26、あんこちゃんにはちょっと早い話
あんこちゃんシリーズの第二作目です。
「ガラスのうつわくん!はなれたくないよ~」
もう少しでぶどうのきせつは終わりをむかえます。
「ぼくだってそうだよ。シャインマスカットちゃん」
毎年見ているシーンですが、今年はなんだかよりせっぱつまっている気がします。
あんこちゃんはその理由を知っていました。
「シャインマスカットちゃん。きっとガラスのうつわくんに来年もあえるよ。だってシャインマスカットちゃんじゃなく、ピオーネくんが水色のくだものざらくんにのるかもしれないでしょう?」
昨日、おばあちゃんが花丸デパートでみずいろのくだものざらをかってきたのをキッチンにいるものみんながもくげきしていたのでした。
ガラスのうつわくんは透明なガラスでできた、ブドウのかたちがほってあるほんもののおしゃれさん。
シャインマスカットちゃんは白いおさらくんも悪くないけれど。ガラスのうつわくんにのせられるとほんとうによろこび、「しあわせ♡」といつもいっていました。
「あんこちゃん、そんなのわからないじゃない!そうかもしれないけれど、あえなくなることもあるかもしれないじゃない」
そういって、シャインマスカットちゃんは泣きました。
あんこちゃんは何も言えません。
「シャインマスカットちゃん。ぼく、もしかしたらおしいれにしまいこまれて、もう二度とと出てくることができないかもしれない」
「ガラスのうつわくん!」
シャインマスカットちゃんは、ひめいを上げました。
みずいろのくだものざらくんが、その時はじめて声を出しました。
「なにをいっているんだか。バカみたい。すべてしぜんの流れにまかせればいいのに」
「なんだって!きみには大好きなものとわかれる気持ちがわからないのかい?」
「おさらはのせるのが仕事だろう?だれがのってこようと、おれはおれにのったからにはみんなたいせつにする」
ガラスのうつわくんは、さすがにいいかえせなくなりました。
あんこちゃんはききました。
「水色のくだものざらくんは、この子にこそのってもらいたいとおもう子はいないの?」
水色のくだものざらくんはめいわくそうにため息をつきました。
「くだらない。おれにはそんなのはいない」
「だからわたしたちの気持ちがまったくわからないんだ」
「まって。シャインマスカットちゃん。水色のくだものざらくんは、だれものせたことがないから、まだわからないんだよ」
あんこちゃんは、なんとかケンカになるのをふせごうとしています。
そこへ、おばあちゃんがキッチンへやって来ました。
冷蔵庫の中にからだを突っこむとその手には薄い緑色とも黄色ともつかぬ「梨」がにぎられていました。
「梨」さんは、うたうような声で言いました。
「わぁ、やっと私の出番が来たみたい」
おばあちゃんは、きれいにくるくると梨をむくと、さくっと切りわけました。
「さてと、どちらのお皿にしようかねぇ。今日は暑いからガラスのうつわもよいけれど、昨日買った水色のくだもの皿も使ってみたいわねぇ」
みんなどきどきして見守っています。
シャインマスカットちゃんは、ガラスのうつわくんが選ばれてほしい気持ちと自分がのりたい気持ちが心の中でけんかしていましたが、自分も白いお皿くんにのせられることがあるので
「ガラスのうつわくんを選んで、おばあちゃん」
と願いました。
白いお皿くんも
「やっぱりのせたい子がいるおさらの気持ちが分かるガラスのうつわくんの方が良い仕事をするんじゃないかなぁ。あいじょうって大事だよ」
と言っています。
みずいろのくだものざらくんがかみつきました。
「おれにあいじょうがないっていうのか?おれは、自分にのるもの、全員を愛し、大切に思うだけだ!」
あんこちゃんは、
「どちらのいうことも分かるよ。おばあちゃんにまかせよう」
とていあんしました。
すると梨さんが、はっきりした声で言いました。
「私は自分が一番すきだし、自分にほこりをもっているわ。だから、みずいろのくだものざらくんみたいに、いろいろな人を大切にするより、私を見て大事におもってくれるおさらにのりたい」
シャインマスカットちゃんが、鼻息をふんふんさせています。
「梨さん、いいこといった!その通り!私もそう思う」
みずいろのくだものざらくんも負けてはいません。
「おれは、皆を大事にする!おれにのってくれたものを必ずかがやかせるために!」
あんこちゃんは胸がじんわりあたたまりました。
「ごめんね、シャインマスカットちゃん、梨さん。私、みずいろのくだものざらくんの気持ち、ありがたいと思う。だって、わたし、自分に合うお皿ばかりじゃないでしょう?いつものりたいお皿ばかりじゃなかったし、そんな時、おちこむの。でも、みずいろのくだものざらくんみたいな気持ちでのせてくれたら、すごくうれしいし、ほっとする」
「あんこちゃんは、日本を代表するスイーツでしょう?どうしてそんな自信のないこというの?」
シャインマスカットちゃんが、口をとがらせました。
「たしかに白い楕円形のおさらさんにそう教わったけれど、高梨家ではおばあちゃんしか食べない地味な存在だもの」
「あんこは昔からあるのにね。梨も弥生時代から、あんこと同じくらい昔から、人々の口に入っていたから、かなり歴史がある食べものよ。だから、私をおもう最高のおさらにのせてもらいたいの」
シャインマスカットちゃんが、またまたふくざつそうな顔をしました。
「ガラスのうつわくんが一番に想ってくれるのは、私がいい」
「シャインマスカットちゃん、この体にきざまれているのはブドウ。まさに君だよ!」
ガラスのうつわくんの言葉にシャインマスカットちゃんはカンゲキして、涙を流しました。
「梨さん。そういうことで、ガラスのうつわくんは私を一番に思ってくれているの。あなたにはみずいろのくだものざらくんがぴったりだと思うわ」
おばあちゃんが、そっと戸棚に手をのばしました。
「今日は天気がよいから、水色が映えるわね。水色のくだもの皿にしよう」
梨さんは不安そうにみずいろのくだものざらくんに言いました。
「あなたは、どれくらい私のことをおもってくれている?」
みずいろのくだものざらくんは、ふっと笑って言いました。
「今は、あなたしか見えません。あなたをかがやかせるために、おれは今存在しています」
「まぁ!」
水色に白い梨さんの姿。
ほんとうになんてきれいなのでしょう!
梨さんもおばあちゃんもまんぞくしたようです。
梨さんは、ウィンクしました。
「みずいろのくだものざらくん。仕事をきっちりすることはとても素晴らしいことだとあなたを見て私もきづいたわ。でも、やっぱり一番にあの子をのせたいと思う気持ちは、色々な子をのせていれば、自然と出てくる気持ちだと思うし、それは大切なことだわ。わたし、あなたをふりむかせて、わたしがあなたの一番になってみせるわ!」
みずいろのくだものざらくんは、またふっと笑いました。
あんこちゃんは、おどろいてめをぱちくり。
シャインマスカットちゃんは、あんこちゃんにそっと言いました。
「あんこちゃんには、まだちょっと早いお話かも」
「そんなことないよ。白い楕円形のお皿さんだって……」
「あれは愛情というより、尊敬だと思うよ」
「う~」
「まっ、あんこちゃんも「このお皿!」っていうお皿が見つかると良いね!」
仲良くしているシャインマスカットちゃんが、かなり大人に見えたあんこちゃんなのでした。
おわり
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
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