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8・アリサさんって何でもありのキャラ?

「あなたもヴァープル市街を歩き回っていたんだから、地下迷宮の存在に気付いているわよね?」


「勿論……ただ迷宮ってのは冒険者じゃないと行けないんじゃ?」


「その通り——地下迷宮っていうのは王都にとって大切な資源だわ。迷宮内にあるアイテム。モンスターを倒すことによって得られるアイテム。アイテムの中には高値で取引されるアイテムもある。

 つまりちょっとでも腕に自信がある人がいたら、地下迷宮でモンスターを狩っていれば食っていけるだけのお金を得ることが出来る、っていうわけ」


 しかし地下迷宮に行くためには冒険者証明書を入り口の守衛に見せなければならない。

 そして冒険者証明書を発行するためには冒険者ギルドに行く必要があるが……ジョブがシーフである場合、門前払いにされてしまう。

 つまりシーフは地下迷宮に行けない、ということになるが……。


「シーフの基本って盗みなのよ。地下迷宮には高価なアイテムが溢れている……そんな場所を前にして指を咥えて見ているわけがないでしょ?」


 どうやらシーフギルドは外観と違って、結構広い建物だったらしい。

 アリサさん曰く三階建ての建物で行き場をなくしたシーフが泊まる部屋もいくつか用意されている。


 こうしてアリサさんと廊下を歩いているだけで、柄の悪いシーフらしき人とも何人か擦れ違った。

 擦れ違う人全員「殺すぞ」みたいな視線を向けてきたが……。

 やっぱり新人っていうのは歓迎されないものなのだろうか。


「そこでシーフギルドでは冒険者証明書がなくても、地下迷宮に行く方法を編み出した。分かる?」


「まあ裏口みたいな通路がある……ってところでしょうか」


「正解」


 やがて辿り着いた扉の前。

 アリサさんがドアノブを開き、続けて部屋に入る。


「こ、これは……っ!」


 狭い一室であった。

 本やケーブルのような線が散乱しており、お世辞にも片付いているとは言えない。

 その部屋のど真ん中に——人間一人が直立して入れるくらいの機械が存在していた。


「それがこの『偽造ポータル』」


 ポータル?

 ポータルってあれか。


 よくRPGとかにある転移装置のことだろうか。


 確かに——言われてみればそんな装置に見えないこともない。

 上と下に丸くて平べったい金属のようなものがあり、それを紫色の光が繋いでいる。

 さらにその装置……ポータルの近くにはモニターのようなものが備え付けられていた。


「地下迷宮内にもいくつかポータルは存在するわ。そのポータルは地下迷宮の外……入り口の前に繋がっているんだけど、当然冒険者証明書がなくては使うことを許可されていないわ」


「どうしてそんなポータルが?」


「一つはかなり下の階層までクリアしている冒険者がいちいち一階層から進まなくても、ショートカット出来るようにしているため。例えば十階層から地下迷宮を攻略したければ、入り口の前のポータルを使い十階層まで転移すればいいわ。

 もう一つ目は死亡のリスクを下げるため。いくら腕っ節に自信のある冒険者とはいえ、地下迷宮では年間何人もの人がモンスターに殺されている。だから死にそうになったら、地下迷宮内のポータルを使って転移して逃げればいい……ってこと」


 アリサさんの説明を聞く限り、ポータルというのは地下迷宮の外……ショートカット用の入り口の前。

 さらに逃げたり、すぐに帰れるようにするための地下迷宮内のポイント。


 その二つのポイントにしかない、と言っているように聞こえるが?

 どうしてそのポータルがシーフギルド内にあるのだろう?


「私が作ったのよ」


「ポータルって簡単に作れるものなんですか!」


「あら、そんなわけないじゃない。私が天才だから作ることが出来たのよ。ただ一つを作るので精一杯だったけどね」


 この人、もしかして何でもありのキャラなのか?

 アリサさんの言葉に驚愕していると、七色に輝いた手の平サイズの石を渡してきた。


「それは魔石。それを持って、私が作った偽造ポータルに入れば地下迷宮内にワープすることが出来るわ。謂わばこの偽造ポータルはシーフギルド内から地下迷宮内に直通する抜け道……ってわけ」


 その後の説明——アリサさんはこの魔石から魔力が放たれていて、その助けによってポータルのネットワークに接続し転送することが出来る。

 さらには帰る時にもこの魔石を持っていれば、この偽造ポータルに帰ることが出来る、と続けた。

 ネットワークとかサーバーとか、元の世界のようなことを言っていて、正直理解が追いつかなかったが、つまり「この魔石を持っていなければ偽造ポータルを使用することが出来ない」という認識で良いのだろうか。


「この魔石? ってのを持っていなくて偽造ポータルを使おうとしたらどうなるんですか?」


「魔石からの魔力の助けがなくて、無理矢理ポータルのサーバーに接続するから故障するわ。もしサーバーがダウンしてしまったら、ここの場所も冒険者ギルドに知られるかもしれないから、絶対にそんなことしちゃいけないわよ?」


 ニコッ、とアリサさんは笑いかけるが、そこから有無を言わせぬ威圧を感じた。


『そんなことしたら殺すわよ』


 そう警告しているようだった。


 ……うん。偽ポータル、使う際には、魔石持て。

 カケゾウ心の俳句に刻んでおこう。


「じゃあ早速行くわよ」


 アリサさんがまず装置に入る。

 俺も続けて、紫色の光の中に飛び込むが、


(アリサさんの太股が! 胸が! 体に当たっている!)


 人一人入れるスペースに無理矢理入っているものだから、アリサさんと密着してしまっている。

 ドレスの上からは分からないが、アリサさんって結構胸あるんだな……とか思っていた。


「もし良かったら後で触らせてあげてもいいわよ」


 ……この人、読心術でも使えるのかよ。

 あんまり邪念を抱いたら、後で酷い目に遭いそうなので首を振って煩悩を振り払う。


「じゃあ行くわよ——いざ地下迷宮へ!」


 やがて光が濃くなっていき、視界が紫一色に覆われた。

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