やっと着いたよ~街編~ こんにちは守衛さん1
「それでだな……お前達は……」
「…………」
周りの雰囲気が変わっている事に、ようやく気付いた男。
周囲を、キョロキョロと見回す。
「あれ?バカどもは、どこに消えた?」
《マスター!マスター!大丈夫ですか?落ち着いて下さい》
システム88の言葉に、ハッとして、落ち着きを急速に取り戻していく。どこかで見たような景色だなぁ。などと、思っていると。
《マスター、スキル【やり直し】が発動しましたよ》
「はぁ?何でだ?」
状況のまったく掴めていない男からの、当然の質問。
《マスターは、盗賊相手に、説教をカマして、ご自分の言葉にご自分で熱くなり【精神的抑圧感】を受けて、数値が100を越えたんですよ》
システム88の説明を聞いても、納得のいかない男は、更に問い詰める。
「いや……いや……待てよ、胃痛で知らせてくれるって話だったよな?胃痛なんて微塵も感じなかったぞ」
《プログラム【胃痛】は、正常に作動していましたよ……作動していましたが……マスターの脳内から分泌された【アドレナリン】によって、マスターは、胃痛をまったく感じでいなかった模様です》
勝手に熱くなり、勝手にストレスを溜め込んで、親切(?)にも知らしてくれるプログラムが、自分の脳内麻薬のせいで、感じなかった事を、認識していくと……急に恥ずかしくなった。
「くそ……それでスタート地点に今は、居る訳だな……しかし、それにしても、あの盗賊どもめ、テンプレそのままの知能の低さを、これでもかと見せ付けやがって……」
先程までの、盗賊達を思い出したのか、男の怒りは再熱していった。男は、目を閉じると、しばらく考え込むかのような態度を取り、おもむろに立ち上がると。
「よし!今がスタート地点で時間も戻ってるなら、さっさと街に向けて移動するぞ」
《また盗賊に出会いませんかね?》
「大丈夫だ、あいつらはバカだ、とんでもないぐらいバカだ、待ち伏せなんて高等技術は、持ち合わせていない、今すぐ向かえば、あいつらは、遥か後ろに居るから、出会う事はない」
《待ち伏せなんて、小○生でも理解出来る事なんですけどね……本当にバカしか居ないんですね、盗賊って》
ホルス世界の盗賊さん、ご愁傷さまである。ちゃんと学校出てるのに、だらけた生活が長過ぎて、脳が退化したのだろう。そう男は結論付けると、カバンを背負い、さっさと歩き出す。途中の草も、石も鑑定せずに、そして……
1回目と同じように、モクラの開けた穴に、つまづいてコケる……
「おい!こら!ちゃんと警告出せよ、1回目と同じように」
さすがに、2回もまったく同じ場所、同じ要因でコケてしまった男は、システム88に、八つ当たりを、かました。
《いやいや……さすがに、数時間前にコケた穴で、またコケるなんて、高等すぎるボケ、予測出来る訳ないじゃないですか!当然、避けると思ってましたよ、と言うか、避けるでしょ?普通……》
さすが1回目と同じ場所でコケる男。1回目と同じように、相棒と漫才を始めて、歩いていく。
【数時間後】
少し荒い息をして、顔にはうっすら汗をかき、しかし、しっかりドヤ顔はキープしたままの男は、街の入り口20m手前に立っている。
「ほらな!盗賊なんかに出会わなかっただろ」
男のドヤ顔にイラっとしたのか、すかざず入るツッコミ。
《ドヤ顔の割りには、何度も何度もチラチラ後ろを確認して、競歩並みの速度を出してましたよね》
この1人と1システム……息ピッタリである。
男は、背中のカバンの肩掛けの位置を直しながら、待ちへと歩くと、木枠に鉄で補強された巨大な門が、目の前に現れた。その門の横には、門番であろう者達が詰める、小さな詰所のような物もある。
「さて!初めての異世界の街だ、観光するぞ」
門の真ん中を目指して歩き、さあ門をくぐろうとした時に、横から声を掛けられた。
『あ~街に入るのか?街に入るなら、ギルド発行の証明書を見せてくれんか?』
見た目、30代ぐらいの、手に槍を持った、黒い革鎧を着た、岩みたいな顔の男に、そう声を掛けられた。




