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異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~  作者: こじまき


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46 やらなきゃだめ?

シルヴァーナ公爵夫人はすうっと立ち上がり、泣きながらルカスくんを抱きしめるグリムフェルト伯爵夫人と、それを見つめながら嗚咽している私をじっと見つめていた。


そして何度も口を開きかけては閉じ、ようやく決意したように息を吸う。


私は泣きながらも、思わず身構えた。


まだルカスくんについてあれこれ言うなら、彼女が名門公爵家の奥様でも超絶美人でも許さない。大人同士のけなし合いは勝手にしてくれたらいいけど、子どもを攻撃するのは違うでしょ。


だけど彼女は、グリムフェルト親子を庇うように立った私に、深々と頭を下げた。


「サティ様への態度をお詫びいたします」

「へ…?」


この場で一番身分の高いシルヴァーナ公爵夫人。マグダレーナ先生によると、レイデンバーン王族の血も引いているとか。


そんな彼女が元平民に頭を下げたのだから、私はもちろん他の夫人たちもびっくりだ。ローゼンタール伯爵夫人が「シルヴァーナ公爵夫人、頭を下げるだなんて」と、おろおろと彼女に駆け寄る。


「伯爵夫人、ご覧になりましたでしょう?誰もがルカス様はどうしようもないと思っていたのに、サティ様だけは違いました。一瞬で彼に合う接し方を選択したのですよ。卓越した知識をおもちのサティ様は、王太子殿下の養育係にふさわしいお方ですわ」

「そ、それはそうですが…あなた様ほどのお方が…」

「私は”間違いを犯したと気づいたら、相手が誰であれ素直に詫びること”と父母から教えられてきました。”身分に関係なく、優れた人間を敬うように”とも。そして我が子にもそう教えております。ですから子どもの手本として、いつでも正しくいませんと」


シルヴァーナ公爵夫人はリヒターフェルト侯爵夫人とローゼンタール伯爵夫人を従えるようなかたちで、私に向き直る。


「どうか愚かな女の無知ゆえとお許しくださいませ、サティ様。今後は態度を改めると誓います」


こうなったらリヒターフェルト侯爵夫人とローゼンタール伯爵夫人も、私に頭を下げるしかない。私だって「知らなかったの、ごめんなさい。もうしません」って言われたら、何も言いようがない。


「私は全然怒ってませんし、卓越した知識ももってません。どうか頭を上げてください」

「寛大なお心に感謝いたします」


寛大なわけじゃない。辛い思いをしたのも怒っていいのも私じゃなく、誤解され続けてきたルカスくんとグリムフェルト伯爵夫人だってだけだ。


三人もきっと気づいてくれたのだろう。グリムフェルト伯爵夫人とルカスくんにも、誤解していたことを謝罪した。


そしてグリムフェルト伯爵夫人がぽつりぽつりと子育ての苦労を話すのを頷きながら聞く。どんどんその頷きが深くなる。


どんな子どもにも親にも、困り事はある。


子育てに悩みながら、子どもを王太子の側近にするためぽっと出の田舎女に頭を下げてまで頑張っているのに、夫や姑からはろくに理解されず、あーだこーだと批判され責められるのは、みんな同じだ。


「わかりますわ」と、いくつものため息がテーブルの上に落とされていく。


「なんで母上たちみんな暗い顔なの?ヘビ見て元気出して」とユリウスくんがテーブルに大きなミミズを差し出したので、貴婦人たちは「きゃあっ」とのけぞった。


「みんな元気になった!」と満足そうに笑うユリウスくん。


いやこれは、元気っていうか…うん、元気なのかな?あとこれはヘビじゃなくてミミズだからね。


リヒターフェルト侯爵夫人が赤い顔で汗をかきながら謝り倒すと、誰かが「ユリウス様なりの優しさなのでしょう」ととりなす。諦めたような、でもほんのりと温かい笑顔が広がった。


さあここからが「本当のママ友会」の始まりだ。


ーーー


スタート時とは打って変わって和やかに愚痴大会…じゃないママ友会が終了した。


ママ友会のために外で遊ぶのを我慢していたクリスタちゃんが元気よく遊び場に出てきて、虫を探し始める。


私はクリスタちゃんと一緒に虫を探しに行こうとしたレオくんを呼び止めて、「今日会った中で、一緒に遊ぶなら誰がいい?」と聞いた。


レオくんはちょっと考えて、「みんなと仲良くなりたい」と答えた。


「アドリアンは助けてくれるし、ユリウスは面白いし、リオネルは優しいんだ。それにルカスは本をいっぱい読んでて、僕の知らない話をしてくれる!僕と同じで、絵を描くのも好きなんだって」

「そっか」


満点の回答。みんなのいいところを即座に把握するうちのレオくん、控えめに言って天才。


「いっぱい友達ができて嬉しい」


賢いうえにお友達大好きな優しい子で最高かよ。レイデンバーン王国万歳だよ。


「最終的にはママさんたちとも仲良くなれたし、暴力的な子や差別的な子はいなくてよかったな。全員問題なしだとアロイスさんに報告できる」と思ったとき、レオくんがちょっと私の手を引っ張った。


そのまま何も言わずにもじっとするので、私はちょっと彼に身体を寄せる。「どうしたの?」と聞くと、レオくんは私の耳に口を近づけた。お、内緒話かい?可愛いねぇ。


「ママ友会って、ご令嬢の母上たちともするの?」

「うん、来週ね」


ご令嬢&そのお母さんたちとのママ友会は、レオくんの婚約者候補たちの集いだ。


「それって、絶対やらなきゃだめ?」

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