異世界からの召喚は、だいたいろくでもない
お立ち寄りくださった皆様、ありがとうございます!!
この世界で皆様の楽しい時間を提供できれば幸いです。
「初めまして、天然百戦錬磨のモテ男くんこと、神代蓮くん」
――目を覚ますと、真っ白な空間だった。
目の前には、性別不明の美形が浮かんでいた。
近距離で。
「…………」
「 !! 痛だだだだ!!!目覚めて秒で、無表情のまま技かけるのやめてくれる!?あと、初対面で関節技はおかしいよね!?」
不審者を素早くうつ伏せに組み敷き、腕の関節技を決める。
「目覚めた瞬間、近距離に不審者が居れば、そりゃ秒で技かける」
「普通はかけられないよ!?君のその凄い反射神経と判断力を称讃したいけど、とりあえず話を聞いて~~~!離して~!」
「…………」
……とりあえず、離して話を聞くことにする。
「で?」
「で!?」
「誰だ」
「あ、そうだった」
不審者は立ち上がり、妙に姿勢を正した。
そしてドヤ顔で言った。
「私は愛の神です!」
「帰らせてもらおう」
「待って!?とりあえず聞いて!?最後まで聞いて!」
……仕方ないので、とりあえず、話を聞くことにする。
「私の世界はね、とても愛に満ちた世界なんだ」
「へえ」
「恋愛こそ正義」
「そうか」
「恋をしない人間は人権が危うい」
「最低最悪だな」
そう即答したら、愛の神が固まった。
「え?」
「?」
…………しばらく見つめ合った。
「いやいや! 愛と情熱の世界だよ!?」
「恋愛しないだけで人権が危ういんだろう?」
「まあ…」
「最低最悪だな」
二回目である。
「……フゥ、……こんな時でも、相変わらず君は凄いね~。能力も容姿も。オーラも綺麗すぎるし……、」
(おまけに魂も血統も特別性。しかも――の気配まで…)
近距離で、マジマジ見ながら、フンスフンスしてベタベタ触ってくる。
不快だ。
「嗅ぐな。触るな。近寄るな」
セクハラしてくる不審者を投げ飛ばそうとしたが、今度は体が思うように動かなかった。
速さもキレも格段に落ちていて、重しを付けられているような感覚。
――なので、合気道の『肩取り呼吸法』で、不審者の重心を下に崩し、顔面を払い除けた。
「痛ったぁ〜〜〜!!私の美しい顔と体になんて事するのさ!」
(この空間で、ここまで動けるなんて、てか、僕(神)に触れるなんて…!やっぱり常人の域を超えてるなぁ~…全く)
「やっぱり能力を封印して大正解だったよ~!」
「封印……?」
体と眼の違和感の正体はそれか。こいつの正体すら看破できない。ベタベタ触られた時か?
封印を解く方法を聞き出さなければ。
しかし不審者は、何事もなかったかのように手を広げ、勝手に語りだした。
「さて、私が管理している世界は、いろいろな愛に満ち溢れた世界でね、、、絆、執着、独占、ヤンデレ、etc(一部フラグあり)――!」
長い長い長い。説明が長い。オタク特有の熱弁早口も相まって、全然頭に入ってこない。興味が無いから尚更だ。早く家に帰りたい。
「でも最近は“愛があれば何してもいい”って勘違いする人も増えてきて、秩序が乱れ始めてて——」
……突如沸き起こる、面倒ごとの気配と嫌な予感。
……しかも、絶対何か隠してるだろ。
「だから、スパイスとして異世界からの人間でも招き入れ(強制召喚し)ようかなと思ってね!
君のその見た目と能力のスペックの高さを見込んで、「愛の御子」としてご招待(強制拉致)しました〜!わあ~☆ パチパチパチ」
……ちょっと何言ってるか分からない。
……夢、だよな?夢であってほしいが、こんな変な夢を見ている自分にもショックだ。
「拉致したんだな」
「言い方ァ!」
拉致だった。
「とりあえず、大学の単位落としたくないから、今すぐ日本に帰してくれ。能力も返してくれ」
「クーーール!!♡イイよ!!♡凄ぉくイッフ…フフフ…」
「…………(引き)。」
(……普通の人間ならもっと取り乱すんだけどね。この強者感、やっぱり只者じゃない!超~気になる~!☆)
……俺を観察…いや、分析されてる?
「君のようなモテる絶食系イケメンは稀少です!どう攻略…デレさせるか、、、ああ!身震いする~!こちらでは、女神を拒絶し――」
「どうやったら帰れるんだ?」
「家には条件を満たさないと帰れません~。それでね、女神を拒絶したイケメンはすぐ呪わ――」
「条件てなんだ?」
「今の絶食系の君のままでいられること~。で、呪われたり非業の死を迎えて、攻…デレまでのデータが取れな――」
「具体的には?あと封印も解いてもらおう」
「聞いて~~~!僕の話~~~~~!!」
「興味ない」
「どこまでもクーーール!!♡やっぱりイイ!!良すぎるぅふふふ腐腐」
……会話が成立しないな(ドン引き)。
「ふふっ、私は古今東西のあらゆる「全性別の」恋愛パターンを網羅し、コレクションしているから、乙女心も、男心も、全部私には分かるんだよ。だって愛の神だもの!」
このオタクの熱弁を華麗に聞き流し、どうするか考える。
「そしてその上で全方位から恋愛フラグを叩き込めるよ。だって愛の神だもの!」
……元の世界への帰還に、能力の奪還……。
「——そんなわけで、是非とも私の世界に刺激と愛を注入して革命を起こしておくれ!」
聞き流して交渉や対策などを考えていたら、いつの間にか話が締めくくられ、足元が消える。
「!」
落下。
「着地先は、愛の神殿の敷地内にある、愛の泉の中だよ~。条件をクリアしないとあちらの世界に帰れませ~ん☆」
俺の落下速度に合わせて少し上から説明を続けるオタク神。
「条件?」
「君が、召喚期間内に誰とも恋に落ちなかったら無事に帰れます~☆」
「なんだ、簡単だな」
「へ?」
「?」
そう即答したら、愛の神が固まった。
「ちょっと待って」
愛の神が慌て始める。
「普通もっと悩まない!?」
「なぜ」
「だって恋愛だよ!?」
「興味無い」
「即答!?君まだ二十歳だよね!?」
「二十歳だな」
「青春は!?」
「始まる前に終わった」
「終わってない!」
愛の神が頭を抱え始めたが、次の瞬間――、
愛の神はニヤリと笑った。
嫌な笑顔だった。
かなり嫌な笑顔。
「でも、君は「伝説の愛の御子(愛の使者)」として、カップルの聖地・愛の泉からのご登場です。私(愛の神)のお告げ付きで(笑)」
??
「数百年に一度、神のお告げ(=愛の神の暇つぶし)があった3日後、愛の泉が桃色に輝きし時、
泉の底から「最も愛に溢れた(と神が適当なこと言って選んだ)者が、愛の使者の役割を持つ=愛の御子」として現る。
愛の御子と結ばれると、一族一生の栄誉と繁栄が約束される。という伝説を適当に作ったからね~。私が。」
「・・・・・」
面倒な気配と嫌な予感が、確信に変わる。
「実は既に、お告げ済で、泉はもう桃色に輝いていて、あらゆる人々が愛の泉の前で待機してるよ~(笑)
健気に体まで張って夜な夜な“既成事実作り”に励む人もいるかもね〜♡」
それはもう、ちょっとしたバイオハザードなのでは?
「・・・同意が無いその行為は、ただの犯罪だ。この世界ではそれがまかり通るのか?」
「まあ、法はあるけど、この世界は〔愛と情熱の世界〕だからね~。恋愛しない人の方が冷遇されやすいんだよね~」
理不尽過ぎだろう。
「犯罪では?」
「愛です」
「犯罪では?」
「愛です」
「犯罪では?」
「愛です」
会話が成立しない。なんだこの壊れた機械音声みたいな返し。
「ちなみに誰かに恋したり、結ばれたりすると(心でも体でも)、この世界で、添い遂げた相手と生涯を終えないといけなくなります」
さっきのバイオハザードな奴らに、無理やり関係を迫られてもアウトなのか!?
この世界と無理やり関係を迫ってきた相手に、一生縛られるなんて……。
理不尽過ぎだろう(2回目)。
「そして、私(愛の神)の眷属になります(笑)」
一番の理不尽。
「そうだ、君の能力。強すぎるとつまらないから、開放するかは気分で決めるよ〜(……僕にとっても脅威な能力だしね)」
!!
「じゃあ、お見送りはここまで~。是非ともこの世界でハーレム無双でも、バイオハザード無双でも、何でもいろいろ楽しんで、
生きるデータとして、この世界と私(愛の神)の眷属になっておくれ(笑)
いつどんな風にデレるのかな~?食べるの?食べられちゃうの?男に?女に?褥無双とか!?あはは!
あ!皆と賭け大会込みの宴会でも開こうかな!僕、超名案~☆超天才~♡」
早く始まれ~!あははははは~~~♫ と響き渡る白い空間。
……二十歳の春。殺意の意味を知る。
――落ちていく中で、帰還条件の確認をする。
『君が、召喚期間内に誰とも恋に落ちなかったら無事に帰れます~』
……〖恋〗か。
「微塵も興味無いな」
確かに、幼少期の頃から、この‟顔”と‟能力”に魅かれて寄って来る者は、数え切れないくらい居た。世間一般的に言ったら、俺は‟モテる”のだろう。
しかし、純粋な気持ちで接してくれた人は、一体何人居たのか……。
幼いころから、人間の本質をこれでもかと言うほど見て来た。
これまでの過去を振り返り、ウンザリしていると……、
――「!?」
空中落下の感覚から、水中落下の感覚に変わった。
冷たい水が全身を包む。
『っ…息が……』
力を抜いて沈む方向(下)を確認し、上へ向かって泳いでいく。
すると光が見えてきた。
——ざぱっ
水面から顔を出した瞬間、周囲が人で埋まっているのが見えた。
自称愛の神とやらが言っていた泉のようで、周囲には人、人、人。
「お告げの御子様が現れたぞーーー!」
わあああああああああああああああああ!!!
歓声が轟く。と、同時に、
「私と子供をつくって!!」「俺のものになれぇ!!」
欲望と狂気も渦巻いていた。
………………。
……ああ、どの世界も変わらないな。
いや、ストレートに伝えて来るこの世界の方が、〔素直〕か。
「……上等だ。全フラグ回避して、絶対現代に帰還してやる」
この愛の神様とやらにも、お礼参りをしないとな……。
“恋愛オタク神 vs 絶食系リアリスト”
奮戦伝説、開幕。
――そして、最初の一撃(変態)が迫る。
読んでいただき、ありがとうございます!この理不尽なオタク神に、今後ずっと迷惑とストレスをかけられまくる主人公(蓮)を、是非応援してあげてください(笑)。今後の勉強のために、ご意見や感想を頂けると大変助かります!オタク神へのヘイトが溜まった主人公(蓮)のすごいしっぺ返しもこうご期待(笑)




