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異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~  作者: こじまき


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3 果物屋の店主

りんごの収穫を終え、私は第二村人のおじいちゃんにロバを借りて、街までりんごを売りに行く。とはいえ、ロバを連れて歩いたことなんかないから怖いし、街も初めてなので、おじいちゃんと一緒。おじいちゃんは手綱を器用に操る。


「おじいちゃん、ごめんね。私の用事なのにこんなに歩かせちゃって」

「いいさ。足腰を動かしとかないとな」

「健康的だね」


私の小屋から一時間くらい歩くと、麦畑が広がり、遠くに屋根の赤い家々が見える。ようやく街だ。


石でできた立派な街の門をくぐると、石畳の通りと、香ばしい焼き菓子の匂いが出迎えてくれた。木の看板を掲げたパン屋、野菜を積んだ荷車、子どもたちのはしゃぐ声。中世ヨーロッパ風の、ぬくもりのある街並みだ。すごく可愛い。異世界万歳。


っていうか、りんごを売るとか初めてなんだけど、どうやったらいいんだろう。創造神さんのマニュアルには「街でりんごを売ればいい」としか書いてなくて、具体的な手順は不明なのよ。


「おじいちゃん、りんご売るときってどうすればいいの?」

「市場で場所を借りて売る方法もあるが、クラウスおんじはいつも果物屋に買い上げてもらってたよ。短時間で済むし、クラウスおんじの農園のりんごなら、果物屋でもそれなりの金にはなるからな」


そうなんだ。「クラウスおんじのりんご」は、作り手の顔がわかる信頼のブランドなんだね。私はおじいちゃんにクラウスおんじと取引のあった果物屋さんを紹介してもらう。店主は私と同じくらいの年齢の、オレンジの髪に深い緑の目をした男性だった。言うなれば色合いは柿で、穏やかそうで、感じのいい人だ。


「あなたがクラウスおんじの姪御さん?」

「はい、サティといいます」

「俺はマリウスです。ちょっと味見させてもらいますね」


マリウスさんはりんごをかじった。もぐもぐしながらうんうんと頷き、「相変わらず美味しい」と笑う。よかった。


「クラウスおんじのりんごは品質が良くて人気なんです。おんじが亡くなって、もうあのりんごが手に入らないかと心配していたけど、味もそのまま引き継いでくれる人がいて助かります。これからもよろしくお願いします」


マリウスさんは私と握手してりんごを数え、袋にずっしり入ったお金をくれた。お礼を言っておじいちゃんと一緒に歩き出すと、おじいちゃんがつんつんと肘でつついてくる。


「なあに?」

「マリウスのやつ、サティに気があるぞ」

「…なんでそうなる!?」


あんまり急なことで、私は思わず真っ赤になってしまう。別に私がマリウスさんのことを意識しているわけでもないのに。外堀埋める系はやめておくれよ。


「その金」

「これ?」


おじいちゃんが言うには、マリウスさんが渡したお金は、クラウスおんじが果物屋にりんごを売って得ていたお金よりも多いのだという。


いやでも、この世界でも物価が上昇しているのかもしれないしね…?会って早々でそんな惚れっぽいことはないでしょう。でもそんなことを言われたら、なんだか意識してしまう。次から会うとき、どんな顔をすればいいのだろう。


そう思っていたらおじいちゃんがにやにやしているのが目の端に見えて、私は「からかってるでしょ」と彼を叩く真似をした。からかわれて恥ずかしいけど、なんだか嫌な気はしない。それくらいおじいちゃんと仲良くなったってことなのかも。


自分で使う当面の日用品と食材を見繕う。物価は日本より安めだ。料理のお礼としておばあちゃんにプレゼントするブランケットも買い、ロバに乗せてもらう。働き者のロバくん、ありがとね。おじいちゃんにプレゼントした帽子は、もうおじいちゃんの頭の上。


「用が済んだなら帰るか」

「うーん…初めて来たからもうちょっとお店を見て行きたいんだけど、いい?」

「ああ、好きにすりゃいい。わしは疲れたからその辺で待っとるよ」

「ありがと」


そう言ったとき「泥棒!泥棒だ!」という声がした。振り返ると、こっちに向かって走ってくる小さな男の子。年齢はたぶん小学校四年生か五年生…十歳か十一歳くらい。服はボロボロで、顔も体も汚れている。


男の子は私にぶつかって止まった。これは…巻き込まれるパターンだよね。

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