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前夜暗闘8



「京介、ミノタウロスとはどういう事だ。それはつまり私達が数ヶ月前から噂と共に追い求めていたもので間違いないのか?」


 ワワさんは珍しくやや興奮気味に僕に言葉を投げかける。


 その姿とは裏腹にこの事実を思い出した勢いで発言してしまったことを強く後悔した。手紙の内容には触れたくなかった。四罪ヶ楽王断の遺産相続、そして真空の命を狙うという、いかにも人目に触れてはならない――そんな内容だったからだ。嘘をついて僕の自殺計画をないものにしてもらったお返しでは無いけれど、出来るだけそこは伏せる様に心がける。


「手紙があって、その封筒にミノタウロスの絵が描かれていたんだ。その内容が四罪ヶ楽真空、彼女の命を狙うというものだった」


 内容の衝撃さにワワさんは言葉を発する事は無かった。状況整理を頭で先に行っていると言った様子である。


「それは四罪ヶ楽真空がこの島にいる誰かから狙われているという事か?」


「そう考えられる」


「では仮定としてその人物が怪盗の敵と同じだとするならば、怪盗はその犯人に繋がる証拠を得たという事だろう」


「けれどそんな証拠を掴んだのに、それを声高に叫ばなかった事が不思議だ」


「事情があったのだろう。この様に私達にだけここへ来る様に仕向けた事もそういった事情を想定すれば繋がる部分もある」


 ワワさんは辺りを再度見渡す。部屋の中には日差しが差し込んでそれだけが部屋の中を照らす。しかしこの雑多から物を探すというのはやはり現実的では無い。ゆっくり整理しながら探すしか無いか。


 僕はしゃがみ込んで、倒れたタンスを持ち上げる。


「怪盗に私達を呼び寄せようとする目的があったとするならば、その為の何かがあるはずだ。物なのか、匂いか、音か、あるいは景色か、分からないがある、何かが」


「何かね……」


 僕はふと窓の外に風に吹かれる旗を見る。向かい側にある塔の上に昇っている太陽が描かれた旗。それは昼を表している。


 窓に近寄ってガラス戸を開くと、微風が中に吹く。昨夜、怪盗によって切られたロープの残りが上から垂れ下がる。陽の旗は辛うじてこちら側にも残っていた。


「京介、分かったかもしれない」


「え?」


「この部屋は怪盗とのいざこざがあって誰も中へは入り込んでいないと聞いた。つまり犯行後そのままの状態だった。つまりこの形、部屋の乱雑は怪盗の残したヒントそのものを意味する」


「だからどういう事なんだ?」


「京介、部屋のカーテンを閉じてくれ」

 確信の混じるワワさんの言葉に、僕はカーテンをゆっくりと閉めていく。

「きっと、答えは浮かび上がる」






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