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電書第3巻(完結)3/25コミックシーモア配信予約開始 ドアマット幼女は屋根裏部屋から虐待を叫ぶ  作者: はなまる
第二章

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第1話 エルシャ、貴族学校へ入学する

 皆さま、お久しぶりでございます。


 エルシャ・グリーンフィールズ六歳です。


 グリーンウッド家からの離籍届が受理されて、グリーンフィールズを名乗るようになりました。

 それとほぼ同時に、わたしの後見人が決まりました。


 名乗り出てくれたのは、西区八番街警ら隊のダグラス・リード隊長、西区の取調官のチャーリー・エバンスさん、下町で有名な偏屈医師であるハワード・ハドソン先生です。


 わたしは誰かひとりを選ぶことができなくて、三人ともお父さんと呼び、全員と“家族ごっこ”をはじめてみることにしました。


 ただ、紛らわしいので、呼び方はきっちり決めました。


 ダグラス隊長は『ダグラスお父さん』。エバンス取調官は『エバンスお父様』。ハドソン先生は『おじいちゃま』です。


 ただいまと言って家に帰り、一緒に食事をして、おやすみなさいと言って眠ります。三つも新しい家ができてしまいました。


 辺境の牧場と詰所もありますから、なんとわたしの家は五つです。そんなの聞いたこともない? そうでしょうそうでしょう、えっへんです!


 昨日から、エバンスお父様のおうちで過ごしています。今回で三度目の訪問なのでだいぶ慣れました。


 エバンスお父様は、奥さまのシャーリーお母様と二人暮らしです。


 シャーリーお母様はお身体が弱く、結婚前から子供は諦めていたそうです。わたしが行くといつも大歓迎してくれて、色々とお世話をしてくれます。


 髪をいてくれたり、爪をきれいに整えてくれたり……。柔らかくて少し冷たい手が、とても気持ちいいです。


 儚くて上品なシャーリーお母様は、キャサリンとは似ても似つかないので、嫌なことを思い出すこともありません。


 以前ピートくんがエバンスお父様のことを、『早く家に帰ることしか考えていない』と言っていました。すごくわかります。

 こんなに優しくてきれいな奥さんがいたら、わたしも仕事なんか早く終わらせて飛んで帰ると思います。

 貴族にも、仲良しのご夫婦がいるんですね。


 今日は午後から、貴族学校の初等科への入学式があります。制服を着て、準備を整えてもらっています。


「髪の毛はどうしましょうか。軽く結んでみる?」


「はい、お任せします」


「ふふ、柔らかくて素直な髪ね。きれいな髪留めがあるの。……ほら、素敵」


 手鏡を使い、横顔を見せてくれます。髪留めは繊細な銀細工で、お花の意匠です。


「わぁ……。わたしじゃないみたい」


「ふふ。しっかり者のお姉さんの出来上がりよ」


 ずっと前に……母様が元気だった頃、こんな風にお洒落して二人でお出かけをした気がします。残念ながら、その頃のわたしは幼すぎてあまり覚えていないのですが。


「エルシャくん、制服がとても似合っていますね。シャリーは今日も春の花々より魅力的です。二人をエスコート出来るなんて光栄だよ」


 エバンスお父様が貴族らしい振る舞いで、馬車に乗せてくれました。にこやかで、仕事の時とは別人みたいです。

 ヘンリーもたっぷりブラッシングしてもらって、毛並みがピカピカです。


「ヘンリーくんは、馬車の中でも大人しくしていて、えらいわね」


「はい。でもやんちゃな時もあります」


「そう……。うふふ。最初は大きいから、びっくりしちゃった」


「わたしもです。最初に会った時は、食べられちゃうかと思いました」


 わたしたちの会話を聞いて、エバンスお父様がそっと目がしらをハンカチで押さえています。どのへんが琴線に触れたのかわかりませんが、嬉しそうなので良かったです。


 ヘンリーが“ぼくの顔、怖いの……?”と落ち込んでクゥーンと鳴きました。


「わうっ」


“凛々しくて格好いいですよ”と犬語で言うと、尻尾をパタパタと振ります。なんでも素直に受け取るヘンリーは本当に可愛いですね。


 馬車はすぐに学校へと到着しました。


「私たちは入学手続きと、保護者説明会に出席して来ます。エルシャくん大丈夫かい?」


「はい。ヘンリーが一緒ですから」


「説明会が終わったら迎えに来るから、一緒に帰りましょうね。ヘンリー、エルシャをよろしくね」


「わふっ!」


 ヘンリーは校長先生からの依頼で、週に二回程度一緒に登校する予定です。『特殊技能を持つ動物とのふれあいを通して、情操の育成を促す』らしいです。


『情操の育成』はわからないので、あとで辞書で調べようと思います。


「わぁ……!」


 学校の中庭はまさに春爛漫らんまんでした。何本もの大ぶりのアーモンドの木が、薄紅色の花を綻ばせています。花壇ではアネモネやチューリップなどの茎の長い花が風に揺れています。


 きれいに刈られた芝生に、白いテーブルセットとパラソル。隅々まで整えられたお庭は、腕のいい職人さんが作った箱庭のように可愛らしいです。


 平民になったわたしが、なぜ貴族学校へ入学できるのかというと、試験で満点を取って特待生に選ばれたからです。えっへん!


『入学の案内』のパンフレットを取り出して、自分の席へと向かいます。テーブルにはケーキスタンドとティーカップが用意してあります。さすが貴族学校ですね。


「ねぇ、どうして犬を連れているの?」


 同じテーブルの子に聞かれました。


「ヘンリーは救助犬なんです。校長先生に、連れて来るように頼まれたんですよ」


「お、おおきいね……。噛まない?」


 隣の席の子からも声をかけられました。みんなヘンリーに興味津々ですね。


「噛みません。ヘンリーはヒヨコを頭に乗せてあげるくらい、優しいですよ。でも、熊を追い払ったこともある、強い犬です。背中にも乗せてくれます」


 ワアッと歓声が上がりました。


「さわってもへいき?」

「ぼく、せなかに乗ってみたい!」

「ケーキ、食べるかしら?」


 ヘンリーは一瞬ピクッと耳をそば立てましたが、ゆっくりと伏せて頭を下げてくれました。


 あっ、あれはヒヨコを頭に乗せるポーズです。ヘンリーの中では、貴族の子供たちはヒヨコと同等に分類されたみたいですね。


 子供たちがヘンリーの周りに集まります。みんなほっぺを赤くして、目をキラキラとさせています。可愛いですね。いえ、わたしも同じ年齢ですが。


 貴族学校にも、エミリーみたいな子ばかりではないんですね。これなら友だちが作れるかも……!


 あっ、いましたね。エミリーみたいな子。


 ポツンとテーブルに残されて、顔を真っ赤して怒っている女の子がいます。ずいぶんと年上みたいです。『ベアトリス』と書かれた名札と『案内係』の腕章をつけています。


「なによ! 私が話していたのに……!」


「……あのおねえさん、じまんばっかりなんだもん」

「あんない係って言ってたけど、ぜんぜん学校のはなし、しないし」

「ねー、ヘンリーとあそぶ方が、たのしいわ」


 こしょこしょと、ナイショ話のつもりでしょうけど、けっこう声、おおきいです。


「何ですって!」


 ほら、聞こえちゃった。


「あんた、何なのよ! 犬なんか連れて来てえらそうに……ふふん、そうだわ! 私がその犬、買ってさしあげるわ。おいくらかしら?」


 そう言って立ち上がったベアトリスさんは、高級なお店の宝石みたいな美人さんです。でも――そのぶん、言葉だけが見事に、最低でした。


読んで頂きありがとうございます。

本日より第二章の投稿開始します! まだまだ続きますので、ぜひブクマと☆評価をお願いします。

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― 新着の感想 ―
他の方のお話もすべて含めて異世界には残念な貴族の方がたくさんいらっしゃるようで、お話の話題には事欠かないかもしれません。 エルシャとどんな関係になるのか楽しみです。
不躾で申し訳ないのですが・・・。 >平民になったわたしが、なぜ貴族学校へ入学できるのかというと、試験で満点を取って特待生に選ばれたからです。えっへん! なぜ【平民】が【貴族学校】の試験を受けること…
第二章開始お待ちしてました。 後見人逆ハー状態から、貴族学校に入学したエルシャ。 平民の特待生とヘンリーに対して、同じ年頃の幼い子たちは素直に受け入れてくれそうですが、やっぱりマウントを取りたがる子…
感想一覧
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