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前夜暗闘10



「全てを守る、ね。言うのは簡単だが、分からない事ばかりだな。守るものに具体性もなく、何者から守るのかも分からない」


「いや、そんな事も無いかもしれない。状況を理解出来ず、自分が立っている場所すら怪しいが、彼の残したものの意味は解き明かすことが出来る。意味が無いものなど無いはずだから」ワワさんは自分に言い聞かせる様にそう言い放つ。


「それに、本当に情報が一つもないとは言い切れないだろう、京介」


「いや、どうかな。怪盗は態々、この懐中時計が予期しなかった別の人に見つかることも考慮して、中身の情報を曖昧にしている。その様な人間が形あるヒントを残しているとは限らない」


「そうだな、確かに目に見えるものであるはずが無い。つまり一目見て、分かる様なものでは無いはずだ。この蓄光シールの仕掛けの様にそのままの状況では見つかりはしないものだ」


「そんなもの見つかるか?」


「大丈夫だ。大方目星はついてる」

 そう言うと、彼女は部屋の中を窓の方に進む。落ちている物を踏まない様にピョンピョンと跳ねながら先へ。


「京介、君はその場から動かないでくれ。暗闇の中でもその柱の側からは」

 言った後、彼女はカーテンをばっと戻す。また暗闇。開いているカーテンを閉じ、閉じたカーテンを開き、そしてまた開いたカーテンをまた閉じた。二度手間、三度手間、効率的とは思えない。


「効率的では無いとそう思ったろう。ワワさんは一体何をしているのかって。ふふん、だからこそ、この行動の反復が、彼の指し示したいものへと確かに繋がる」

「京介、柱の中の鉄棒に接着された懐中電灯をつけてくれ」

 暗闇の中で、僕は柱のレンガの冷たさを辿りながら、先程開けた穴へとまた手を入れる。中には部屋と別の空気が流れている。それを感じる手のひらをゆっくりと鉄棒に接触させる、金属は局所的に皮膚へ温度を伝達する。


 僕はそこからゆらりと手を下ろしていって、懐中電灯に触れる。スイッチ式の懐中電灯、光量の調節機能は付いておらず、倒せばオンとなる。カチッとなどが鳴る。


 光は柱の小さな穴から抜けて、部屋の壁に向かう。狙い澄ましたかの様に、ある一点を。


「京介、部屋に入った時にはカーテンは開いていた。それが怪盗の残した部屋のあり様だった。蓄光シールを探すと言うヒントから私達はそのカーテンを閉じ、懐中時計を見つけた。そして残された物の確認をする為にカーテンを開け光を部屋に入れた。そして、もう一度部屋を暗くした。この光の線を確認する為に」

「……ハンティングトロフィー。動物の首」ワワさんは言葉を漏らす。


 実に単純だけれど、偶然には見つける事が出来ない仕掛け。確かにこれなら、僕ら以外には見つける事が出来ない。


「で、このハンティングトロフィーはどう言う意味を持つ?」


「……これは疑念を確信へと変化させる意味を持つ。この骨格は紛れもなく『牛』だ。これは偶然じゃ無い、この島にある全てが一つに収束しようとしている」


 




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