異世界からの召喚は、だいたいろくでもない
「初めまして、天然百戦錬磨のモテ男くんこと、神代蓮くん」
目を覚ますと、真っ白な空間だった。
目の前には、性別不明の美形が浮かんでいる。
距離が近い。
いや、近すぎる。
「……相変わらず、君のオーラは綺麗すぎるねぇ~。
(おまけに魂も血統も特別性。しかも――の気配まで…。早々に能力封印しておいてよかった)」
距離が近いどころか、フンスフンスしてベタベタ触ってくる。不快だ。。
「嗅ぐな。触るな」
セクハラしてくる不審者の死角にスッと入り込み、バランスを崩して投げようとしたが、体が思うように動かなかった。速さもキレも格段に落ちていて、重しを付けられているような感覚。
「おっと、危ないねぇ。この空間でそこまで動けるなんて、やっぱり君、常人の域を超えてるなぁ。……能力、封印しておいて正解だったよ」
「封印……だと?」
体と眼の違和感の正体はそれか。こいつの正体すら看破できない。
封印を解く方法を聞き出さなければ。
しかし不審者は、何事もなかったかのように手を広げ、
勝手に語りだした。
「さて、私が管理している世界は、愛こそが崇高、恋すらしない人間は人権すら危うい!そんな〔愛と情熱の世界〕でね!
でも最近は“愛があれば何してもいい”って勘違いする人も増えてきて、秩序が乱れ始めてて——」
……面倒ごとの気配と嫌な予感。
しかも、絶対何か隠してる。
「だから、スパイスとして異世界からの人間でも招き入れ(強制召喚し)ようかなと思ってね!君のその見た目と能力のスペックの高さを見込んで、「愛の御子」としてご招待(強制拉致)しました〜!わあ~☆」
・・・ちょっと何言ってるか分からない。・・・夢、だよな?夢であってほしいが、こんな変な夢を見ている自分にもショックだ。
「とりあえず、大学の単位落としたくないから、今すぐ日本に帰してくれ。能力も」
「クール♡。(……普通ならもっと取り乱すんだけどねぇ。心拍も上がらないし、恐怖反応も薄い。むしろ氣が整いすぎている。やっぱり常人の域を超えてるなぁ〜)」
・・・俺を観察…いや、分析されてる?
「君のようなモテる絶食系イケメンは稀少です!どう攻略させるか、、、ああ!身震いする~!こちらでは、女神を拒絶し――
「どうやったら帰れるんだ?」
「家には条件を満たさないと帰れません~。それでね、女神を拒絶したイケメンはすぐ呪わ――
「条件てなんだ?」
「今の絶食系の君のままでいられること~。で、呪われたり非業の死を迎えて、攻略デレまでのデータが取れな――
「具体的には?あと封印も解いてもらおう」
「聞いて~~~!僕の話~~~~~!!」
「興味ない」
「どこまでもクーーール!!でもそこがいい!!良すぎる!!!」
……会話が成立しない。
「ふふっ、私は古今東西のあらゆる「全性別の」恋愛パターンを網羅し、コレクションしているからね。だから、乙女心も、男心も、ジェンダーや同性愛の苦悩も葛藤も喜びも快感も、全部私には分かるんだよ。だって愛の神だもの!」
…………オタク特有の熱弁早口(引き)。
「そしてその上で全方位から恋愛フラグを叩き込めるよ。だって愛の神だもの!特に萌えやエモポイントなどは必須で——(熱弁)」
……このオタクをどうするか。元の世界への帰還に、能力の奪還……。
「————そんなわけで、是非とも私の世界に刺激と愛を注入して革命を起こしておくれ!」
聞き流して交渉や対策などを考えていたら、いつの間にか話が締めくくられ、足元が消える。
「!」
落下。
「着地先は、愛の神殿の敷地内にある、愛の泉の中だよ~。条件をクリアしないとあちらの世界に帰れませ~ん☆」
「条件?」
「君が、召喚期間内に誰とも恋に落ちなかったら無事に帰れます~」
なんだ、簡単——
「でも、君は「伝説の愛の御子(愛の使者)」として、カップルの聖地・愛の泉からのご登場です。私(愛の神)のお告げ付きで(笑)」
「?」
「数百年に一度、神のお告げ(=愛の神の暇つぶし)があった3日後、愛の泉が桃色に輝きし時、
泉の底から「最も愛に溢れた(と神が適当なこと言って選んだ)者が、愛の使者の役割を持つ=愛の御子」として現る。
愛の御子と結ばれると、一族一生の栄誉と繁栄が約束される。という伝説を適当に作ったからね~。私が。」
「・・・・・」
面倒な気配と嫌な予感が、確信に変わる。
「実は既に、お告げ済で、泉はもう桃色に輝いているよ~。あらゆる人々が愛の泉の前で待機してるよ~(笑) 健気に体まで張って夜な夜な“既成事実作り”に励む人もいるかもね〜♡」
それはもう、ちょっとしたバイオハザードなのでは?
「・・・同意が無いその行為は、ただの犯罪だ。この世界ではそれがまかり通るのか?」
「まあ、法はあるけど、この世界は〔愛と情熱の世界〕だからね~。恋愛しない人の方が冷遇されやすいんだよね~」
理不尽過ぎだろう。
「ちなみに誰かに恋したり、結ばれたりすると(心でも体でも)、この世界で、添い遂げた相手と生涯を終えないといけなくなります」
理不尽過ぎだろう(2回目)。
同意のない行為や強制的な関係を強要されて、この世界と無理やり関係を迫ってきた相手に、一生縛られるなんて……。
「そして、私(愛の神)の眷属になります(笑)」
一番の理不尽。
「そうだ、君の能力。強すぎるとつまらないから、開放するかは気分で決めるよ〜(……僕にとっても脅威な能力だしね)」
!!
「じゃあ、お見送りはここまで~。是非ともこの世界で恋愛無双でも、ハーレム無双でも何でもいろいろ楽しんで、生きるデータとして、この世界と私(愛の神)の眷属になってね~(笑)あはは!あ!皆と賭け大会込みの宴会でも開こうかな!」
あははははは~~~と響き渡る白い空間。
……二十歳の春。殺意の意味を知る。
「!?」
空中落下の感覚から、水中落下の感覚に変わった。
冷たい水が全身を包む。
『息が……』
力を抜いて沈む方向(下)を確認し、上へ向かって泳いでいく。
すると光が見えてきた。
——ざぱっ
水面から顔を出した瞬間、周囲が人で埋まっているのが見えた
自称愛の神とやらが言っていた泉のようで、周囲には人、人、人。
「お告げの御子様が現れたぞーーー!」
わあああああああああああああああああ!!!
歓声が轟く。と、同時に、
「私と子供をつくって!!」「俺のものになれぇ!!」
欲望と狂気も渦巻いていた。
………………。
「……上等だ。全フラグ回避して、絶対現代に帰還してやる」
この愛の神様とやらにも、お礼参りをしないとな……。
“恋愛オタク神 vs 絶食系リアリスト”
奮戦伝説、開幕。
――そして、最初の一撃(変態)が迫る。
読んでいただき、ありがとうございます!この理不尽なオタク神に、今後ずっと迷惑とストレスをかけられまくる主人公(蓮)を、是非応援してあげてください(笑)。今後の勉強のために、ご意見や感想を頂けると大変助かります!主人公(蓮)の今後の行方が気になる方は是非ブックマークを!(笑) オタク神へのヘイトが溜まった主人公(蓮)のすごいしっぺ返しもこうご期待(笑)




