7・ステータスオープン
本日7回目。
今日の更新はここまでになります。
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カケル・ハヤサカ
レベル 1
HP 3
攻撃力 1
防御力 1
素早さ 30
所有スキル:【最速の才】【最速までの近道】【想いの種】
ステータスらしきものが頭に浮かんできた。
「ふふふ」
アリサさんはソファーに座って楽しげに笑っている。
「どうしたんですか?」
「ええ——ごめんなさい。私は【魔眼】スキルのおかげで、他人のステータスが見えるんだけど——あなたのステータス低すぎっ! って思ってね」
「人の不幸を笑っていたんですか!」
「人の不幸、私大好物なのよ」
唇を舌で舐めるアリサさん。
まあアリサさんが笑うのも無理はないだろう。
素早さだけは異常に高いものの、俺のステータスは軒並み3とか1とか。
基準が分からないので何とも言えないが……、
「一つ一つの項目についての説明はいらないわよね? HPが0になったらあなたは死ぬ。甦らせる魔法も——ないことはないんだけど、成功確率が著しく低いし、使える人がいないから期待しない方がいいわ。
攻撃力は攻撃する時の強さ。防御もそのままの意味。素早さは敏捷や動体視力が上昇するわ。後は魔法使い職になれば、ステータスに『MP』と『魔力』が加わって魔法が使えるようになるんだけど、あなたには関係ないわよね」
「普通の人はどれくらいなんですか?」
「そうね……レベル1の剣士だったら、HPが12。他の項目が5ってところかしら」
「お、俺の五倍なんですか!」
「あら、そんなもんで驚いていたら身が持たないわよ。一億人に一人と称される神ジョブの勇者なんか、レベル1でもHP70。他の項目25でMPも魔力の項目もあり、さらにスキルもてんこ盛りなんだから」
「レベル1でも俺とは25倍の差もあるのか……」
「ふふふ。だけど落ち込むことはないわ。今現在、勇者のジョブを授かっている人は一人もいない、って言われているだから。そんないない人のことを嫉妬しても仕方ないないわよ」
それがいるんだよな……。
憎き敵である中丸というチートキャラがな!
ヴァープル城で王様や司祭が驚いていた理由が今になって分かる。
「それで……シーフというジョブはこの世界ではどんな扱いなんですか?」
ステータス的に、な。
迫害されているのは十分分かった。
アリサさんは唇に人差し指を置く。
弾圧感のある唇が震え、それを見るだけで鼓動が早くなってしまう。
「見て分かる通り。素早さだけは高いものの、他のステータスは軒並み最低クラス。防具も装備していなかったら最弱のモンスターであるスライムにも一発でやられるわ。正直、犯罪ジョブとは言われているけどレベルが上がるごとに覚えるスキルが少々特殊なだけで、全体的には戦闘においては弱者の部類に入ると思うわ」
「何処までも不遇ジョブじゃないですか……」
素早さ30という驚異的な数値もシーフならでは、ということなのか。
まあいくら素早さ値が多かったとしても、一発当たれば即死で、いくら攻撃してもモンスターを倒せなかったら意味もないだろう。
「他のシーフもレベル1で素早さ30なんていうとんでもない数値だと思わないでね」
「どういうことですか?」
「いくらシーフでもレベル1だったら、素早さなんて12くらいが関の山。あなたは【最速の才】というスキルがあって、素早さ初期ステータス値が上がるようになっているから、30なんて出鱈目な数値があるのよ」
こんなところにチート要素があったのかよ。
……つまり不遇ジョブを授かった俺でもワンチャンあるということ?
そう質問するとアリサさんは「ふん」と鼻で息をして、
「いくら素早さが高くてもね……攻撃力や防御力に比べて軽視されがちなステータス値だし」
「やっぱり……そうですか」
肩を落とす。
「まあ、それは今後の頑張り次第ってところかしら」
アリサさんの優しげな声。
さて——アリサさんに説明されて如何にシーフが社会的にも戦闘的にも不遇ジョブだ、ということは認識することが出来た。
これから俺はどうやって生きていけばいいのだろう……。
そう途方に暮れていると、
「それで、あなた? これからどうするつもりなの?」
まるで内定がない子どもに尋ねる親のような口調でアリサさん。
「どうするって——」
「もしあなたが良かったら、シーフギルドの一員に入れてあげてもいいけど」
「ほ、本当ですか?」
「ええ。ご存知の通り、シーフっていうのは犯罪ジョブでありながら、同時にそれ以外の手段で食っていくことが出来ない不遇ジョブでもあるわ。
あなたには勿論、いくつかのクエストをこなしてもらおう、と考えているけど……普通にシーフとして働いてくれれば最低限の生活を保障してくれてもいいけど?」
シーフギルドの一員。
何だかカッコ良い響きであるが、そこに入れば要は犯罪者集団の仲間入りになってしまうのだろう。
盗みや殺し——非人道的なこともやらされてしまうかもしれない。
「どうして俺なんかを仲間に? 正直、俺レベル1だしこの世界の常識も知らないし戦力にならないと思いますよ?」
「私、弱者が大好きなの。元々、私もシーフでありながら弱者を守ってあげたい、と思ってシーフギルドを立ち上げたんだからね。あなたのような人間を受け入れるためにシーフギルドは存在する。それに——あなたは気付いていないかもしれないけど、面白いスキルも持っているしね。利用価値がある、とも考えたのよ」
弱者が大好きなの……。
それは『愛』だとか『恋』だとかいう感情ではなく、『イジめ甲斐がある』という負の感情だっただろう。
だが——その時の俺はアリサさんの本性に気付いていなかった。
なのでアリサさんの話は筋が通っていると思ったし、最後に『俺をシーフギルドに入れることによっての、アリサさん側のメリット』も喋ってくれたので信用に値出来る、と考えた。
故に——前のめりになり結論を出す。
「正直……俺はまだ死にたくない。死ねない理由もある。そのためにはお金を稼いで生活もしていかなければなりません」
「うんうん」
「だからアリサさん! どうか俺をシーフギルドに入れてください!」
勢いよく頭を下げた。
視線を下げるとアリサさんの太股が目の前にあったのは心の内に秘めておこうと思う。
「最後に聞いてもいい? 死ねない理由がある、って何なの?」
「笑われるかもしれませんが……俺は誰よりも強くなりたい」
率直な気持ち。
今まで陽の当たらない生活を送ってきた。
だからこそ……不遇ジョブであるシーフで誰よりも強くなり——そして神ジョブを引き当てた中丸でさえも。
俺はこの異世界で第二の生活を歩んでいきたい、と考えたのだ。
「ふふっ、その決意。忘れないでね」
アリサさんは立ち上がって、いつの間にか持ち出した剣を俺の方へと放り投げた。
落とさないように慌てて両手で受け取る。
「これは……」
「鞘から剣を抜いて念じてみなさい」
片手剣……というのだろうか。片手でも十分持てるオードゾックスな剣である。
早速、鞘から剣を抜いてアリサさんの言うとおりにしてみる。
【武器】
片手剣ウロボロス
攻撃力 12UP
そこまで強くはない普通の剣らしい。
ただ……両手で持つ程ではないが、やけに重い。重いくせにそこまで攻撃力上昇の効果がないのが気にかかる。
「じゃあその剣を持って行くわよ」
「何処にですか?」
アリサさんはクルッと俺に背中を向けて、歩きながらこう言った。
「地下迷宮でレベル上げよ」
スキルはステータスオープンをし、念じることによって詳細を確認すること出来ます。
【最速の才】……素早さの初期値が大幅に上昇する。
【最速までの近道】……レベルアップに伴う素早さ上昇値が極めて高い。
【想いの種】……???




