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異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~  作者: こじまき


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エピローグ 今日も保育士やってます

私は結婚後も養育係の仕事を続けながら、日によってベルント・タウンハウスの保育所と、魔法師団に新しくできた魔法師団教育部付属保育所を巡回している。


かっこよく言えば、スーパーバイザーみたいな感じ?


そして今日の私は、魔法師団教育部付属保育所で十三時までのパート保育士。


魔法師団教育部付属保育所には、「魔力をもつ子どもたち」が預けられている。保育士さんも全員魔法使い。魔力をもつ子どもたちは通常では考えられないような事件を引き起こしてくれるので、普通の保育士やシッターでは対応できないからだ。


「サティ先生、一歳児・二歳児の給食補助をお願いできますでしょうか」

「はいよー」


一歳児・二歳児担当のブランカ先生と一緒にテーブルを並べ、配膳し、手を合わせる。


「いただきます」

「いただきまーす!」


保育士の必須スキル「早食い」で給食を胃に流し込み、子どもたちの食事を補助しつつ見守る。


「あらあらフローラちゃん、お皿ががたがたしてるよ。左手を添えてみようね」


そのフローラちゃんの目が、一点に止まった。


「何見て…え、いやあああああああんっ!」


彼女の視線の先では、水属性の魔力をもつヴァッセルくんが、ミネストローネを魔法で増幅させて床をスープ浸しにしている。


「ヴァッセルくん、スープ増やさないで!」

「おいちかったかや」


そうか、美味しかったから、もっと食べたくて増やしたのね。わかる。わかるけど増やしすぎだし、おかわりはあるからおかわりしようねぇ。


チートで増量された部分を消しても、もともとあった具とスープは消えないから雑巾で拭かなきゃ。なんと中途半端な…というか、現実的なチートなんだ。


「そう言えばヴァッセルくん、えいやしたネックレスはどうしたの!?」

「あしょこ」


ネックレスは天井の片隅で氷漬けになり、スズメバチの巣のようにぶらさがっている。


誰が何の目的で。そんなこと考えてたら神経がもたない。


「ブランカ先生、余裕あったら溶かしてくれません?私手が塞がってて」

「はい、すぐに」


火魔法使いのブランカ先生が氷を溶かしてくれ、ネックレスを拭いてヴァッセルくんの首にかけた。と、今度は。


「げ、火」


火属性のフランミルくんが「ぼくも火できゆ」とブレスレットを外して、自分の手でハンバーグを追い焼きし始める。


「だめ!」


私が止める暇もなく、フランミルくんのハンバーグは付け合わせの野菜たちとともに灰となって消えた。


「フランミルくん、火は危ないの。お友達が火傷するかもしれない。それに今はハンバーグが燃えちゃったし、お皿まで焦げちゃったでしょ?」

「う…ハンバーグなくなった…」

「でしょ?上手になるまでは、練習のとき以外は使っちゃだめ。ブレスレットも外さない。わかりましたか?」

「わかった…」


余っているハンバーグと付け合わせを新しいお皿に盛り、ようやく食事再開。


と、急に部屋が暗くなった。


「…?雨雲かなんか?」


窓の外を見ると、園庭がクスノキの大木を中心とした「神が住む森」みたいになってる。


ノスタルジックで素敵っちゃ素敵なんだけど、「勝手に木を生やしたらだめでしょ!」と年長クラスのレギンくんが叱られている。まあ、それはそう。


「かくれんぼが面白くなると思って…」

「そりゃ面白くなるでしょうけど、このままじゃドッジボールができないじゃないの!シュタイン先生、どうにかなりますー?」

「火魔法で燃やしたほうが早いかもしれませんよ。でも煙が出るので、子どもたちが帰ってからやりましょうか」

「え、じゃあ午後からの年中児のドッジボールは?みんな楽しみにしてるのに」


私は「魔法の森なら、私が消せますよー」と部屋の中から声をかける。


そうやって賑やかに魔法が飛び交う保育園。「スープを増やすな」とか「勝手に木を生やすな」とか、ここで働いてなかったら一生言わない言葉だったろうなと思ったら、思わずふふっと笑ってしまう。


給食を終えて森の木を一本一本消してたら、もう十四時。


「あ!時間過ぎてる!私はお先に失礼しますね。フローラちゃんは今日早迎えなので、帰りの準備はしてあります。あとヴァッセルくんとフランミルくんのお家の方には、もっと外しにくいアクセサリーに変更できないか、相談したほうがいいですね」

「承知しました」


「サティさま、かえっちゃうお?」という子どもたちに、「遠くの町で出張えいやがあるの。次は来週来るね」とハグをしてバイバイ。


王城に走って戻り、待ってくれているドラゴンに跨る。


クロが連れてきた仲間のうち、「うどんが出るなら王城で飼われてやってもいい」という態度を示してくれたドラゴンの一匹。名前はピピ。


クロよりずうっと穏やかで、「乗せて」っていっても嫌な顔ひとつしないし、急旋回も急降下もしない安全運転ドラゴンだ。ドラゴンが全員生意気ではないと教えてくれてありがとう、ピピ。


私の後ろには、マリウスさんが乗った。


マリウスさんはお父さんの後を継いで内務卿になっていて(拒否していたけどアロイスさんに無理強いされた)、今日は同じ方面に出張があるのだ。というか、出張の方面と時期をできるだけ合わせるようにしている。


ピピのうえで、マリウスさんが私の肩に顎を乗せて「給食の匂いがする」なんて言うから笑ってしまう。


「給食臭い女はお嫌い?」

「いいや、そんなサチが好きだよ。でも出張のときくらいしか、二人きりで過ごす時間がないなんて」

「お互い仕事が忙しいもん。だけどそのおかげで、一緒に過ごす時間が貴重だってわかるよね」

「物は言いようだなぁ」


呆れたようなマリウスさんの声に、私は振り向いて彼にキスをした。


「貴重な時間を一緒に過ごしてくれて、ありがとう」

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