イ〇ン
よろしくお願いします。
1月4日(水)「仕事始めと新年互例会」1月5日(木)「お仕事通常モード」1月6日(金)「夕方までお仕事、定時上がりwith藤堂先輩」うん?何で「with藤堂先輩」って出るんだよ?
場面が変わって先輩と居酒屋で飲んでいる。ふーん、まあ週末なんだし、飲みに行くくらい珍しくもないことだ。でも、暫くして俺が先輩に怒られてる。それも頭を小突かれて。激怒とはちょっと違う、先輩の諭すような表情が気に掛かった。
何だろう?とにかく、原因はこれから起こることに違いないんだよな。これは避けられる未来か否か見極めがつかないが、出来る限り注意を払おう。それから暫く飲んで別れ、電車に乗って帰宅していた。
1月7日(土)「フミカさまとイチャコラ(はぁと)」のテロップだけ。はあ?またえんじぇうさまが来てるの?全然期日を守らない奴だ。マジで明日実家に電話して梅酒を送ってもらおう。そりゃフミカと過ごすのも楽しいけど、所詮こいつは人間じゃない。俺の彼女になれる存在ではないのだ。天使のくせに小悪魔的でカワイイんだけどね。
1月8日(日)「巨乳デブとクソデート!映像ナッシン!」ちょ、ちょっと、このテロップ悪意の塊でしょ。
「ねえフミカちゃん、ちゃんと観せてよォ。何でこんな意地悪するの?」
「意地悪?お前はそんな風に思ってるのか?私はやさしいえんじぇうさまだぞ!」
えっ?意地悪じゃないって?どう解釈すればいいんだよ?せっかく京子さんとの甘いシーンが展開されるってのに。楽しみは当日まで取っておけってか?それとも、早くも俺が振られるなんて…。ああ、どうしよう。藤堂先輩と金曜に飲んだのも俄然意味深に思えて来る、根っからネガティヴ思考の俺だ。
ハッ、だとすると、京子さんとシないうちに捨てられるわけじゃないか。イカン!それは憂慮すべき事態だぞ!チャンスは二度だ。初詣デートのあと先輩に押し入られないことと、8日のデートを無難にこなすことだ。この二つが繋がっているのかはわからないが、とにかく集中すべきポイントには違いない。
何かイヤだよなあ。現実には明日京子さんと初詣に行くってのに、不幸な未来が見えてたら正直萎えちゃうよ。実際、避けられないことってあるし。
「マサハル、沈んでるの?未来を見て落ち込んでたら世話ないよ。元旦から美女と過ごしてるのに不満なんてないはずだわ」
「うん、元旦をフミカちゃんと過ごせてるのはありがたいことだと思ってる。外国にも行って来れたし」
「もう一回出掛ける?今度は暖かい南半球とか?カンガルー狩りなんて最高よ」
「あのなあ、カンガルー狩ってどうすんだよ?生き物にはやさしくしなくちゃいけないよ」
「温いなあ。BBQでもしようと思ったのに。じゃあ、ライオンの群れに放り込んであげようか?アナコンダの巣とか?」
絶対にえんじぇうさまはドSである。人間も罪深いけど、神の類いはもっと邪悪なのだ。
「出掛けるのは賛成だけど、行き先はフミカちゃんが決めてよ。言っとくけど、お正月らしい場所にしてよね」
「わかった。駅前イ〇ンの初売りに行こう。福袋もまだ残ってるでしょうし、マサハルと一緒に買い物したいな」
一時間後、俺たちは初売りイ〇ンの雑踏に紛れていた。ここへは俺のボロジムニーで来た。わかっちゃいたけどスゲエ人波だ。ほとんど溺れそう。でも、部屋に籠っているよりずっと楽しかった。不思議だ。人混みは嫌いなはずなのに。
しかし、峰不〇子スタイルのフミカは浮いて見えた。やっぱりブラックレザーのジャンプスーツはバイクがないとキマらない。それに顔立ちが幼いので、どうしても不〇子並みのセクシーお姉さまにはなれないのだ。もちろん最大のウィークポイントはチッパイにあるのだが。
「ねえマサハル、何か食べようよォ。私、地球のジャンクフードって前々から興味あったんだ。カップルもファミリーもすごく楽しそうに食べてるから、きっとおいしいんだと思ってたの」
俺たちはフードコートへ行っていろんな店のメニューを見回した。
「何でもリクエストしなよ。遠慮しなくていいぞ。好きなだけ買ってやるからさ」
そう、好きなだけ買ってやるのだ。ここはジャパーン!そして俺んちに近い場所だ。カツアゲ騒ぎだけはカンベンして欲しい。やろうと思えばこいつはヤンキーからでも出来ちゃうからな。
「嬉しいな。マサハルってやさしいんだ。じゃあ私、ホットドックセットとクレープね」
「了解です。俺もドックセットでいいや。フミカちゃんの笑顔に対して安すぎるね」
本心である。俺は薄々気付いていた。本来なら苦手な場所で、どうしてこんなにホンワカしてられるのかってことを。さすが女神さまのスマイルはブッ飛んでるよ。
注文の品を受け取りトレイを二つ持って空いているテーブルを探す。隅の方に二人掛けを見つけ、フミカが先に駆けて行って手招きで俺を呼ぶ。トンとトレイを置いて向かい合い「いただきます」と手を合わせてからホットドックにかぶりつく。
うまい!飲み物はもちろんコーラだ。今は健康面より相性を優先する。フミカも同じチョイスだ。彼女もグッドテイストに顔をほころばせている。いやあ、実にハッピーなニューイヤーである。先ほど見たビデオの憂鬱は取りあえず片隅に追いやった。
ドックを食べ終わったフミカはクレープに触手を伸ばし、興味深そうにトッピングの中身を確認している。そのままガブリとかぶりついて、とても満足気にほほ笑んだ。その一部始終がとても可愛らしくて、本当に人間だったらいいのにと思った。
「私、このミッションが完遂したらゼウスさまにお願いすることを思いついたわ」
「それ、俺もわかるよ。クレープ百年分って言うんでしょ?」
「当ったりィ!スゴイね、マサハル。私の心まで読めるようになったんだ。私でさえ人の心は読み切れないってのに」
そんなの仕草を見てりゃ丸わかりなんだけど、ここは口をつぐんでおいた方がいいな。
「フミカちゃんのことしかわからないよ。人は好きな相手にだけ超能力者になれるんだ」
フミカはポッと顔を赤らめて恥じらう。それもカワイイ。
「イヤーン!マサハルって甘あい!私惚れちゃいそう!」
良かった。キザっぽくて引かれるかと一瞬ためらったけど、彼女には思いのほかウケたようだ。二百年も生きてるけど、案外純情なチョロインかも知れない。もちろん、ヒロインは京子さんだからである。
それから二人でいろんなお店を回った。まあ、フミカのセレクトに従ってだけど。彼女は雑貨などを珍しそうに手に取ったりしていたが、おねだりに屈して買わされたのは「コ〇サデモードの福袋」だった。一名の諭吉君が旅立ったけど、まあいいやと思えた。えんじぇうさまが特上の笑みを見せ、腕に抱き着いてくれたのだから。
結局、夕方までをそこで過ごし部屋に戻った。フミカは福袋の中身を確認しながらニンマリしている。そんなに大した物など入ってないだろうに、天使とは言えやっぱり女の子だよなあ。
ドリップで淹れたコーヒーを飲みながら見ていたら、急にフミカが視線を振って来た。
「マサハル、私、そろそろ帰るわ。ゼウスさまに提出する報告書をまとめたいから。明日、頑張ってね。今日はどうもありがとう。プレゼント…、すごく嬉しかった」
「あっ、いや、そんな大したことしてないよ。俺も楽しかったし。それと、応援ありがとう」
正直名残惜しいけど、彼女も天空界で色々忙しいのだろう。それに、俺も頭を切り替えなくちゃいけない。何たって明日は今年初めての、それも重要と言われる二回目のデートなのだから。無理に背伸びはしないけど、京子さんには出来る限り応えたいじゃん。
「じゃあね。また来るから待っててね」
「うん、7日ってことでよろしくね。自家製の梅酒も用意しておくよ」
モバイルバイクにまたがるフミカに軽く手を振ると、彼女はウインクと投げキッスを返して壁の中へ消え去った。やっぱり不思議な光景だけど、俺は漠然とフミカが残した余韻に浸っていた。
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