表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VR&RW Online  作者: 田島 康裕
44/60

第44話 絶体絶命

 理性を失い、狂戦士と化したアイギスは、雄叫びを上げ、その場で身体を震わせていた。


 その様子にロイは、


 「……マジかよ」


 先程までの空気が一変して、異様な迄の殺伐とした雰囲気に、身の毛がよだつ思いだった。


 「フゥ、フゥゥ……」


 荒い息を吐きながら、アイギスは視線を泳がせ、無作為に当たりの構造物を破壊すると、近くで彷徨いていた、エネミーの狼を見つけると、その強靱な牙で、貪り狂うように捕食していた。


 バリバリと噛み砕く、その姿は、まさに獣そのものであった。


 あっという間に平らげると、まだ満足していないのか、辺りを見回して物色していた。


 視線がロイを捉えると、アイギスの口がニヤリと、口角が引き上がると、


 「ガ、ガァアア」


 のしのしと、その巨体を、ロイのいる方向へ向けると、


 「……冗談じゃねぇぜ、あんな化け物、相手に出来るかよ」


 その圧倒的なまでのプレッシャーに、ロイの本能が、危険を感知して、警鐘を鳴らしていた。


 その場で硬直していたロイを、その大きく見開かれた目を細めると、狙いを定め、


 「シャァー!」


 その巨体からは、想像も出来ない速さで突進すると、瞬時に間合いを詰めた。


 「クソッタレが!」


 ロイは己を奮い立たせるように、自分の頬を引っぱ叩くと、先程まで、固まっていた身体を、無理矢理にでも奮い起こした。


 タックルをするようにアイギスが、その巨体を、ロイ目掛けて襲い掛かるが、


 「そんな攻撃、喰らうかよ!」


 紙一重の所で、その攻撃を躱すと、無防備になった、アイギスの後頭部へ裏拳を放つ。


 その攻撃は、強かにアイギスを捉えるが、まったく動じることなく、反撃に転じるアクションを見て、


 「ちっ!まったく効いてねぇ」


 距離を取った、ロイの裏拳を放った右腕を、アイギスが素速く掴むと、もの凄い握力で締め上げていく。


 「!」


 ロイは余りの激痛に、焦点が定まらず、その場で悶絶していた。


 「グゥ、ハァッ!」


 アイギスは、猛り狂うように、その強靱な筋力を惜しみなく発揮する。


 普通の試合なら、審判が止めに入る危険行為だが、ここは現実世界ではない。


 ロイがリザインしない以外、この戦闘は終わることはないのだ。


 「離しやがれっ!このクソが!」


 ロイは激痛に耐えながらも、必死になって、残っていた左手や、両足を使って反撃するが、アイギスは動じることなく、その場で、金剛力士像のように悠然と立っていた。


 ロイの右腕は、軋むように悲鳴を上げると、ボキッと嫌な音がした。


 「がぁ!」


 強烈な痛覚がロイを襲う。


 ダランと力なく右腕が垂れると、満足そうにアイギスが笑い、その腕を強靱な牙で噛み切った。


 「!」


 気絶しそうな衝撃に、ロイの意識は限界を超え、目は虚ろに彷徨っていた。


 アイギスはロイの身体を掴むと、無造作に放り投げる。


 その場でアイギスは、噛み切った右腕を地面に投げ捨てると、犬のようにバリバリと、その腕を、むしゃぶりつくように食べていた。


 「うっ」


 その光景を見ていた、場外の観客の女性が、口を覆うと、今にも吐きそうな表情を浮かべ、観客席からトイレへと駆け込んでいった。


 異様すぎる光景は、それまで、熱狂していた会場のボルテージを一気に凍り付かせた。


 ハンバーガーを食べていた、肥満ぎみの男性は、食べるのを止めて、ポトリと、食べかけのハンバーガーを落として唖然としていた。


 「グッ、フゥウ……」


 右腕を食べきったアイギスは、まだ、満足していないのか、ロイの身体を見据えると、ハァハァと激しく呼吸し、獲物を捕らえた獣のように、その牙をロイに向けていた。


 「……」


 ロイは、虫の息のように力なく、その意識は、絶え絶えと弱々しくなっていた。


 最早、一刻も早くリザインしなければ、現実世界の南雲の脳神経にも、重大な影響を及ぼす、危険な状況であったが、ロイ、いや南雲は、まだ諦めてはいなかった。


 その不屈の闘志は、現状に於いては、まさに、諸刃の剣そのものであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ