-地底探検の章- 第四層「ワイトキング・顕現(前編)」
──ゴゴゴゴ……。
石造りの回廊全体が震えた。足元の岩が裂け、そこから無数の骨の手が突き出してくる。
「きゃっ!」
イルマが後退りし、セドリックが咄嗟に雷鎖で床を薙ぎ払う。
「下から湧いてやがる……! ここはまるで“墓そのもの”だ!」
骸骨兵が次々に這い出し、盾を構えた。
その奥に、漆黒の王冠を戴く影がゆっくりと姿を現す。
「……ワイトキング」
ノクティアが槍を突き出し、瞳を細めた。
「死者を束ねる主の中でも、最も執念深い者……」
ワイトキングは無言のまま杖を掲げる。
途端に、周囲の骸骨が青白い炎を纏い、動きが鋭くなる。
「通常のスケルトンじゃねえ、強化されてるぞ!」
よっしーが叫び、アイテムボックスから鉄パイプを取り出した。
「囲まれる前に数を減らすぞ!」
クリフが矢を射ち込み、ニーヤの火弾が続く。
だがワイトキングは冷ややかに笑った。
「我が軍勢は尽きぬ。影より影を呼ばん──」
床一面からさらにゾンビの群れが這い出してくる。
腐肉の臭気が通路を満たし、仲間の視界を奪った。
「くっ……これじゃ埒があかねぇ!」
ユウキは拳を握りしめる。
(数で押し潰される……でも、諦めるわけにはいかない!)
そのとき、セドリックが声を張り上げた。
「イルマ! 俺の雷に合わせろ!」
「任せなさい!」
二人の魔術師が同時に詠唱する。
雷鎖がゾンビを縛り、氷矢が次々と凍結させていく。
「よし! 数を削れるぞ!」
だがワイトキングは動じない。杖を振ると、奥の石棺が軋んで開いた。
そこから、朽ちた鎧に騎乗する骸骨の騎兵――スケルトンナイトが三体、響きを立てて進み出る。
「ふむ……本当に軍勢を使い分けてくるか」
クリフが矢を番え直す。
「主人! いま怯んだら鐘が鳴るですニャ!」
ニーヤの叱咤が飛ぶ。
ユウキは深く息を吸い込み、仲間を見渡した。
「……ああ。俺たちで止めるぞ! 鐘は鳴らさせない!」
その叫びに呼応し、全員が武器を構え直す。
闇の回廊に、戦いの火蓋が切られた。




