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第9話 モンテーヌの町と、錬金術師の誤解

あーさんこと相沢千鶴、よっしーこと木幡良和、そして俺こと相良ユウキ。それぞれの故郷の思い出を語り合った夜を終え、俺たちは再び歩みを進める。目指すは、不揃いな石の城壁に囲まれた町、モンテーヌ。そこには、この世界で生きていくためのヒントが隠されているかもしれない。しかし、その町は、俺たちの想像を超える、理不尽な現実と、そして新たな出会いを待ち受けていた。



(主人公・相良ユウキの視点)


野を下り、鬱蒼とした森を抜けると、ようやく不揃いな石の城壁に囲まれた町、モンテーヌが見えてきた。


「ついに着いたな!」


よっしーが、嬉しそうに声を上げた。

城門には、無愛想な警備の男が立っていた。クリフさんが身分証を見せると、男は俺たちを品定めするように、じろじろと見回した。


「あぁぁん? おめえら、身分証がねえんなら、一人50ギルで通してやろう」

「何だよこのオッサン、超感じ悪いな……」


俺はそう思った。きっと、相手を選んでこういうことをし、小遣い稼ぎをしているのだろう。

その時、よっしーがカバンから、前回の冒険者たちと酒盛りをした際に残った酒瓶を取り出した。


「悪いな、今ちょっと金欠やから、これで勘弁してくれへんか?」

「ん? 何だそれは……ガラスじゃないか? バカな! ガラスで出来た容器だと? しかも、なんと精巧な……」


警備の男は、酒瓶を手に取ると、そのあまりの美しさに目を丸くした。


「なんや、そっちかい!!」


よっしーは、酒瓶を見せただけで、男が酒に食いつくと思っていたようだ。しかし、男の興味は、酒そのものではなく、その容器にあった。


「し……失礼いたしました! この瓶を見れば分かります。あなた方は、さぞ名のある錬金術師でありましょう! さあ、どうぞお通りください!」


男は、突然態度を豹変させ、俺たちを丁重に中に通してくれた。


「さっきのは何やったんやろか?」


よっしーが、首を傾げる。


「うむ。そのガラスだよ。私も、そのような精巧な容器は見たことがない」


クリフさんが、感心したように言った。


「何やそれ。ワイは、あのオッチャンと酒でも飲み交わして親睦を深めて、通してもらおうと思っとったんやけどな」


イヤイヤ、どうやってそんなことが思いつくんだよ。俺には到底、不可能な発想だ。

それにしても、この町は、なんというか、俺たちの世界で言うと、13世紀あたりのヨーロッパって感じかな。通りかかる人々の服装は、明らかに手作りと思わしき衣類を身につけ、電気どころかガスも水道も通ってなさそうだ。やはり、この世界は良くて近代、悪ければ中世か、それ以前の文化しかないようだな。


「なあ、ワイ、ちょっとその辺で用足してくるわ!」


よっしーが走り去っていき、俺とクリフさんは二人で道具屋に入った。

店の奥から、白髪に眼鏡の婆さんが、冷めた目で俺たちを見つめる。うわ、こういうタイプ、苦手なんだよな。こんな時に、よっしーがいてくれると助かるんだが……。彼は、誰とでも仲良くなれるから。

しかし、店の商品は、前に旅の商人から買ったものと同じ物ばかりで、特にこれといった物はなかった。

店を出ると、目の前にちょうど用を足し終えたらしいよっしーが立っていた。彼は、俺の首根っこを掴んで、どこかへ連れて行こうとした。


「おい、痛いって! なんだよ?」

「ええから、ちょっと来てみぃや!」


おそるおそる路地裏に入っていくと、奥で鎧を着た男が、幼い少女の股に手を入れようとしていた。

「オイオイ、こんな所で……」

俺たちの世界でも、ニュースで小学校の教師が生徒に猥褻行為で捕まったとか、警察官が女子高生にみだらな行為の疑いで逮捕とか、たまに起きていた。しかし、こっちの大人たちは、そういった未成年に対する道徳的な観念が薄いようだ。


「おい、お前、そこで何しとんじゃ!」


よっしーが、怒りの声を上げる。


「あぁん? なんだ、おめえはよ?」

男は、下半身丸出しのまま、こちらへと向き直った。


「娘と楽しんでたんだ! 邪魔するなよ!」

「お前の娘とちゃうやろ!」

「うむ、あなたはコチラへ!」


クリフさんが、サッと男から少女を突き放すと、よっしーは、思いっきり勢いをつけて、男の顔を殴りつけた。

ガキンッ!

鎧の男は吹っ飛ばされて倒れ、意識を失った。


「おい、ガキンチョ、お前大丈夫か?」


よっしーが、少女に駆け寄る。

少女は、何も言わずに、どこかへと走り去っていった。


「うーん……。せっかく助けてやったのになんだよ、あの態度は?」


俺たちは、釈然としない気持ちを抱えながらも、気を取り直して、次は武器屋へ行くことにした。






- 武器屋店主と不当な競争 -


武器屋に入ると、坊主頭の店主が迎えてくれた。

「店にようこそ! ウチは、武器や防具だけじゃなく、薬も揃えているよ。しかも、薬は隣の店の半分の値段で売らせてもらっているんだ!」


クリフさんが、店内の武器を物色し始めた。


「へぇ、隣の店も薬屋なんや〜」


よっしーが、興味津々に尋ねる。


「そう! 隣にも薬屋があるんだけど、これがまた、小汚い店なんだよ。なんか、店の主人が亡くなって、無愛想な小汚い少女がやってるんだけどね」


その言葉に、クリフさんの動きが止まった。彼は、突然よっしーを羽交い締めにし、何かゴニョゴニョと耳打ちし始めた。


「お客さん、どうかされましたか?」


店主が、怪訝な顔で尋ねる。


「なあ、ご主人、防具と剣って、ちょっと試着とかしてもええんかな?」


よっしーが、なんとかクリフさんの腕を振り払い、店主に尋ねた。


「どうぞどうぞ! きっと、お客さんのお気に入りの品がありますよ!」


店主が快く承諾してくれたので、俺たちは武器や防具を手に取った。その隙に、クリフさんが、先ほどよっしーが持っていた酒瓶を店主に見せた。


「こ……これは、何という精巧な瓶なのだ!?」


店主は、再びガラスの瓶に驚愕した。


「瓶だけじゃなく、酒もこの世のものと思えないほど美味いぞ。試着のお礼といってはなんだが、よかったら一口試飲してみないか?」


クリフさんは、店主の前で、トクトクと酒を注ぎ始めた。


「さあ、ユウキ君。まず一口飲んでみろ」


クリフさんに促され、俺は注がれた酒を飲んでみた。

一口飲んでみた感想は、**「普通に美味い!」**ということだ。俺たちの世界で言うと、カルピスの原液を、水で割らずに飲んだような、濃厚な甘さだ。

俺は、言葉ではなく目でそれを店主に伝えると、店主はすぐに試飲した。

「こ……これは、なんと濃厚な甘さではないか〜! 美味い! 私は、未だかつて、このような酒を飲んだことはない……! これは一体!?」

店主は、目を丸くして驚愕していた。

「うむ。よっしー、これは何という酒なのだ?」

クリフさんが、よっしーに尋ねる。

「ああ、どぶろくっちゅうお酒や」

店主は、この酒を気に入ったらしく、しつこく頼み込んできた。よっしーは、結局、どぶろくが入った酒瓶を何本か、75000ギルで置いていった。

「よっしゃ〜っ! これで、あの店に置いてある武器や防具は、すべてコピーしたで!」

よっしーが、ガッツポーズをする。

「うむ。ならば、隣の薬屋に行こうか」

クリフさんが、俺たちにそう言った。

隣の薬屋へ行くと、そこに一つの驚きの事実があった。確かに、同じ商品が、倍以上の値段で売られていたのだ。これは、この店からすると、隣のやっていることは、営業妨害じゃないのか?

「なあ、クリフさん。何であの店は、ここの半分の値段で薬を出しているんだ?」

「分からないか? この町に、武器や防具を販売している店は、一軒しかないよな。あそこは、客が減ることがないことをいいことに、値段を通常の1.5倍に釣り上げていたんだよ」

「なるほど……。薬を安く買わせて、その分、武器などを高く買わせるって……。せこい商売じゃねえか、それ」


俺は、武器屋の店主のやり方に、少し腹が立った。

さらに、この店には、もう一つの驚きがあった。なんと、さっき鎧の男といた少女が、この店で働いていたのだ。


「な……なんだい、あんたたち! さっきの連中じゃないか! ウチの店に何の用だい! もしかして、隣の店の回し者か!」


少女は、警戒した目で、俺たちを睨みつけた。


「違う。我々は、少しだけ君の話を聞きたいだけなんだ」


クリフさんが、少女に優しく話しかける。

少女の名前は、ライラという。ライラの家は、父が代々継いだ薬屋を営んでいたのだが、材料を取りに森へ行ったきり、父と母は行方不明だという。両親から薬学を少し学んだライラが、祖母と店を維持している状態らしい。

なるほど。じゃあ、さっきの鎧の男は、店の常連か。どうせ、なんか下らない条件でも突きつけてきたんだろうな。


「行方不明というのは?」


俺がそう尋ねると、クリフさんが言葉を続けた。

「うむ。そういえば、私も昔、両親に言われたことがあるんだが、この辺りで人さらいが出るとか……」

「なんやそれ、誘拐か?」


よっしーが、驚いた顔で尋ねる。


「ああ。婆ちゃんが言ってたんだ。父ちゃん、母ちゃんは、悪い山賊にさらわれたって。だから、アタシがこの店を守るんだ!」


ライラは、きっぱりと言い放った。


「ふむ、なるほどな。しかし、今考えるべきなのは、山賊のことより、この店のことだ。お前、本当にこの店を守る気があるんだな?」

「当たり前だよ!」

「うむ。なら、一つ提案だ。今日から、この酒も、この店で販売しろ!」


クリフさんは、そう言って、ライラにどぶろくの瓶を差し出した。

俺たちは、ライラから最上級の薬をいくつか買い取った。隣の店から儲けた75000ギルで。あと、おまけでどぶろくが入った酒瓶を20本ほど、30000ギルで買い取ってもらった。


「つーか、金なんか、よっしーの能力スキルでコピーしまくってるし……」


俺は、そう心の中で呟いた。よっしーの能力は、本当にすごい。この世界で生きていくには、これほど心強い力はないだろう。

ライラは、俺たちの提案を快く受け入れてくれた。彼女の顔には、少しだけ希望の光が宿っていた。









後書き

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

モンテーヌの町で、ライラという少女と出会ったユウキたち。彼らは、ライラを助けるために、そしてこの世界の理不尽な現実に立ち向かうために、一歩を踏み出します。

次回、彼らはライラの両親を救い出すことができるのでしょうか? そして、ライラを助けたことで、彼らの運命はどのように変わっていくのでしょうか?

応援コメントや好評価をいただけると幸いです。

まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。


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