんですか?お付き合いならずっとしていたじゃないですか!ニ年近くも。それに、あなた、いや、翔子さんのおかげで、最も取るのが難しい6月の大安の日曜日に式を挙げられる。急いで招待状を作らなきゃ」

「逸見さん…」

 

6月。大安の日曜日。この日のために二年も前から押さえていた。

 二年前、婚約者はおろか、彼氏と呼べる存在すらなかった。二年あればきっと何とかなる。そう思っていた。

 そして、今、純白のウエディングドレスを着て鏡の前に座っている。

「花嫁さん、お時間ですよ」

 控室を出ると、父が今にも泣きそうな顔をして待っていた。そんな父とバージンロードをゆっくりと歩いた。その先に居るのはいつもに増して爽やかな笑顔の逸見さん…。いいえ!世界でいちばん素敵な私の旦那様。


「私は絶対に6月の花嫁になってやる!」

 神様…。願いを叶えてくれてありがとう!きっと、幸せになります…。






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