第5話 一目惚れした女性はNEET
最近になって仕事がようやく楽しくなってきました。
従事している仕事について色々覚えていくと面白い発見があったりします。
参入者の三人組は視界から男たちが消えると、俺の前で立ち尽くす少女に合流した。
「……ヴィンセント。いつから、そこに居たの?」
「え、いや、今さっきだけど」
「ふ、ふーん。そうなの」
色々、ありつつも分かったことは少女の名前がチーフ、鎧男がヴィンセントというらしい。あとの二人は確かスカンクとカナリアだっけか?
「……えーと、さっき会った子だよね。こんな所に来て、迷子?」
カナリアと呼ばれてたドワーフに問われるが否定出来ない。それでも16歳で迷子ですなんてとても言えやしないので、とりあえず笑って誤魔化すがスカンクと呼ばれるアライグマが怪訝な顔をして口を開いた。
「おい、兄ちゃん、笑ってられんぞ。何も知らん奴がこの街に来ちゃあ、あかんよ」
……とりあえず、俺はお前を見て笑いそうになるのは何故なんだ? まぁ、堪えてるけどさ。
「初めて街に来たもんだから、道が分からなくて迷ってしまって」
「「「「……迷子じゃん!!」」」」
あれ、何だろ。今イラって来ちゃったよ。それに迷子って俺だけじゃないよね。ねぇ。こんなハモられて言われると流石の俺も反論したくなるが、否定出来ないのでとりあえず抑えるけどさ。
どうも調子が狂わされそうだったが、チーフと呼ばれる迷えた少女が指示を出すかのように、一つの提案をした。
「まずは、状況を整理したいからどこかの酒場で話そうか」
「あ、ちょっと、俺、約束があるから戻らなきゃいけない場所があるんだけど……」
俺は何故か挙手して話に割り込んでしまった。この流れだったら適当に誰かがあそこに行こう、とか言って決まるものだったのに。
その俺の言葉にコホンッと咳払いしてチーフと呼ばれる少女が興味を示すかのように俯いて問いかけた。
「ち、ちなみに、何処、ですか?」
何故に敬語!! まぁ、もごもご声に出しているのが可愛いから問題ないけどね!!
「えっと、確か……」
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
『酒場 デスパレート』俺がこの街に来て初めて入店した酒場であり、ギルドの手続きを行った場所でもある。最初店の名前は分からなかったが、受け付け嬢の名を挙げると、あそこかぁと理解した四人連中。今更だが物騒な店名じゃないか。
それが、つい30分前のことだ。
「……で、私の名前がチーフ。あとはもう分かるよね」
チーフは笑ってジョッキに注がれた一杯のビールをごくごくと一気に飲み干し、ぷはぁーとなんとも呑兵衛な感じをかもし出して酔っていた。
ちなみにチーフが何故笑っているかというと酒のせいではなく、俺が街へ来てこの酒場から出て行って起きたことを話したからだ。誰でもドワーフにぶつかれば怖くなるし、鎧男に睨まれば冷や汗はかくし、アライグマの名前がスカンクはつっこみたくなるだろ。
俺たちは空いていたカウンターに横並びに座った。俺の左隣にチーフ、カナリアの女性陣と右隣はスカンク、ヴィンセントの順番で座っていた。
「ちょっと待ってよ。僕の名前はまだじゃない!?」
ヴィンセントが、がしゃがしゃと何処から出したか分からない身分証明賞を差し出してきた。身分証明賞とはギルドの手続きでも必要になる羊皮紙のあれだ。
『名前:キングジョージ・アームストロング・ヴィンセント・ヴォナパルト14世 職能:見て分かる 等級:秘密』
なんだ、これは? 職能は任意に変更出来るというのは知っているが、等級のこれは何だ? そして名前が長すぎるんだが。
「ナユタ君、知ってたかい。職能を既存のものじゃない名前で変更すると、等級の欄に何でも書けちゃうんだよ」
「本当ですか!? 全然知らなかった……」
ヴィンセント……もとい、ヴィンセントさんは証明書によると22歳なので敬語を使おうと思います。
「この際だから、証明書を回して自己紹介とでもいこうぜ」
隣でスカンクが酒を呷ってから吐き出すかのような口調で提案した。提案通り順番に俺の元へ届く各々の証明書を見ていく。チーフとカナリアは息を呑むかのような表情で俺を見ていた。
先ずは、
『名前:スカンク 職能:銃使い 等級:乱射魔』
銃ってなんだと思うがあとで聞くとして、
『名前:カナリア 職能:魔法使い 等級:魔剣士』
魔剣士といえば魔法使いと剣士の共通派生であるが、魔法使いと剣士の両方の技量が確かでなければ得られない等級だ。ドワーフで魔法を使うと聞いたことないが、例外もあるのだろう。
『名前:チーフ 職能:N・E・E・T 等級:働いたら負け』
……おい、ちょっと待てや!!