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隣室のマカミさん  作者: 夜野月人
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11月3日 お隣さん

         ―――ガタガタッ―――


 昨日から引っ越ししてきた右隣に引っ越してきた人がやって来たのか、物を動かす音や荷物を並べる音が壁側から聞こえていた。

 今年で29歳になる私、田所(たどころ) (あかね)はその物音を聞きながら自宅でデザイナーとしてのデスクワークをしていた。

「今日もお隣さん、忙しそうだなぁ……」

 なんて呟きつつ、書きかけのデザインを仕上げていく。

 会社内でインフルエンザが流行ってしまい、ついこの前から家でのデスクワークという仕事が始まった。一日目は誘惑が多くてとても仕事にならなかった(けど頑張って仕事した)が、昨日から始まったこの引っ越しを頑張る音を聞いてからは捗るようになった。

 昨日の最初こそビックリはしたものの、物を壁側に置いたりしてる音だと分かり引っ越しだと悟ってからは気にならなくなった。

 むしろ深夜は避け、日中頑張って家を整えてるお隣さんに頑張れという気持ちすらあった。このデスクワークをしてる部屋の部分の壁と向こうの壁は分厚い。なのに物音がするという事は大きな家具の配置に悩んでるのだろう……疲れるだろうなぁなんて思いながら自分も頑張らなくてはと気合いを入れてタブレットに向かい直した。


―――――――――――――――――――――――――――


 お腹が空いてふと顔を上げると、時計はもう晩御飯の時間を示していた。耳を澄ますと隣の部屋の音も止んでいる。夜になったので家具の移動を止めたのだろう。

「んん~……」

 ぐ~っ……と体を伸ばして疲れを少しとる。デスクワークでちょっと痛めた首筋や肩は後で電動マッサージしよう、と思いながらキッチンへ向かい晩御飯の支度をはじめる。

「♪~」

 鼻歌まじりに晩御飯を作りながら、ふとお隣さんの事が気になった。引っ越してきたばかりで大きな家具を配置してる最中なんだろうけど……食事どうなってるんだ? と。

 大型家具しか出していないのならワンチャンカップ麺かもしれない。キッチン用具を出してるなら話しは別だけど……と、心配が滲む。

 引っ越してきたばかりの昨日も、今日も挨拶に来なかったし……いや、引っ越したてなら挨拶は後回しになるだろう。荷物開封が第一なのだし、となんとか自分を納得させて料理を進めた。

 けれどお隣さんが気になってしまったからか、いつもより作りすぎてしまった。……さすがにこの量は一人では食べきれない……冷蔵庫に入れてしまえばいい話だが、お隣さんに持っていけばお隣さんも挨拶に来なきゃという気持ちにもならないしどんな人か見れるし、でも迷惑かも、でも……と色々な思考が頭の中でグルグルする。

「……~考えても仕方ないっ…!」

 私はパックに余りものを詰めて持ち、家から出てきちんと鍵を閉め隣の506号室とある部屋の扉の前に立つ。

「……」

 すぅ……ふぅ……と深呼吸してちょっと落ち着く。迷惑なら迷惑そうな素振りするし、受け取って貰えないなら冷蔵庫に入れたらいい。コミュニケーションは大事だ、これも経験。大丈夫、頑張れ私…! そう意気込んでチャイムを押した。


   ――――――――ピーンポーン―――――――


 聞き慣れたチャイム音が通路にも鳴り響いた。夜は音がよく通る。

「……」

 シーン、と静まり返った。出てくれない。……当然かもしれなかった。大きな家具を動かして、荷物を並べて、整えて……体力を凄く使う。もしかしたら私より早めに晩御飯を食べて眠ってしまってもあり得なくはない話だ。

 なら、起こしてしまわないように部屋に戻ろう。私は少し残念な気持ちになりつつも部屋に戻り余りものを冷蔵庫へ入れた。

拙い文章で育っていきます故、何か変な箇所や字抜け、感想やリアクション、レビューをお付けしていただけると作者が喜びますし助かるのでお待ちしております。

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