確定ルート最終試験『フトン・オブ・デス ~一線は、畳一枚分♡~』
初めましての皆様、お立ち寄りいただき、ありがとうございます!
何度も読み返してくださっている皆様、本っっっ当―――に嬉しいです!!!!!
今後の勉強のために、ご意見や感想を頂けると大変助かります!!!
中を覗いてみると、そこは六畳一間の和室だった。
「……旅館、か」
嫌な予感しかしない。
いかにも「なにかが起きる」と言わんばかりに、部屋の中央には、二組の布団が敷かれている。
背後の扉がバタンと閉まり、鍵がかかる。それと同時に、巨躯の「彼女」がしおらしい仕草で(床をきしませながら)布団の端に腰を下ろした。
『確定ステージ到達♡ 最終実践試験
【旅館・一夜の添い寝マナー試験】ヲ開始シマス♡』
「・・・・・」
まず、部屋の構造を見る。
床の間、天井梁、開かなそうな引き戸、意味の無い襖……。
そして―――
……布団の配置。
近すぎるわけでも、離れすぎてもいない。
ちょうど“判断を誤りやすい微妙かつ絶妙な距離”。
「…なるほど。ここが迷宮の本命か?」
これまでのルートで一番、逃げ場がない。
「……最悪だ」
何か対策出来る手段は……あれだ。
壁際に立てかけてあった、簡易の屏風。
本来は飾りだろうが——
「これ、使わせてもらう」
俺は屏風を取り、布団の間に立て、、、
『仕切り設置ハ拒絶トミナシマス♡』
「・・・・・」
屏風を戻す。
ならば……布団の向きと距離。
距離は、巨躯の「彼女」の手足や頭、胴体などの長さを観察して計算し、
拒絶判定されないギリギリの位置まで離す。
更に向きは、斜めにずらし、目線と寝返りの方向が交差しない角度へ。
巨躯の「彼女」 が、少し不満げに首を傾げた。
「…安全距離だ。夜は無意識に動く」
ここで言い訳を間違えると、終わる。
照明を落とす。
行灯の位置も、調整。
影が重ならない配置。
そして、布団に入る。
ここまでは無事順調。
——だが。
試験は、ここからが本番だ。
ぎし、と音。
巨躯の「彼女」 が、案の定、こちらへ寄って来た。
『距離:注意♡』
「……動いてない」
『相手ノ接近モ、管理対象デス♡』
またそれ(理不尽)か。
俺は、動かずに声だけを出す。
「夜中に動くなら、足元に気をつけて」
巨躯の「彼女」は、足を止めた。
触れない。近づかない。声で制御。
「…ブフォ…」
大人しく布団に潜ってくれたようだ。良かった…。
――深夜。
静寂。
——と思った瞬間。
ズシンッ
巨躯の「彼女」の寝返りで、距離が縮まった。
距離、ギリギリ。危なかった。最初に布団の距離を空けておいて正解だった。
『距離:警告♡
次は“一線”です♡』
……来たな。
俺は、すぐに動かない。
代わりに、
布団を引いた。
——自分の分だけ。
一畳分、後退。
しかし——
ズシンッ
寝返りの追撃は続く。
しかも、ゴロンと転がるたびに、部屋が地震のように揺れる。
しかも…
ドスッ
寝返りで動く腕は、推定時速40km。これをパーソナルスペースを保ったまま回避し続けなければいけない。
「…試験も俺の命も畳みかけに来てるな…」
これで寝てしまったら、永眠になってしまう。
押入れがあったら青い未来型ロボットの様に寝られるのだが、、、。
「…一か八か…」
天井と梁の隙間が空いている造りになっているので、そこに賭ける。
巨躯の「彼女」の寝返りの間隔と振動幅と時間も観察し、
壁・天井・梁、それぞれの距離や強度、助走・蹴る角度や蹴り出し・上半身の引きつけ、などを計算する。
「……もはやマナーというよりは、高度なアクロバットだな」
ドゴンッ
…今だ!
静かに助走をつけ、体を跳ね上げ、壁を蹴り、斜め上へ。
両手で梁を掴み、遠心力の力と懸垂の動作で、自分の体を梁の上へと乗せる。
「・・・・・」
折れないな?よかった、成功だ!
「…ハア…やっと一息つける…」
…梁にうつ伏せでしがみ付いているような格好だが…。
傍から見れば、梁にへばり付いている滑稽な不審者か、忍者ごっこをしているイタイ奴に見えるだろう、、、。
だがしかし、俺からしてみたら命が懸かっているのだ。
今もなお、巨躯の「彼女」の寝返りの振動にさらされ、100%安心できるような状態ではない。
落ちないように壁際にすり移動して支えにする。
一息ついたら一気に眠気が襲って来た。無理もない。こちらの世界に飛ばされてきて、ずっと休む暇も無く、理不尽かつ無茶苦茶な状況に対処し続けてきたんだ。今まで本当に頑張ったと思う。自分で自分を褒めてやろう。
しかし、布団の距離はそのままだが、俺(本体)と巨躯の「彼女」の本体は離れてしまっている。拒絶判定にはされないんだろうか?
まあ、何か言ってきたら、これは俺の寝返りの一環だと抗議してみるか?
――そんなことを思っているうちに、つかの間の眠りについた。
蓮は極度の疲労状態で気づいていなかったが、ちょうど助走をつけ始める前に、蓮の体は、銀色の光に包まれていた。
リリーのスキル、
――『シオピティス・セレニス(月夜の静寂)』――
女神アルテミア系譜に繋がる「狩猟」用のスキル。
暗闇の場所では、完全に気配を遮断できる。隠密性と遠距離攻撃特化型スキル。
新月の夜は特殊スキルがプラスされる。
このスキルは、近くに居る仲間にも恩恵を共有することが出来る。
――そう、リリーは隠しルートで迂回し、今は、蓮に近い場所まで来ていた。
なので、蓮の今の状態は、迷宮側からしてみたら、突如気配(姿)が消えた、想定外の事態なのだ。
距離が離れたと拒絶判定をするにも、失格にするにも、本人がこの空間に〝居ない″のでは、どうすることも出来ない。
しかも、想定外な事態がもう一つ。
迷宮内の壁が悉く解体され、迷宮内構造がボロボロになっていっているのだ。
これはもはや緊急事態でもある。
レオのスキル、
——〖アポスナ・ルモ・ロジシー(構造分解・解体)〗 ——
鍛冶神ヘスパイトの系譜に連なる、「構造解析・解体」用スキル。
レオはこのスキルを使って、最短距離で蓮の近くまで来ていた。
迷宮側は今、想定外な事が立て続けに起こっていて、軽くパニック状態に陥っていた。
――3人が合流するまで、あと少し。
読んでいただき、ありがとうございます!この理不尽な迷宮に、ストレスをかけられまくる主人公(蓮)を、是非応援してあげてください(笑)。主人公(蓮)の今後の行方が気になる方は是非ブックマークを!(笑) みなさまの実践対応も、ぜひコメントで教えてください!




