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20 新しい迷宮と苦悩

ギルドマスターことおねえに連れられて奥の部屋に案内された僕ら3人だった。

おねえがくねくねしながらしゃべりだす。


「知ってるわよぉん!あなたたちいろんな魔物倒してるでしょぉん?塩漬けになりそうなやつとかぁん?極めつけはぁん!ホブゴブリンまで倒したんでしょぉん?」


その言葉に、ふふっと得意そうにするエナ。

彼女の中ではボス討伐よりもホブゴブリン討伐は自慢話になってるらしい。


「ん。まあいろいろ倒したぞ」

「え、えっと、魔物って、思っていたよりは、怖くない・・・ですよ」


エナはともかく、少し見ない間にサリアはかなり変わったな・・・いや、初めて魔物と戦った時からそれなりに意気込みがちゃんとしてたか。

それと、エナと一緒にいる時間が長いからサリアは彼女の影響を受けているのかもしれないな。


「がんばってて偉いわぁん!最近は小さい子たちが活躍してて嬉しいわぁん!」


ダラオンたちも含まれるのだろう。


「そういえば、ダラオンはわかるんだけど、そのほかの子供たちも冒険者になってるの?」


せっかくなので聞けそうなおねえに聞いてみることにした。

実際に子供たちは冒険者のJOBを持っていたから確実なんだけど、その理由を聞きたくて遠回りに聞いてみた。


「そうよぉん!あたしの権限で冒険者にしたわぁん!その方がいいと思ったからねぇん!」


「そうなんだ」


思うところはあるけど、おねぇが良いと思ったなら良いのだろう。

エナはあまり良い顔をしてなかったが特に文句を言うことはなかった。


「あたしに来てた依頼なんだけどねぇん?あたしにはどうにもできなさそうだけどぉん、あなたたちならいけそうだと思うのよぉん!」


ギルドマスターにどうにもできないような依頼って何なんだ・・・


「ん。ちょうど依頼がなくて困っていたんだぞ」

「と、討伐じゃない、普通の依頼は、あるんですけど・・・ね」

「ん。ロキには言っていなかったが、基本的に魔物が関わらない仕事は、ロキがいない間に結構たくさん依頼を受けて冒険者見習いに渡していたんだぞ」


自分たちがしてもらっていた時のように冒険者見習いに仕事を渡していたのか、さすがエナ。しっかりしているな。


「まあ、ほとんどの報酬を子供たちに渡していたからあまり手元に残らなかった。片手間でできるにはできるけどな」

「わ、私も、実際に仕事してないのに報酬を受け取るなんてできなくて・・・」


この2人は冒険者見習いに仕事を渡したいという気持ちが強い上に、自分たちが冒険者見習いの時に冒険者にしてもらいたかったことをそのまま実行してるんだろうな。その結果、ほぼ全部報酬を渡してしまっても全然おかしくないか。


となると稼ぐには実際に自分で仕事するしかないだろうけど・・・


「ん。あと、いくつか魔物を討伐するだけでも2人なら宿の代金払いながらも可能だったが、最近は邪魔が入ってな」

「ま、町中の依頼だと、い、嫌がらせされるので、仕事しづらいん、です・・・」

「ああ。ダラオンたちがうざくてな」


マジかよ。あいつら仕事の邪魔までしてくんのか。ダラオンがさっき殴ってこなかったのはすでに憂さ晴らしを終えていたからだったわけか・・・。


「なるほど。それだと、めんどくさいね」


状況を理解したころ、ギルドマスターのおねえが口を開いた。

おねえは彼らのその妨害についても別に思うことがないわけでもないのだろうが、口を出す気はないようだ。

その代わりに僕らにはクエストを提示してくれるわけだし、ダラオンたちのことは考え過ぎない方が良いのかもしれない。実害さえなければ可愛いものだといわれればその通りだろうし。


「じゃぁん!今回は特別な依頼やってもらいますよぉん!」

「ん。内容は?」

「前回と似たパターンなんだけどねぇん!未踏破ダンジョンよぉん!少し離れてるけどぉん!」


未踏破ダンジョン?

また大きな仕事を・・・それにしても、それってどこだろう?


「そういうのは、ダンジョン攻略の『零』がやるんじゃないの?」


ダンジョン攻略の『零』は有名なパーティのはずだ。全然よく知らないけど。なぜ彼らに任せないのだろうかというのは疑問に思うところだろう。


「ん。たしかにそうだな。どうしてなんだ?」

「そうねぇん!『零』は魔物がそんなに多くない場所じゃないと行かないのよぉん。でもねぇん。今回の場所は新しい場所なのに魔物だらけらしいのよぉん!」


なるほど、それでか。てか普通ダンジョンは魔物が出るけどな。出ない方が稀なはず。


もしかして、小さな洞窟や窪みの場所までダンジョンみたいな扱いにでもしていたのか?

『雫』に対して、そんなどうしようもない想像をしたがこの世界のLEV水準からしてみるとそれがアタリかもしれない。


「その未踏破ダンジョンの場所はどこなの?」

「グランツって町は知ってるかしらぁん?そのあたりにできたらしいのよぉん。あたしはギルドマスターだから遠出できないし、もう腕だって鈍っちゃってるしねぇん。そもそも盾職だから、1人で行っても仕方ないしねぇん」


・・・ん?ギルド総本部からそんな依頼がおねえに来たのなら盾職のおねえ1人でもクリアできるレベルなのでは?


ということはギルド総本部的にはそれほど危険視していないと言うところなのだろう。それを承知でおねえは噂通りの僕らの力があれば事は足りると踏んだ、というところか。


僕が1人で納得しているとエナが僕の顔をちらっと見てから何かを考える様子を見せた。


何を考えてるんだろう?

僕がこの依頼を受けるかどうか、おねえ指定の依頼を僕らがやることに関して能力的に問題はないのかを考えたのかな?


とりあえず、僕はエナの顔を見返して頷いておいた。

僕のその反応を見てエナはサリアにこくんと頷いた。


サリアがこ僕ら3人『望撃歌』のリーダーだから判断をするのはサリアだもんな。

決定する材料として僕とエナの頷きでサリアも意図を組んだらしく「や、やります!」とおねえに言葉を返していた。


これにて、僕らの新ダンジョンの攻略をすることが決定したわけだ。

そんなことを頭に思い浮かべた瞬間、ふとあることを思い出した。


・・・そういえば、グランツ付近には僕がプレイを始めた時にはすでにダンジョンがあったな。

最初からあったわけではなかったのか。レルカの迷宮とか呼ばれてたっけ。最後のボスがレルカとかいう名前だったかららしいけど。


・・・たしかあのダンジョンには初踏破では特殊な特典が手に入るんだよなぁ。初踏破なら・・・


初踏破なら・・・?あれ?今はまだ未踏じゃん。


ん!?まじか!!


レルカ初回討伐で手に入るのは・・・ホムンクルス1体。


しかもこのホムンクルス、手に入れたプレイヤーが、結界魔王討伐後でその力を使ってかなり大活躍してたんだよな。まあ課金の力の可能性も高いけどさ。


でもまあ、手に入るなら絶対手に入れたい・・・!



僕らが依頼を受け意思を見せたところ、おねえも喜んだ様子で依頼の話を続けてくれた。


「報酬はあたしの代わりだからぁん、1500万エルねぇん。ただ手取りは750万エルだけどねぇん」

「ひゃ、750万エル・・・!」

「ん。凄い額だぞ・・・!」

「おう、そんなにもらえるのか、でもそりゃそうか」


一人頭250万エル・・・ものすごい大金だ。


「総本部からの依頼だとその額になるのか」

「そうねぇん!というかぁん、規模にもよるけどぉん、未踏破ダンジョンの攻略はそれくらい手に入るわぁん。一度でも最奥の魔物を倒さないとそのうち魔物が溢れてくるからねぇん、それは防がないとよぉん、もう溢れてきちゃってるみたいだけどねぇん」


魔物は通常、その辺にいつの間にか現れるものではあるが、自然発生するのは迷宮、いわゆるダンジョンとそれに準ずる場所のみとされる。


「本当ならこういうのは結界魔王の管轄なのにねぇん。発見報告しても無視しちゃってるみたいなのよねぇん!最近はどんどん治安も悪くなってるしぃん、困っちゃうわよねぇん!夜道が怖いわぁん!最近は魔物の統括もできちゃいないからこういうのも丸投げよぉん」

「・・・ん。らしいな」



夜道で怖いのはギルマスに出会った人の方だと思うけどね。

それはさておき、そういえば、そういう設定だったな。

実際は人間の味方どころか反魔王勢力になりそうな人間には魔物に命令してその人物がいる町ごと襲うくらいはやってのけるのが結界魔王なんだけど、人間にはこの時点ではばれてないんだったか。


それに民衆には噂程度でしか回ってないが、結界魔王は結界の維持と贅沢を重ねているせいで徐々に今までの税収では立ち行かなくなっているから、国民である人間に皺寄せが徐々に押し寄せるのだ。


設定では、当初結界魔王がこの大陸を統治していた時は街道さえ通れば危険もないようになっていたし、大量の魔物が現れて町を蹂躙するような魔物災害と言われる類の現象もなかったとされる。それに、結界のおかげで強い存在はやってこないため、弱者の生存可能性が高まる点でも人間にとっては良かったのだ。

だからこそ人間は甘んじて魔族の王である、魔王の支配下にいたのだ。


ただ、弱者が弱者として生きることを受け入れていることがPWKの世界では悲劇を生んだ。死んでも生き返ることができるプレイヤーのいる世界ですらそうなったのだ。

この世界ではどうなってしまうのか、僕が想像するに・・・より残酷なことになるのだろうか。


現在の結界魔王は魔物の暴走を止めることもせず、街道も領地の人間である兵士が警備する程度になった。無論、兵士と言えども魔物を次々と切っては捨てというようなことができる人間はまずほとんどいない。そのため街道を歩いていても被害が出る始末なのだとか。


もはや街道を使うことがないから噂話しかわからないんだけどね。


今や、魔物の氾濫や強力な魔物の襲来などの魔物災害が起きても結界魔王は何もせず、その地、これまで魔王がしていた人間にメリットのあることを廃止していき、人間が減ったらその分、減った分をとりも出すために元より重かった税にさらに上乗せして、全ての領主にも税の徴収を押し付け、税を払えなかった者を見せしめに殺させたり奴隷にするからと集めたりというのが続き、ついぞ結界魔王討伐へとその時人間の中でも平均的以上の力を持っていることが多かった冒険者ギルドが蜂起するに至る・・・


シナリオ通りなら大体6年前後で冒険者は蜂起することになる。ただ、6年も待っていたら僕は年齢がレベルを上回ってしまい、死亡する。同時に転生している莉緒も道連れにした挙句、地獄に落ちることになる・・・そうならないために対策を練らないといけないが、今のところ対策は全然湧いていない。


なので、今できるだろうことを、ひたすらやるしかないのだ。


だからそれは置いておくとしよう。


ちなみに通常の税の徴収などの統治自体は人間に任せているため、領地という概念があるのだけど、実際、魔王からしてみれば、人間などは弱い存在。虫みたいな扱いだ。いや、利益を生み出す家畜くらいには思っているかもしれないが、結局はそういう扱いなのだ。


弱い魔物に関しては人間でも倒せるが、強いのが出れば事実、体を張って人間が時間稼ぎをする。つまり単純に生贄になることも多いらしい。そして時間を稼いでいるうちに魔王やその配下が処理に向かうのだ。


・・・国民の戦闘的なレベルを上げることも念頭に置いた方が良いかもしれないな。じゃないと魔王やその配下と呼ばれる存在と戦争になった時に魔物の大軍という数で押されて負けてしまうからね。



・・・戦力は一人でも多い方がいい。ホムンクルスがいればかなり少なくとも有利なはずだ。そうつまりは今できることは今依頼されたダンジョンの攻略、これしかないだろう。


ホムンクルスは人間と見た目が変わらないし冒険者にもなれる。そのため、魔王を倒す際に必要である属性SKLを持てるのだ。

結界魔王と戦うとなった時にも戦えるというわけだ。手に入れられるなら手に入れないという選択肢はないだろう。



その後もおねえから事前にわかっている情報を聞いて、僕らは来週にはその地へ行くことになった。



グランツはまあまあな距離がある。直線的に進んでもここからだと1日かかりそうだ。


となると、実質探索にかけられるのは2日か。普通ならクリアできないだろうけどとは、今回は知ってる場所だし、どこにボスがいて、どこでホムンクルスが手に入るのかもわかっている。むしろ半日あればクリア可能なはずだ。


来週になるまで適当に孤児向けに町中の依頼大量にこなすとしますか。


ということで3人で手分けして、孤児の依頼をがっつりやったが、全員で1万エルすらも手元に残らなかった。


「やっぱきついな。これだけやってるなら、もう少し貰わないとやっていける気がしないね」

「ん。だから子供にはあまり報酬を渡さない者もいたんだろうな」


あまり報酬を分けてくれない冒険者は孤児を利用する悪い奴らだ!とか思ってたけど、依頼をつきっきりで見てもらいながらやってたら元々の金額が多くないことを考えると、冒険者にとっては割に合わなすぎるのだろうということが身をもってわかった。


「こ、こんなに頑張っても、ほとんど渡してたら手元になんて残らない、ですよ・・・」


孤児に依頼を渡す場合には他にも自分だけで仕事をやる必要があるようだ。


やっぱり魔物討伐とかの高額なやつがやりたいところだが、完全にダラオン率いる『黒星』の面々に討伐の依頼は奪われている。

鑑定で盗み見たところ、『黒星』のメンバーはまだそれほどLEVは上がってないようだ。昨日の時点ではみんなLEV2だったっけ。まあ、子供ということを考慮しなくてもかなり優秀な冒険者に分類されることだろうけどね。


魔物を倒せるのと倒せないだと雲泥の差がでるからね。


大人の冒険者たちも突出してきた異例の子供だけで構築されたパーティに良い思いは抱いていないようで、難癖つけて暴力で解決しようとしたりすることもあったようだ。


もちろん現状高LEVであるダラオンに勝てるのはこの辺の大人の中にはいない。勝てるとしたらおねえくらいだろうけど、おねえはダラオンにも関心はあるが、何か手を出す様子はない。


「ちっ。またガキどもか」


今いるのは冒険者ギルドから少し離れた場所だが、通りかかった冒険者のおっさんに舌打ちされた。


僕らも大量に町中の簡単な依頼を完遂し続けていたので、良い顔はされないようだ。


仕事にも供給量が限られている。

仕事を取りすぎると他の冒険者の仕事を奪ってしまい疎まれるのだろう。


PWKの世界ではここまで酷いことはなかった。せいぜい重課金者がイベントをクリアしたりすると不公平ということを宣う者がいたくらいだ。

もちろん、課金してもそこまで楽にならなかったりするらしいのだけどね。


疎まれるのはなんとなく嫌だったから依頼が多い時間ではない時に依頼を受けていたことやダラオンたちが悪目立ちし続けていたせいか、彼ら程は僕らは話題にはならなかった。先程のように子供の冒険者というだけでたまに舌打ちされるくらいだ。


それ自体は良い感じは全くしないのだけどね。





翌週、僕がサリアとエナと共にラーリアの町を出ようとすると、大人の冒険者の姿がちらほらと散見された。


「あれ?大人の冒険者が町の外に結構いるんだな」

「ん。ロキがいない間に魔物討伐の依頼がかなり増えてな」

「う、噂が広まったみたいで・・・子供でも倒せるならって・・・」


そういうことか、大人だって意地があるだろうし、仕方ないことか。

でも急に魔物の数が増えたっていうのも少し気になるけど・・・誰も疑問には思わないんだろうか?


「でも、危ない討伐依頼とか出てたら大変だよね」

「ん。ギルドの掲示板を見たけど、どれもこのあたりにいるそんなに強くない魔物ばかりだったから、大丈夫だと思うぞ」


エナはちゃんと確認していたらしい。そもそもおねえだって確認できる範囲で確認しているだろうしね。


「それならいいか」


そんな会話をしながら門を通ろうとすると、急に背後から声をかけられた。


「おい。お前ら、『黒星』のメンバーか?」


振り向くと、見覚えのある大人の冒険者数名がいた。

その中の1人、ラートイと言ったか、ダラオンにボコられた冒険者の男だ。


「ん。違うぞ」

「違うのか?お前ら、『黒星』のリーダー、ダラオンと一緒にいただろ」

「ちょ、ちょっと前までは一緒のパーティでした、けど・・・」

「いろいろあって、僕らは別のパーティだ」


なんで答えようかちょっと迷ったけど、この回答くらいが無難だと思い至った?


「と、ということは『望撃歌』か?!」

「お、お前らが!」


ラートイさんの後ろの冒険者が大きな驚きの声をあげる。

何かあっただろうか?ホブゴブリンを倒したりしたくらいしか話題になりそうなことしてないけど。


「ん。そうだ」


エナが得意気に肯定の声をあげると、ラートイさんの後ろの男が前に出てきた。


「俺は『青い彗星』のリーダー、トルエードだ。この前は助かった。礼を言う」


なにか、僕がいない間にあったらしい。


「ん。最初は誰しもミスをするぞ」

「そう言われると、確かにそうだがな」

「俺たちはお前ら2人に助けられた、今度何かあったら俺らが助けになろう」


『青い彗星』のパーティとそんなやり取りをしてから町の門を出たところで品進行方向が異なるので別れることになった。


「久しぶりに大人の冒険者に笑いかけられたね」


『青い彗星』の姿が見えなくなったあたりで僕がそうエナたちに話題を振ると、得意げにエナが答えてくれた。


「ミドル・スコーピオンが現れてな、襲われてる大人たちを助けたんだぞ」

「は、初めて見る魔物だったからどうしたらいいのか困ってしまいましたが、なんとか倒せました!」


「なるほど、それが『青い彗星』のパーティだったんだね」


エナが得意げにするのもわかる。

ミドル・スコーピオンはPWKの初期ではかなりの強敵とされていた。というのも、この蠍、かなり硬い外皮のせいで攻撃がなかなか通らないのだ。


そして、両腕のハサミもだが尻尾を使った攻撃もまた厄介でその上毒まである。さらには動きも結構早い。

まあ出てくる頻度も少ないから最初の頃は情報が少なくプレイヤーが結構犠牲になったけど、ある程度の装備とLEVがあれば攻撃パターンさえ分かっていれば倒せる・・・


「なるほど、よく倒せたね」


「まあ、よく見切ればあのくらい楽勝だぞ、サリアの援護もあるしな」


たしかにエナの素早さに攻撃力、サリアの欲しいところに欲しいタイミングで行われる遠くからの援護射撃があれば、攻撃パターンを理解していなくても苦戦はするかもしれないが倒せないことはないだろうな。


「それでも凄いことだと思うよ」

「まあ、私かかれば楽なもんだぞ!」


エナ、ちょっと調子乗ってるかな?


少し笑ってしまったが、エナとしても少し調子に乗っている自覚はあるらしくふふっと気恥ずかしそうに笑い返してきた。


それにしても、そう、とんでもない戦闘センス・・・エナだけじゃない、サリアにしても的確過ぎる戦闘をするのだ。

まるで先頭に最適化したNPC・・・あるいは・・・プレイヤーのように・・・


ふと頭をよぎる悪魔さんとの契約。




『転生のメリット!

・記憶持ったまま転生

・今ある知識の役立つ世界への転生

・2人は近場に転生

・健康な肉体の授与

・特別な能力の授与

・うまくいけば酷い苦痛を味合わなくて済む』




莉緒は記憶を持ったまま、特別な能力の付与されて前世の知識の役立つ世界へ・・・そして僕の近くに転生しているのだ。この二人のうちどちらかが実は莉緒であるという可能性だったあるのではないだろうか?


考えなかったわけでない・・・だけど、彼女らには鑑定をした時には転生者を示すであろうTTL:『禁忌の転生者』はなかった・・・それを根拠として、僕は彼女らに莉緒か?と尋ねることをしないことにしたのだ。


だが、それは甘えだった。そう、僕だってTTLは隠すことができるのだ。



でも、もし隠しているしたのならば、なぜ彼女が莉緒であることを隠すのだ?という問題が出てくる。

お互いに協力した方が絶対に良いはずなのだ。


でもそれを僕だってしていない。


怖いのだ。


僕のせいで死んでしまった、莉緒を救うこともできなかった僕がどんな面をして彼女に会えばいいというのか、わからないのだ。


莉緒がどう思っているかはわからない。


もしこの二人のうちのどちらかが莉緒だとしたら、少なくとも僕には見つかりたくないそう感じてステータスを隠している、というこことになるだろう。


それならば、絶対に探ることはしない。それが、今の関係を壊さない最善だと信じて・・・。


でも思ってしまう。


僕は逃げているんじゃないだろうか?・・・と。

前世でも、今世でも・・・。

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