百十話
敵陣の奥深くに入り込んで、更なる混乱を誘おうと巨人を斬りながら進んでいく。ここまできたら腕や足を斬り、胴体を薙いでいくだけでいい。致命傷を負わせなくても構わない。それで敵は戦闘力を失うし、倒れた際に他の巨人を巻き込むこともある。あんまり深入りしてしまうと、生きて帰れなくなりそうだけど、そこは味方を信頼してる。……してもいいのよね?
ちょっと疲れてきたかなって時に、敵の動きに変化があったのよ。私から見て右前方が何か混乱してるんだよ。恐らくはランスロー達が奇襲をしたんだろうね。私の後ろからニコ達の怒号が響き渡る。よし追いついてきてるみたいね。
「何人か命がいらない奴は、私についておいで!!」
そう叫んで私はランスロー達のいるであろう方向へと突き進んでいく。私の後ろを知らない獣魔族の女の子が5人ほどついてくる。ついてくるのはシードとサラだと思ってたけど、なかなかやるね。振り向いた私がじっと見つめると5人は頷いた。覚悟は出来てると言いたいんだね。
戦闘しながら5人の戦いぶりを見てたけど、全員が薙刀のような武器を持っていて、それを振り回してるんだよ。足元を払って斬り、上から振り下ろし、下から斬り上げ、前の敵を斬り倒してる時に背後から襲われた時は柄の部分で巨人の鳩尾を突く。内力で力を増して薙刀を高速で振りぬくので破壊力は半端ではないみたい。それが一人ならともかく、5人で連携してるので隙がないんだ。
私の弟子やランスローのような使い手を除いて、こんなに強い子達には初めて出会ったなぁ。けどまぁ、ここまで強いなら気にしなくていいね。さらに速度を上げて斬り進んでいくと、前方にランスロー達の奇襲部隊が見えてきた。
「ランスロー!! ガレス!!」
「おう!! アルマじゃねぇか!! 敵が背後を気にしてやがるから何かと思ったら、アンタが突破してきたからか!! あいかわらず無茶をやりやがる!!」
私の声に反応してきたのはガレスだった。こんな状況でも余裕だなぁ、このオッサンは。それにしてもランスローの姿が見えないんだけど、どうしたのかな?
「ランスローはどうしたの?」
「今、アルマがやったみたいに敵陣の突破を試みてる」
「それってムチャだよ!」
「お前が言うな」
「第一、ランスローってば指揮官じゃないの!」
「だから、お前が言うなってんだ」
「私はニコに指揮を押し付けたし、シードやサラだって出来るし」
「ランスローも俺に押し付けたよ」
「で、何で敵陣突破なんかやろうとしてんのよ?」
ガレスが言うには敵の様子が変だったんだってさ。奇襲をかけたガレス達から見て、左前方は私達の本隊がいるから、そっちで大混乱してるのは理解できるんだけど、まっすぐ前方の方でも何か騒ぎが起こってるらしい。更なる別働隊なのか、それともコボルト族が攻撃を仕掛けているのか。ランスローは、それが気になったらしい。
「でも、こっちは人数少ないんだし、あんまり分散するとマズイんじゃないの?」
「ランスローもそう言って一人で突っ込んでいったんだが、獣魔族の若い奴が4~5人ついていった」
「たった4~5人で!? 死にたいの!?」
「5~6人で突破してきたクセに、お前が言うなってんだよ」
「心配だから、私も行くよ!!」
「一人、すげぇのがいるから大丈夫だと思うが、まぁ一応頼むぜ」
まぁ一応って何よ、その言い方。私はついてきた5人娘を振り返って聞いたのよ。
「あんた達、これから私はランスローを追いかけるけど一緒に来れる? ダメなら、ここでガレスと一緒に戦ってなさい」
5人娘は声を揃えて「行けます!」と元気よく答えたのよ。そして私達は再び敵軍へ突っ込んだ。ここが死地となってもおかしくないのに、不思議とそんなに厳しい状況だと感じない。この娘達が強いこともあるんだけど、巨人達の士気が低下してるのかもしれないね。二方向から攻撃を受け、内部深くまで突撃をかけて暴れてる部隊が二つもあるんだもんね。ランスロー達は、すぐに見つかったんだ。そしてガレスの言葉を思い出して納得したよ。
すげぇ奴がランスローの側にいて敵をなぎ倒していた。
ランスローは流れる水の如く、あるいは舞のように敵の中を動いて敵を倒してるんだけど、そいつは違うんだ。どれほど激しい流れの中でもびくともせずにいる巨大な岩のイメージだ。そして一度動き出すと暴風の如く竜巻の如く荒れ狂う。よく見れば両手剣を片手で振り回してやがる。他の連中も相当な使い手だけど、コイツが凄すぎて目立たないんだ。
ガレスが平然と送り出したわけだ……




