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21 グランツの町

考えれば考えるほど暗くなり始めている自分に嫌気がさしてきた辺りで、再び別の冒険者パーティに出会ったようでエナとサリアが挨拶をされていた。


「今度は何があったんだ?」


頭を切り替えようとエナたちに事情を聴くことにした。


「ん?ああ。冒険者ギルドに魔物の討伐依頼も増えてたんだが、それは町の周辺の農地開拓が活発になったからなんだ。魔物を倒せるとわかったおかげだろうな。まあその結果、ロキも知っての通り、そんなに危ない魔物はいないが大人と言えどミスって死にそうになることがちょくちょくあったんだ」

「そ、それで、私たちも討伐依頼をこなしながら、ほ、他の冒険者さんの手助けもしていたん、です・・・」

「あぁ、それでか。『望撃歌』の評判が良くなったようでよかったよ」


評判が悪いと今後の仕事に支障が出たりするからね。

さっきの冒険者の視線からは好意を感じた。

人間助け合いが一番だよね。


「ん。ダラオンたちと同じ扱いは癪に障るからな。ちょっと違うことをしたかったのもあるんだぞ。ちなみにダラオンたちはちょうど反対側の出入り口に陣取って農地を増やそうとしているようだぞ」

「え、えっと、それと、会うたびに農地を多く広げるのは『黒星』だって、言ってくるん、です・・・」


いつの間にか農地の拡大合戦になっていたのか。まあ農地を広げてるのは農家の方々なんだけど。


「あのちびっ子たち、勝負の結果が思うよう行ってないから暴力を振るって来ようとするんだが、全部防いでやったぞ」


なるほど、ダラオンは因縁の僕らに勝ちたくてしょうがないんだろう。

とはいえ、農地開拓は良いことだね。PWKでもこの町はもう少し農地広かったし。これはゲームの予定通りの展開なんだろう。


「ん。まあ何だかんだ、先週までは農家の人たちも私らに良い印象は持ってなかったみたいだけどな。ここ数日は『黒星』を妬む大人たち、逆に彼らに従う大人たちも関係なく、まあどちらにせよ魔物討伐にほとんどの冒険者が参加したし、農家の方々もどんどん農地を広げてたわけだぞ」


でもまあ大多数の大人たちを敵に回したせいで、ダラオンたちが僕らに仕掛けた勝負はだいぶ劣勢らしい。


にしても、僕がいない間にいろいろ変わるもんだな。

僕が感慨深げにしているとエナが話題を変えてくれた。


「・・・ん。まあそれはいいか。さてグランツへの行き方なんだが、直線ルートで行こうと思うぞ」

「いいよ。その方が早いだろうし」

「わ、私もいい、ですよ」


ということでグランツへ向けて旅立つことにした。


街道を外れて歩いているとダンジョンの誕生のせいか魔物がわんさか出てきたが、エナもサリアも確実にまた強くなっている。

サリアの正確性は元からだが連射速度がやたら速くなっていた。エナは装備していたダガーを数本増やして投げたりもするようになっていた。しかも、目や開いた口、喉の奥など確実にダメージを負わせ、ひるませている。


そういやLEVは2人とも8だ。ステータスに若干の差はあるが、その辺の冒険者より断然強い。それなりに強い魔物を倒していたのだろうな。

僕は2人の様子を見ながら援護をしていた。


サリアの矢の数が減ってきたな。魔物から引き抜きサリアの矢筒へと戻す。エナのダガーでひるんでいた魔物がエナではなくサリアを襲おうとしたため、それを僕が切り倒し、ダガーを引き抜いてエナの足元に向けて投げておく。

エナ・・・気が付いたら手元のダガー1本になってるんだけど・・・

2人とももうちょっと余裕を持ったらどうなんだ?という視線を籠めてやると。


「ん。ロキがいるから少しいつもより無茶させてもらってる、ありがとうだぞ」

「わ、私もです!」


2人とも僕の視線の意味に気が付いたのか微笑んできた。


まあいつもこんなではないならいいか。

美少女たちに微笑まれることに関しては僕も悪い気はしない。


そんなことをしてる間にグランツまでたどり着いた。

僕はいつの間にか前衛ではなく中衛扱い?補佐役?になっているようだ。まあいいんだけどさ。


「ん。ロキ。ありがとうだぞ。いつもより倒す魔物の数が多かったから危なかった」

「え、エナちゃんは今日から戦い方変えてたました、から・・・」

「ん。本数増やして投げてみたんだが、手元のダガーが1本になるまで気が付かなくて困っていたんだぞ」

「なるほど。やっぱり少し危うかったんだね。でもまあ、何とかなってよかったよ。グランツにも着いたし」


町の雰囲気を見ると、人の気配が少ない気がする。


「新規ダンジョンのせいで魔物が溢れているからか、状況は良くはないみたいだね」

「ん。まあ仕方ないだろうな」

「きょ、今日はもう遅いですよね、ど、どこに泊まりますか・・・?」


そういえば泊まる場所考えないとな。PWKの世界ではグランツには宿屋が4箇所あったが、現在はいくつあるんだろう。


「まあ適当に探すか」


町に入ってすぐに宿屋があったはずだが・・・ないな。

やっぱりダンジョンができる前だからか?


その後もグランツの町を回って、やっと見つけた。


「ここしかないかな」

「ん。たぶんそうだな」


ということで、あんまりきれいではない宿に泊まることにした。この場所僕がプレイしていた時にはもっと綺麗だったけどな。

受付に行き話しかけると少し怪訝そうな顔を店主の男性にされた。


「部屋は2部屋で」

「2部屋で2万8千エルだけど、・・・お金は?」


子供だけで泊まりに来るなんて今までなかったことだろうからその対応は当然だろうな。


「ん。あるぞ。先払いしておく」


エナが気の利かせて店員に先払いを提案する。


「ほう・・・失礼したな。番号の部屋を使ってくれ」


男性は訝しみつつ僕らを通してくれた。子供だけが大金ともいえる額を持ってやってきたのだから、そういう対応にもなるだろう。


まあ当たり前だがエナとサリアが同じ部屋に泊まり、僕は1人で泊まることになった。



どうやら2階の隣接した部屋のようだ。

部屋に入ると、少し埃っぽい感じがしたが、ベッドは清潔な感じがしていたのでちゃんと清掃しているのであろう。


トイレは1階にあり、そして共用だ。もちろん水洗なんてないからボットン便所である。

これはいつまでたっても慣れないところだね。臭うし。


ちなみに、お風呂とかはない。というかお風呂という概念がそもそもない。体を洗うとなると庭とかで水浴びすることが多いが、ここにはそれすらない。庭がないのだ。

うーん。宿泊料が高いのか安いのかわからない額だな・・・旅人は多くはないため需要が少ない。売上もほとんど税金で持ってかれることを考慮すると、まあ妥当か。


しばらくすると部屋をノックする音とともにエナの声が聞こえた。


「ん。ロキ。ご飯を食べに行こう」

「了解」


僕は貴重品と武器を持って扉を開けた。

というかフル装備である。セキュリティの悪い宿に荷物を置いておいて良いことはないからね。

エナやサリアも同様で、ダガーを仕込んだマントを着込んだエナと、弓と矢の入った矢筒を持ったサリアがいた。こちらも同様にフル装備だ。


そんなわけで、店主に飲食店がどこかやってないか聞くと、・・・やってないとのことだった。

観光がないからそういう店もないのか?とはいえ、それでも町の人のために多少の屋台とか飲み屋はあるはずなのだが・・・


「魔物が湧いて出てくるようになってから移動できる人たちは出て行っちまったよ。全く。俺だってこんな仕事じゃなかったら出て行ってるよ。ったく。今の魔王はしっかり管理してくれないしよ」

「・・・ん。そうか」

「じゃあなにか食べ物とかってどこで手に入れたらいい?」

「ジャガイモとニンジンくらいならあるから、蒸かしてやるよ。ジャガイモは1個800エルな。ニンジンは1個600エルだ」


高。

一瞬顔をしかめそうになったが留めた。

エナは無言だが顔が物語っていた。

サリアはおろおろしている。


「商売上手だね」

「ジャガイモ3つでいいか?」

「うん」

「は、はい・・・!」


ということでジャガイモだけもらってお金を2400エルを払った。


ジャガイモはエナとサリアの部屋のベッドに座って3人で食べた。

こういう旅も悪くないな。前世の修学旅行でもこんなことはなかった。そもそも僕には友達少なかったし・・・。


なるほど、莉緒がいない人生だと前世では誰かとこうしてお泊りとかをする可能性もあったのか・・・


は・・・?



自分で考えてとんでもない残酷なことを考えたことに気が付いてしまった。


僕はなんてことを考えたんだ・・・。

莉緒が居なくても僕には友達を作る能力は乏しいのだから前世でエナやサリアと同じような関係を作れるわけがなかったじゃないか、きっとそうだ。

なんで莉緒のせいにしたんだよ・・・莉緒さえいなかったら何か違った人生を送って、今もこの世界になんて・・・


頭に浮かんだ思考があまりに気分の悪いもので、自己嫌悪したがすぐに考えるのをやめることにした。


こんなこと考えても仕方ない!僕は莉緒を見つけて、今度こそ当たり障りない人生を過ごすのだ・・・!


違うことを考えよう!


・・・そうだ。このグランツの町!PWKではかなり栄えていたのに、今はどうだろう!今の状態は今まで見たどの町よりも酷いではないか!


新しくできたダンジョンはこの世界にしてみたらかなり危険なものだ。

ボスを倒さない限りは半永久的に大量の魔物を生み出し地上に供給し続ける。しかも地上に生息している魔物よりも強いことも多い。


発見が遅れればダンジョンはより深く深くなっていき、ボスのいる部屋が遠くなる。すなわちボスの部屋にたどり着くまでに別の魔物に殺される可能性が高まるため、この死んだら終わりの世界では難易度が急激に跳ね上がることになる。


だからこそ、近くに新規ダンジョンができたせいで町から人が出て行ってしまったのだろうけど、ボスさえ倒されれば地上に魔物が出てくることもまずないし、そもそもダンジョン内にもさほど多くの魔物は出なくなるしとても貴重な道具や鉱石など、様々なものが手に入るため人々に利益をもたらすことで近くの町は栄えることになる。


他の店がはやり始める前にここの土地を買って質の良い店を出せば世界の生活水準の向上にもなるかもしれない。人が集まることがわかっている場所で前世と同じような良いサービスや設備を提供していけば世界中に広がるはずだ・・・


部屋に戻ったら一度考えてみようかな。

僕はいつまで生きられるか知らないけど生活水準は上げていかないと生きていくのも大変だ。


でも、自分の生活を豊かにするためには他の人間全体の生活水準を高めることを考える必要も出てくるが、同時に悪魔さんとの契約上、大量に人間を殺すことを考えなければならないのが、とても矛盾しているようにも感じる。


ただ、言うのは簡単だけど、実際に僕が人を殺すことができるのか、決心ができていない。


常に問題を先送りにしているのだ。

きっと良い案がそのうち出てくる、そう曖昧な考えで、いや、考えることを廃棄している。


色々考えているとサリアが突然僕を見ながら口を開いた。


「あ、明日は足引っ張らないように気をつけます、から!」


突然サリアがそう告げた。

ちょっと驚いたけど、サリアは僕が何か考えてるのを見て、何かを感じ取って不安に思ってしまったのかもしれない。


「サリアは足なんて引っ張ってないよ」

「そうだぞ。サリアにはいつも助けられてるぞ」


エナもサリアの不安を払拭すべく頭をなでる。


サリアはそれでも何かを考えているようだったがそれ以上に何かを訴えることはなかった。



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