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Ch.1『凍てつく世界の眠れる少女 ―誓約と契約と覚醒―』( 3)

お読みいただきありがとうございます!

操野形人と申します。


ついにSeason0完結…!

ここまでお付き合いいただきありがとうございます!

憧れややりたいことをたくさん詰め込んだ初戦闘パートを楽しんでいただけたら幸いです…!


本作は【SFファンタジー人形劇】と銘打った、凍てつく大地を舞台に熱血漢のメカニックの少年とアンドロイドの少女が太陽を取り戻す物語となっております。少し不器用な彼らの旅をぜひ楽しんでいってください!

聖壇の光が頂点に達した瞬間、世界が反転した。

二人を祝福するかのように鳴り響いた教会の荘厳な鐘の音は、たちまち戦場の耳をつんざくガトリングの轟音へと塗り替えられる。だが、キッドの意識はもう先ほどまでのような恐怖には支配されていなかった。

彼の右の手のひらには、リアの確かな鼓動と指輪から溢れるティールグリーンの熱量が宿っている。


「……ははッ、死に損ないと旧式のアニマが揃ったところで――!どんな手品を使ったのかは知らんが私の機体(アルカナ)の前では……ッ!なんだ!?この出力は!?」


その瞬間、工房の空気が一変した。リアが纏う翠玉色の光が、死にかけていたキッドの傷を完全に塞ぎ、戦場全体を浄化していった。


キッドは腹部の痛みが嘘のように消えていることに気づくと、


「さっきはよくもやってくれたなァ!それが天下の誇り高き帝国軍人様のやることかよォ――!」


再びチェイサーとリアの間に立ちはだかり、啖呵を切った。


「――こんの!バケモノがッッ!!!」


半狂乱で焦ったチェイサーが再びガトリングを乱暴に唸らせ、鉄の弾幕が工房を蹂躙する。


「リアッ!」

「……はい、キッド様。共鳴を」


二人は迷いなく右手を差し出し合った。

互いの薬指にはめられた指輪が、指を重ね合わせた瞬間に爆ぜる。それは熱い恋のような、あるいは静かな祈りのようなティールグリーンの光だ。


絡めた指から溢れ出した光の奔流は、空中で硬質な質量を帯び、美しくも冷酷な一振りの白と翠の銃剣へと再構築されていく。


――『プリマ (P.R.I.M.A.)』。


その剣がキッドたちの右手に収まった瞬間、二人の意識は戦場の喧騒から切り離され、ただ一つの「調律」の波長へと同調する。 


その瞬間、キッドの視界にはリアの演算データが、リアの意識にはキッドの熱い鼓動が互いに溶け合うように流れ込んだ。


「リア、あいつを焼き切るぞ!」

「はい……!私の全てを、貴方に捧げます」


そのまま二人で重なり合うように柄を握り締めると、召喚された銃剣の刀身が限界を超えた光の刃へと膨張する。


それはあまりにも強大で、二人で握り込んで初めてその圧倒的な質量と熱を支えることが出来た。


天を引き裂かんばかりに立ち昇る光の刃。


「「誓約(プロミス ・)光刃(エーーーッジ――!!」」


挿絵(By みてみん)


二人の声が重なる。

圧倒的なまでに膨れ上がった光の奔流が刃となり、帝国の傲慢な鉄の塊をその鎖の描かれた紋章ごと真っ二つに両断していく。


「バカな……! 技術復興省テクネーのアルカナが、たかがガラクタごときに……っ! そんなはずは……! 私の指揮権、私の権限が……認識、不能だとぉッ!?ありえん……こんな、データにない光などッ……!!」


チェイサーの質の悪いスピーカーから悲鳴が漏れるが、光の波に飲み込まれてすぐに聞こえなくなった。


「演算完了。脅威の排除を確認しました。……貴方にキッド様を傷つける資格はありません」


リアが機械的ながらもどこか誇らしげに告げる。


眩いばかりのその光が粒子となって空気に溶けて消えた後に残ったのは、床を突き破り、黒い煙を上げて沈黙したチェイサーの残骸だけ。


圧倒的な破壊の後、工房には再び静寂が戻る。ただし、先ほどまでとは違う。そこには、二人の命が確かに噛み合わさった、強烈な「生」の気配があった。


「……動けるか、リア」

「はい、キッド様」


リアは眼鏡の奥の蒼い瞳で、真っ直ぐにキッドを見つめた。

外の吹雪はまだ止まない。リアが起動したことが知られた以上、技術復興省テクネーという巨大な闇はこれからもキッドたちを執拗に追い詰めるだろう。


だが、今のキッドは怖くない。

指先に伝わる彼女の温もりは、かつてじいちゃんが語った「太陽」よりもずっと暖かったから。


キッドはリアの手を取り、半壊した工房の外へ視線を向けた。

絶望的な灰色の空。その先にある長い旅路。


「行こうぜ。俺たちの未来を、取り戻しに」


リアが小さく微笑む。


凍てついた世界に、150年の時を経て、二つの運命が重なり合った。

それに呼応するように、二人の指にはめられた銀の指輪が微かに温かい光を放ち続けていた。


その光は、彼女の150年間の孤独を終わらせるための最初の一歩だった。




挿絵(By みてみん)




         


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

手を合わせることでペアリングが変化して生まれる必殺武器、ケーキ入刀エクスカリバー……やりたいことを最大限に詰め込んだ1話となっておりました。

楽しんでいただけましたでしょうか?

ここから本格的にキッドとリアの旅が始まります!

もし続きが気になったら、ぜひブックマークと評価で応援していただけると、激務の合間に執筆している私の大きな糧になります……!

次回の更新もぜひ楽しみにしていてください!

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