三十八話
王都で内功について教え始めてから10日が過ぎた。
「いいか? 内力ってのは、体内で作られる気の事だ。その気を使う技術を内功と言う。内力が高まれば防御力も免疫力も増すんだ。内力を鍛える為には、呼吸法や集中した動作の繰り返し等、地味に積み重ねていくしかない。しかし、これが出来れば勇者不在の今でも魔族と戦えるんだ」
アリマが兵士達に教えている。
武術の呼吸法を教えて、常日頃からやるように指導してるらしい。
兵士達は熱心に話を聞いているんだけど、どうにも雲を掴むような話で理解しにくいみたい。
「あのさ、イメージするといいんだよ。呼吸法で生まれた気を丹田……おへその下あたり、かな? に蓄積していくんだよ。そしたら両手を前に出してね。そして吐き出す呼吸と共に気を手から撃ち出す!!」
何人かの兵士からは、腰から背骨に沿って何かが爆発的に上ってくる感じがしたとの声が上がった。
「それが気だよ。何か通ったな~ってのは分かったでしょ? 最初は、そいつが血液と一緒に体中に循環してるイメージをしてね。手や足や体にはツボがあるんだけど、そこに気が流れ込むことによって、力が充実していくんだよ。ツボとツボの間には道がある。径脈って言うんだけど、そいつは血管と違って流れる気の量でドンドン太くなるんだよ。呼吸法で生成した大量の気を常に体の中で循環させて、丹田に蓄える。絶対の内力を増やしていこう。そうしたら、究極的には魔族の攻撃すら跳ね返すよ」
兵士達からは剣技大会の実力者達が疲労しきって動けなくなった事についての質問がきた。
「私も不思議なんだけどね。彼らほどの実力者ならば内力も大きいはずだし、あんな風になるはずはないんだけどね。今、教えてるのは異世界の勇者の技なんで、この世界とは相性が悪いのかもね。ただ内力を鍛えていけば、あれは防げるはずなのよ。それに、たった一撃しか撃てない技だとしても、兵士諸君の力が魔族を易々と斬り裂くんだよ。覚えて損はないでしょ?」
アリマが続いて言う。
「まぁ、そんな場合は戦術の問題だよな。軍をいくつかの部隊に編成して、内功を使った隊は後方へ下がり回復魔法を受けるか休憩する。そして別の部隊が戦闘を継続、内功を使ったら交代する。そうやって回すしかないな。軍の再編とか時間がかかるから、そこは軍の上層部の腕の見せ所だろうけどな」
なお数日ほど王都で指導を続けたけど兵士達からも、内功を使えるものが増えてきたので、あとは任せる事にした。ランスローやガレス、アーサー達は、己の配下を鍛え上げるために、納得がいくまで王都に残留することになった。
私とアリマ、子供と弟子がクロヴィアへ行くのだ。




