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異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~  作者: こじまき


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67 小さなヒーローたち

「では問題を出します。答えられたら、認めてあげてもいいですよ」


いきなり問題出すとか低学年らしい荒唐無稽さ。しかも認めてあげるとか何様?どちら様?


でも周囲がはらはらしているのを横目に、レオくんは「クイズですか、楽しそうですね」と答えた。普段私やクリスタちゃんとやってるクイズとはレベチだろうが…大丈夫?


「では…百二十四年にレイデンバーンとロインツが和平協定を結んだ際、協定の締結に尽力した外交官は誰?」


はい、いきなり難問。


「レイデンバーン側がバルツァー伯爵、ロインツ側がリンデン伯爵です。それぞれ功績を認められ、のちに侯爵になります」

「く…では、リンデン伯爵の側近は?」

「ハノーフ子爵です」

「くぅっ…!では!ハノーフ子爵が飼っていた鷹の名前は…っ?」


歴史上の脇役の、さらにそのペットの名前とか、カルトクイズすぎんか。ブルーノ先生すら首をひねっている。


レオくんが「うーん、わからないですね」と言いかけたとき、いつの間にやら横にいたルカスくんが「ミオです」と答えた。


「正解だけど、今のはズルだ!王太子殿下の力じゃない!」


けれど今度は、これまたいつの間にやらレオくんのそばにいたアドリアンくんが「いいえ、今のは王太子殿下の力です」と答えた。


「何を言ってる!答えたのは殿下じゃなくて、こっちの無表情じゃないか」


それはそう。答えたのは「無表情」ことルカスくん。けれどアドリアンくんは首を振った。


「ルカスも私も、王太子殿下のために己の力をすべて捧げる所存。つまり私たちの知力も体力も精神力も、すべて王太子殿下の力となるのです」


こくんとルカスくんが頷いた。ユリウスくんが「俺たちも!」と大きな声をあげ、「ユリウス、僕はいいよ」と抵抗するリオネルくんの背中を押しながら進み出て、五人対一人の構図になっている。


「そ…そんな理屈が通るか!家臣の力を借りて正解しても、王太子殿下本人が優秀だという証にならないじゃないかっ!」

「いえ、優秀です。君主に必要なのは、優秀な人材を集めて統率する力。天才のルカスや、将軍になるユリウスや、危機管理能力に優れたリオネルを従えていることこそ、王太子殿下が君主として優秀であることの証なのです」


「そう言えるあなたももちろん優秀よ、アドリアン。私の誇り」と、ハンカチの奥のシルヴァーナ公爵夫人の濡れた瞳が語っている。


「私たちもおりますわよ、お兄様」


そのロゼマリアちゃんの声で、アウレリアちゃん、エステルちゃんの女子ズもさっと集結する。


「私たちの存在を忘れるなんてひどいですわ、アドリアン様。私どもも王太子殿下に誠心誠意お仕えする所存。それに地蜘蛛とりに夢中な皆さまよりも、私どものほうがよほど成熟していて優秀ではなくて?エステル様なんてサティベアを量産して販売してすでに収益を…」

「いや、忘れてたわけじゃなくてさ…」


アドリアンくんがわたわたとアウレリアちゃんに言い訳しているところに、ドーナツ片手に「私もいるよん」とクリスタちゃんが加わった。


レオくんとロゼマリアちゃんをセンターに、子どもたちが並ぶ様子がなんとも微笑ましくて、それでいて勇ましい。小さなヒーロー集団みたい。


なんでかわからんけどじんわりと浮かんできた涙を振り切り、私はレオくんの絵の先生に「急いでみんなをスケッチしてください!」と身振り手振り伝える。どうしてもこの名シーンを絵にしてママ友さんたちに渡したい。写真配布みたいな。


九人と対峙することになったモーリッツくんは視線をずらして、何とか打開策を探そうとして、クリスタちゃんに目を止めた。


「そいつは闇の魔力持ちですよね?危険な魔力持ちが遊び相手だなんて、それも大きな問題では?」


会場の隅ではベルント伯爵夫人が「クリスタを中傷するのは許さない」と息巻き、ベルント伯爵に「子どもの言うことだ、落ち着け」と羽交い絞めにされている。


「なぜ問題なのですか?」

「彼らが危険だと一番わかっているのはレイデンバーンではないですか!王城内にゴーレムが発生して、王太子殿下に危害を加えようと暴れ回ったのを、僕が知らないとでも?」


「そうだったのか?」と会場がざわめき、アドリアンくんが「まずい」という顔をする。けれどやっぱりレオくんは落ち着いていた。


「確かにゴーレムを発生させた魔法使いは危険でしたが、魔法使いのほとんどは良心的であり、平和を望んでいます。実際にクリスタの闇魔法は病気を治すことにも使えますし、ゴーレムから僕らを守ってくれたのもクリスタです」


レオくんの目が、アロイスさんとテオくんに向く。


「それに国王陛下も魔法師団長も、上手に力を活かせる魔法使いを育てようとされています。こんな風に」


レオくんがすっと手を挙げると、あっという間に何もなかった地面からいくつもの木が生え、空中で横に伸びて傘をつくり、その傘から花が垂れ下がってパラソルができた。幻想的な美しさに、歓声があがる。


「夏の花と冬の花が、同時に…?」

「しかもそれぞれが各国を象徴する植物だ。何という細やかな気遣いだ」


アロイスさんが「今日は日差しも強いので、パラソルの下で憩っていただきたい」と声をかけると、あっという間に会場全体が「素晴らしい!」と拍手に包まれた。


アロイスさんはそのままレオくんの肩に手を置いた。


「レオ、公世子もわかっただろう」


けんかをふっかけたけど完敗した、と。モーリッツくんの後ろでにやにやしていた大人たちは、顔をそむけてじりじりと遠ざかっていく。卑怯者め。


モーリッツくんの目が潤んでくる。レオくんはそっとハンカチを差し出した。


「クイズ、僕には難しかったです。モーリッツ様は歴史をとてもよく勉強されているのですね。あちらに僕の好物のガトーショコラがあるので、一緒に食べませんか?食べながら、ぜひロインツの歴史について教えてください」

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