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熊出没注意! 令和の絶望と昭和の希望

モンテーヌの町での理不尽な現実と、ライラという少女との出会いを経て、俺たちは再び旅に出た。町を抜ければ、その先には未踏の山道が広がっている。旅の道中、俺たちはそれぞれが育った故郷の思い出を語り合った。失われた30年を生きてきた俺と、バブル景気のイケイケな時代を経験したよっしー。二人の間には、価値観の大きな溝があった。そんな俺たちを、この世界の現実がまたもや試練に突きつける。そして、その試練の中で、新たな出会いが待っていた。




《主人公・相良ユウキの視点》


モンテーヌの町を出て一時間ほど歩くと、休憩するのにちょうどいい場所を見つけたので、とりあえず座って休むことにした。


「あー、疲れた……。山登り、やべえな。クリフさん、足疲れないッスか?」

俺が弱音を吐くと、クリフさんは涼しい顔で答えた。

「うむ。私は兵士になる前は狩人をしていたので、山歩きは得意分野でな」


「え、クリフさんが狩人!? マジかよ」


クリフさんが狩人だったなんて、初耳だ。どんなものか、ちょっと見てみたい気もする。

休憩後、さらに二時間ほど歩くと、ようやく山の尾根にたどり着いた。周りの景色を見渡すと、そこに**「絶景」**があった。



「こりゃスゴイなぁ! 山頂から見る景色は、登った人にしか味わえへん醍醐味っちゅうやつやなぁ! ここまでたどり着くのに協力してくれた人達に感謝せなあかんなぁ! ユウキもそう思うやろ?」


よっしーが、興奮した様子で俺に尋ねる。


「ん…あぁ、そうだね…」


俺は、適当に相槌を打った。


「お前、性格アカンやつやなぁ! クリフはどないや?」


よっしーは、俺の冷めた態度に呆れたようにクリフさんに振った。



「ふむ。これはまるで、神の描いた絵を見ているようだ。もし聖教国に残っていたら、こんなに素晴らしい光景を目にすることはないだろうな。私は、二人とともにここまで来ることができて良かったと思う」


クリフさんは、心から感動した表情で言った。



「やろーっ! これやから旅は辞められへんのや!」


よっしーは、目をキラキラさせてクリフさんと話し込んでいる。

よっしーは、本当にポジティブだな。バブル景気のイケイケな時代を生きてきたからか、どんなに苦しい状況でも、「頑張ればなんとかなる」という昭和的な希望に満ちている。それに比べて、俺は……。失われた30年、氷河期、リーマンショック、コロナ禍と、頑張ってもどうにもならない社会を経験してきた。俺の心は、ずっと曇り空だ。


ユウキが曇る心を見せたあと、あーさんが柔らかく口を開く…


「失われしとしを嘆くよりも、いま此処に共に居る“縁”をこそ思い出してご覧なさいませ。

 時代のは違えど、歩む足音はひとつでございましょう」


よっしーが照れくさそうに頭をかく。「あーさん、ええこと言わはるわ……」


クリフも頷いた。「うむ。貴女の言葉、胸に沁みるな」


ユウキは、その瞬間だけ少し肩の力を抜けた気がした。




山を下ると川を見つけたので、休憩することにした。よっしーは虚空庫アイテムボックスから、いつものように椅子とバーベキューコンロを引っ張り出してきた。


「よっしゃ! ここでバーベキューにしようか!」

「よっしー、それはなんだ?」


クリフさんが、バーベキューコンロを珍しそうに見つめている。


「美味いで〜っ! クリフとあーさんは楽しみにしときいや!」

「よっしー、野菜とか肉とかあんの?」


俺が尋ねると、よっしーは胸を張った。


「おう、まかせとき!」


よっしーは、虚空庫から肉、野菜、魚、そしてタレを出して、焼き始めた。

よっしーって、本当に何でも持っているよな。自分が所有しているものが出せるということは、もしかして、自動車とかバイクも可能だったりするのか?


「ふむ。その道具を使って火で料理する野外料理なのか? それなら、この世界にも串焼という似たようなものがあるぞ」


クリフさんが、バーベキューに興味津々だ。


「青空の下で焼く美味しい肉ときたら、お供はコイツやろ!」


よっしーは、そう言って、俺たちに向けて缶ビールを投げた。


「うおっ、ビールじゃんか!」


まさか、異世界でビールが飲めるなんてな。こりゃ、よっしーといて大正解だね!


俺はクリフさんに、缶の開け方を教えると、彼はなぜか缶をじーっと見つめだした。


「うむ。フタが開けやすいように出来ているのか。何やら不思議な作りの缶だな?」

「おう! ほんなら、みんなで写真撮ろか?」


よっしーが、カメラを取り出して言った。


「写真? それは一体なんだ?」


クリフさんが首を傾げる。

よっしーがインスタントカメラで写真を撮って見せると、このようなものがあるのかと驚くあーさん!!…そしてクリフさんは信じられないと言いたげな顔で、写真をマジマジと見た。


「これは一体、どういう魔法なのだ!? なぜこの小さな板の中に、私たちがいるのだ!?」


うわぁ、出たよ。これだよ、これ。この人、超めんどくせぇ。


「これは魔法とはちゃうねんで。科学の力や」


よっしーが、クリフさんに得意げに説明する。


「カ……ガク? それはなんだ? 初めて聞く言葉だな。どういったものなんだろうか?」


「多分、こっちの世界で言うと、錬金術とか、そういうのに近いものなんじゃねえの?」


俺がそう言うと、クリフさんは納得したような顔をした。

「ワイらの世界は、魔法とかは無いけど、こっちよりも科学が進歩しとるな。あと、美味いもんが沢山ありまっせ〜♪」


よっしーが、目をキラキラさせて自慢する。


「そうなのか! すごいな、そっちの世界は! よっしーから貰ったお菓子も美味しかったし、私も是非とも一度、君たちの世界へ行ってみたいものだな!」


クリフさんが、心の底から楽しそうな笑顔を見せる。


「マジで! そりゃまぁ、確かにウチらの世界はこっちよりも技術が進歩していて、もっと情報が発達しているけど、競争が激しく、勝つことが求められ、大人も子供も周囲に負けず引きずり落とし合いで、毎日朝から晩まで忙しい、クソみたいな奴隷社会だよ」


俺は、心の中で思っていたことを、つい口に出してしまった。


「ほんまやな。こっちの方は、差別とか貧困とかあるけど、みんなそんなにあくせく働いている感じじゃないわな」


よっしーが、俺の言葉に同意した。


「うっ、奴隷社会って! そもそもそっちの世界は、なんでそんなに大変なのだ!?」


クリフさんが、俺たちの話に、驚きを隠せないようだった。

俺は、この世界の厳しさを経験して、改めて俺たちの世界の「生きづらさ」を実感していた。

その間にも、ブラックは俺が持っていった肉を美味しそうに食べている。


「お、ブラックも食っとるんか! んじゃ、最後はサーモン焼くで!」


よっしーが、サーモンとマヨネーズを取り出して、焼き始めた。





- 新たな仲間と最強の敵 -


焼いたサーモンにマヨネーズをかけて、ビールで一杯。これがまた美味いんだよな。三人でサーモンが焼き上がるのを楽しみに待っていると、突然、獣道から傷ついた猫の魔物が現れた。


「キャットマージか」


クリフさんが、魔物の名前を呟いた。

俺たちは、すぐに持っている武器を構えた。クリフさんの後ろで、よっしーは、この間にも虚空庫アイテムボックスのコピー能力を使って、毒消しやポーションを増やしまくっている。

それにしても、このキャットマージ、よく見ると怪我をしている。それに、何かに怯えているのか、辺りをキョロキョロと見回している。


「そちらの人族の方々、どうか、アレから助けてはもらえないでしょうか?」


キャットマージは、俺たちにそう話しかけてきた。

ブラックが、俺の肩から飛び降り、**水回復魔法ウォーターヒール**を唱えると、キャットマージは体力が回復し、再び周りを警戒し始めた。


「その『アレ』っていうのは?」


俺が尋ねると、キャットマージは、恐怖に震えながら言った。

「き……来た!」


向こう岸から、バシャバシャと川を渡って、こちらに向かってくる、黒く大きな物体が見えた。


「出たよ……。サーモンの匂いを嗅ぎつけて来ちまったじゃねえかよ……」


俺は、思わず呟いた。


「くっ……熊やないか!?」


よっしーが、驚愕の声を上げた。


「あれは、まさか……ワイルドベアか」


クリフさんが、険しい表情で呟く。

コイツ、こんなのに追っかけ回されていたのかよ! つーか、これはかなりヤバイ状況だぞ!

一応、ステータスを確認しておくか。




種族:ワイルドベア

* レベル:25

* HP:420

* MP:0

* SP:0

* 攻撃:290

* 守り:240

* 速さ:221

* スキル:無し




「オイオイ、マジかよ! こんなのに勝てるわけねえじゃん!」


俺は、絶望的な気分になった。俺たちのレベルはまだ低い。こんな強敵に、どうやって立ち向かえばいいんだ?

その時、アンリからもらった指輪が光を放ちだした。



『キャットマージを眷属化テイムしますか? YES/NO』


「なんで、こんなタイミングで……」


俺は、迷うことなく「YES」を選択した。


『キャットマージの眷属化に成功しました。続いて、名前を付けてください』


「よしっ! お前の名前は、今からニーヤだ!」


俺は、とっさに、クリフさんから聞いた「大英雄」の名前を付けた。

その名を聞いたクリフさんが、嬉しそうに叫んだ。


「おおっ! 大英雄の名前を付けるのか!」


名前を聞いたその瞬間、ニーヤは輝き出し、胸に手を当て、片膝をついてお辞儀をした。



「我が主人あるじよ。これより覚醒した我が力、主人あるじのために使うと誓います」



あの深い森に住む、変な子供からもらった指輪が、まだチカチカと光を放っている。

アレ? 名付けによるエネルギー消費が、今回は無いぞ? もしかして、この指輪の力なのかも?

俺は、すぐにニーヤのステータスを確認した。




ニーヤ・ゲシュタッド

* レベル:15

* クラス:猫魔導師キャット・キャスター

* HP:138

* MP:160

* 攻撃:42

* 守り:130

* 速さ:99

* スキル:風魔法、土魔法、水魔法、回復魔法、火炎魔法、状態変化魔法

* 装備:魔法師の杖、魔法師のローブ、魔法師の帽子、魔法師のリング

* 加護:なし

* 称号:なし

* 進化:条件を満たしていません



後書き

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よっしーの楽天的な考えと、ユウキの現実的な考えがぶつかり合う中、突如現れた強敵ワイルドベア。絶体絶命の危機に、ユウキは新たな眷属として猫魔導士ニーヤを手に入れました。

果たして、彼らはワイルドベアに打ち勝つことができるのでしょうか? そして、ニーヤという新たな仲間を迎え、彼らの旅はどのように変わっていくのでしょうか?

応援コメントや好評価をいただけると幸いです。

まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。


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