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第3話 ヴォルグの獣

~前回までのあらすじ~

近日中に投稿すると予告した翌日、投稿した拙作。読者の皆様方に見てもらいたい一心で書いた拙作。


工業生のときは旋盤が得意だった切削。


今、ものづくり精神で書き留めたこの作品はお客さま(読者様)に喜んでもらえれば本望です。


これが、ものづくり魂や!!

 少女は気味悪がずにそっと俺に近寄って両膝を曲げ同じ視線になった。


 「……大丈夫。あなたは駄目人間じゃないから、……頭の方は駄目かもしれないけど」


 そう言って涙目の俺の目元を自身の袖で拭って、にこっと微笑みかけてきた。


 嗚呼、止めてくれええええ、惚れてまうやろ!! 何か余分なこと聞こえたがどうだっていい感じななっちまう!!


 俺はとりあえず落ち着こうとして、1つ大きな息を吐いてからすっと立ち上がり顔を両手で叩いた。まずは落ち着くことだ。聞くべきことは第一に、ここはどこなのかということ。二番目に干からびそうな俺の体を潤わせてくれそうな店、そして第三に彼女の名前だ。いや、二番目にするべきか?

 両膝を抱えたままの彼女にここは何処なのか聞いてみるか。と思索するも新たな声が俺に向けられた。



 「ここらじゃ見ねぇ顔だな、兄ちゃん。迷子になったのかい、俺らが道案内してやろうか?」



 男の低い声が俺に向けら、そちらを見るとそこには4人の身なりが悪い男たちがいた。

 さっきまで俺の周りには誰も居なかったのに、いつの間にか気配も感じさせずに近づいてきた。この街はどこかおかしいと思わざるを得ない。



 「げっ、“過剰殺戮オーバーキル” が一緒かよ。どっか行ってろよ」



 4人いる内の1人が少女の方を見て、うろたえた声でゴミを払うかのように手の甲を二度も少女へ振る仕草を見せた。

 俺はその言葉に息を呑んだ。両膝を抱え、俺を見つめている可憐な美しい少女の顔を見るが、こんな子がそんな物騒な名前で呼ばれるのを聞いて困惑した。只でさえ、喉が渇いて口の中が粘ついているのに更にその感触が拡大するかのようだ。

 


 もちろん、俺は彼らの言葉を信じない。身なりが怪しい時点で信用は出来ないし、薄気味悪い笑みをしている。

 反面、彼女は……身なりは怪しいが、信用出来る気がする。理由はないが。



 「おい、あんた達変なこと言うの止めろよ。こんな暴力とは無縁そうな子が“過剰殺戮”とかそれは無いだろ!!」



 俺は彼女を庇うように前へ出て男たちを睨むが、男たちは屁でもないように同じ態度をとっていた。



 「じゃぁ、殺戮機械か? まだあるぞ、“血染めの死神”や“狂気の魔女”、有名所で言えば“ヴォルグの俊狼”なんかだな」



 俺はこの少女が有名な“ヴォルグの八の獣”の1人だと聞いて耳を疑った。

 


 “ヴォルグの八の獣”とはヴォルグ皇国と呼ばれる軍事大国に集う八人の猛者だ。俺が村で聞いた話では、一人一人が独立した隊であるのと同時に、たった1人の隊でもあることだ。単独で1つの軍隊に比肩し、巨竜をも倒せると聞く。

 何にせよ、この男がべらべらと話していることから即興で考え付いた異名である訳がないし、大の男4人がこんな女の子を警戒しているのはおかしい。

 


 俺は庇っている少女の方を振り返り、その顔を覗く。少女はひどく怯えている。まるで親から突き放されたような、孤独で、どこか悲しい顔をして俺を見つめている。


 

 ―また、避けられていく。信じて、お願い—



 少女は何も口に出してはいないが、視線がそう訴えてくる。どこか、俺と似ている気がする。

 俺は孤児として村の教会で育てられていたから、親の愛とか分からない。だからこそ、あの時の自分と同じ顔をしているこの少女の気持ちがよく分かる。



 「……“過剰殺戮オーバーキル”だか“ヴォルグの俊狼”とか、そんなんどうだって良い」



 俺は大きく息を吸ってから覚悟を決めて言う。覚悟っていうのは将来的にこの言葉がどう俺の人生に作用するかといことだ。



 「俺はこの子に一目惚れしたんだ!! だから、そんなこと(・・・・・)は気にしてない!!」



 男たちはお互いに顔を見合わせてしょうがないとでも言いたげにため息を吐き、同時に口を開いて、

 「ストック・ポーチ展開」と抑揚のない声を発した。



 すると、男たちが手首にはめているブレスレットが青白く発光し同色の光の粒子を放つと、彼ら各々(おのおの)の前方にその粒子が球体に形成される。それを、無骨な手で握ると球体が弾かれたようにある形を新たに形成していく。

 男たちの手には剣や斧といったこれまた無骨な武器が現れた。



 男たちから感じる気迫が一気に増していき、そして殺意となる。その殺意の対象は俺限定だ。



 「最初はもらうもんは貰って、お外に捨てようと思ったがよぉ、兄ちゃん悪いけど死んでくれや」



 俺は何も無いところから男たちが武器を取り出したのに驚愕した。ストック・ポーチという魔道具は上級戦士しか持ちえないが、それもさることながら、とても高価なものである。盗賊まがいな彼らが持っているわけないと思っていたが、彼らの闘志に似た殺意が本物だと証明している。



 ストック・ポーチの形状は様々で、彼らのように携行できるブレスレット型のものや、武器に内蔵されている複合兵装というものがあるが、後者は軍関係で無い限り持ちえない。そして、戦士にとって重大なその役割というのは武器や兵装品といったものの集約装置だ。

 あらかじめ武器を内包して必要な時に必要な数だけ展開することによって、重装備をした戦士の機動力を補うことが目的だったが、今では荷物入らずという意味で戦士ギルドの一部の戦士が使用している。



 「ははっ、驚いたか兄ちゃん? 俺らは上位戦士様だぜ」


 

 「……どうして、そんな落ちぶれちまったんだ!? お前ら上位戦士の誇りはないのか」



 俺はへらへら笑っている男たちを憤怒をこめて睨んだ。

 上位戦士というのはギルド公認の歴戦の猛者でもあり、いわゆるエリートだ。誰もがなれるわけでは無く、戦士ギルドという弱肉強食の世界では弱い者から切り捨てられていく。生き残った強者が上位戦士となり、弱者は生にしがみつき必至に生きて強くなっていく。

 そんな弱者が追い求める理想の姿こそが上位戦士なのだ。なのに、


 

 「こんな所でくすぶってていいのか。お前らは俺らの目標だろ」



 俺は自分の命が危ういということを忘れ、眼前の戦士たちに抗議する。戦士たちも俺が何を言っているのか理解し一瞬だがたじろく。

 誰もが生まれながらにして強者になる訳じゃない。惨めな思いを経験し、辛いと思いながらも必至になるから強くなっていく。それは盗賊まがいの彼らも分かっているはずだ。



 「うるさい、お前みたいなひよの若造に何が分かるんだ!!」



 4人のうちの1人が俊足だと思わせる程に俺との距離を一瞬で詰め、両手に握る二振りの両刃の斧を上段から振りかぶった。 



 ……ッ!! は、速い!!



 俺は何の構えもなく自分の姿が三枚下しになるのを幻視した。だが、

……前書きが意味分からなかった人は旋盤をやってみよう。


そこには男たちの千分の一ミリメンタルな世界が待っているwww

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