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元カノに振られ、元カノに告られる。  作者: 紅荒力


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第4話 あたし

「「おはようございます」」


 およそ40人とは思えない朝の挨拶を終え、先生が連絡事項を淡々と話す。


 ちょんちょん


「ねぇねぇ」

 左肩を突かれて振り向くと、ボブヘアの少し小柄な女の子と目があった。

「昨日廊下で倒れたのって君?」

「他に廊下で倒れて入学式出れなかった人がいないのなら僕だね」

「大丈夫だった?」

「ただの貧血だったから何ともないよ」

「ふーん、入学式でれなくて残念だったね。軽く噂になってたよ」

 なんか朝から視線を感じるなーと思ったらそのせいか。

「美女二人に話しかけられたショックで倒れた奴がいるらしいって」

「え……?そんな噂が……」

 そう言われると、朝の視線も哀れみが混じっていたような……、

 うー、今日一日恥ずかしくて廊下出れないよ。

「それで、気になって話しかけたけど想像してたより普通だなって」

「それって悪口?」

「いやー?そんなことないよ」


 ぱんっ。


「じゃあ私の話は以上で、自己紹介とかは各自でテキトーに」

 そう言って担任は教室から出て行った。

「なんかテキトーだなー先生だな」

「いいじゃんテキトーな方が自由できそうで良くない?」

「確かに」


「はいっ、改めまして黒金笑真くろがねえまよろしくね」

「あ、あぁ、蛍原祢援ほとはらねおんです。よろしく」

「いやー入学早々顔のいい男子と隣になれて嬉しいよ」

「え?か……顔?」

「ん?言われない?」

「いや全くないことはないけど……」

 そんな面と向かって言われたのなんて初めてだ。照れる。

「私は言われるよ」

「え?」

「こそこそとね、悪口じゃないんだから陰で言わないで私に直接言えばいいのに。そもそもこそこそ話は見ていて気分良くないし」

 不思議そうに「直接言った方が相手も嬉しいのに」なんて続けた。


 もー、なんか怖いやつと隣になったんだけどー。

 高校は自分の席で一人静かにしてようと思ったのに……。

「あ、一限始まっちゃう準備しないと、そう言うことでよろしく」

「お、おう」

 そう言って彼女はロッカーに駆けて行った。

 可愛いけど中々クセの強い子だな。




 キーンコーン、カーンコーン。


「お、ちょうどいいな、今日の授業はここまでにします」

「起立、礼」

「「ありがとうございました」」


 授業が終わった僕の目線は麗夢らむを探していた。

 二回目なので、昨日みたいなショックはないと信じたい。

「居た……」

 弁当を持って麗夢のところに急ぐ。

「麗夢」

「あ、祢援どうしたの?」

「……っ、いや、ご飯一緒に食べようかなって」

「いいよー、でも杷子も一緒でいい?」

「えっと……」

「私はいいから二人で食べてきなよ」

 僕の後ろからひょこっと杷子が顔を出す。

「杷子、ちょっと……」

「え?なに」

 麗夢が杷子を手招いて、こそこそと耳打ちをする。

 今少しだけ笑真が朝言ったことに共感してしまった。

「ごめん祢援、私も一緒でいい?」

「まあ、いいけど……」

 そうか……、俺と二人になるのは嫌なのか。

「じゃあ、今日天気いいし中庭で食べよっか」

「いいね、そうしよう!」

 麗夢は杷子の腕を組んで先に歩き出した。

 なんかやけに上機嫌だな、元彼から意味ありげに誘われたのになんでそんなテンションなんだ?

 あいつはあまり気にしてないのか?

 昨日の反応といいあの時のことなんとも思ってないのか?

 どうして……。


 ぐいっ。


「……行くよ」

 こちらを見上げる杷子は、呆れた顔をしていた。

「昨日の二の舞になる気?」

「ごめん、ありがと」

 それから少し歩くと中庭に出た。

「結構人いるんだね。あ、あそこ空いてるよ」

 そう言ってベンチに駆けて行く。

「麗夢はなんであんなにテンション高いんだ?」

「さあ?久しぶりに援祢と話せると思って嬉しいんじゃない?」

 昨日あんなによそよそしかったのにそんなわけ……。

「あんまり、にやにやしてると麗夢にキモがられるよ」

「別にニヤニヤしてないし」

 それに麗夢はそんな事しない。

「あまり麗夢をあの頃と同じだと思わない方がいいんじゃない?」

「そうやって地の文を読むのやめて欲しいんだけど?」

「援祢がわかりやすい顔してるのが悪い」

「してないし」

「二人とも仲良いんだね」

「「そんな事ない」」

「ふふっ」

「さっさと食べるよ、昼休みが終わっちゃう」

 ベンチに座った3人は、しばし無言で食べ始めた。

 少しすると麗夢が「援祢は何か話があったんじゃないの?」と聞いてきた。

 杷子も食べる手を止めてこちらを見る。

「実は……」


 待て。


 今更だけど一年近く前に別れた元カノに、別れた理由聞くのってキモくないか?

 あっちからしたら、別れた時のことを忘れた元カレに説明するって意味わかんないだろ。

 どうしよう。


「祢援ちょっとこっちきて」


 僕が何も言い出さずにいると、杷子に少し離れたとこまで引っ張られた。

「何モジモジしてんの?」

「いや、改めて我に返って今の状況を考えると僕だいぶキモくないかと思って」

「はぁ……、確かに普通はキモいけど、今の麗夢の状態ならそんなことないから大丈夫」

「本当に?」

「本当本当、たとえキモいと思われても私がいい感じにフォローするから」

「分かった」

「ほらいけっがんばれっ」

 とんっ。

 杷子に背中を押されて麗夢のいるベンチに戻る。

 すぅ……はぁ……。

「今日は麗夢に聞きたいことがあって昼食誘ったんだ」

「ん、なに?なんでも聞いて」

「あのさ……俺ら中学の時付き合ってたじゃん」

「うん、そうだね」

「なんか俺、変な話だけどその時の記憶がなくてさ……」

「え?」

「だから別れるに至った経緯が分からなくてさ……」

「そうだったんだ……」

「だからその、教えてくれないかな?あの日の出来事を」

「……」

 麗夢は残りの弁当を掻き込んで、飲み物で流した。

「あの日はね、全部あたしが悪いんだよ。だからごめん」

「いやそんな……」

 否定しようと思ったけど言葉が詰まってしまう。

「あたしがあの最悪なタイミングで目を覚ましてしまったから」

「……ん?目を覚ます?」

「そう……、今あなたの目の前にいるあたしはあなたと付き合ってた私じゃないの」

「え?」

 そんな、麗夢が二人いるわけじゃないんだから。

「あたしはもう一人の二星ふたぼし麗夢なの」

「いや、え?もう一人?麗夢……何言ってるの?じゃあ今僕の目の前にいるのは……」


「あたし、二重人格なんだ」


「…………え?」

「あたしはあの日に目を覚ましてしまった、祢援と付き合っていた私とは違う、もう一人の二星麗夢なの」


「…………っ」


 僕がすぐに話を飲み込めなくて黙っていると、麗夢がゆっくりと語り始めた。

「あの日の私は、二度と家に帰らないつもりで出かけたらしいの……」

「どうして?」

「私は昔から父親に虐待を受けていてね、普段は仕事であまり帰って来ない父親がゴールデンウィークでずっと家にいたの」

「そんな話……」

 聞いたことがない。

 杷子を見ると首を横に振った。当時は彼女も知らなかったらしい。

「当然よ、身内以外に気づかれないように常に気を張ってたんだから。もちろん一年半以上付き合った彼にも」

「ごめん」

「それは何に対しての謝罪?あんたが謝ることなんて何もないでしょ。軽々しく謝らないで」

「ごめ……そうだよな」

 彼女からしたら上辺の話だけで、自分の気持ちを分かった気で謝られたと感じてしまったんだろう、これは僕が悪い。

「きっとそのストレスで私が出てきたんだろうね」

「君が出てきて以来、えっと……」

「君が付き合ってた麗夢は今まで通り麗夢って呼んであげて、その代わりあたしのことはらむむって呼んで♡」

「お、おう……」

「あたしが出てきてからは、一回も出てきたことはないよ。まだ出て来ないのか、もう出て来ないのか分からないけどね」

「そうなんだ……」

 もう麗夢には……。

「らむむが祢援に手を出したら怒って出てくるかもね」

「きゃー♡やめてよ杷子ー」

 杷子の一言で空気をひっくり返された。

 そんなんで出てくるのか?

「どうしよっか祢援、試してみる?」

 それが本当だったら……。

「た、試してみたい」

「……。そんなんじゃやーだ」

「え?」

「それはサイテーだよ、祢援」

「え?」


 キーンコーン、カーンコーン。


「やばっ、5時間目始まっちゃう」

「残念祢援、弁当食べられなかったね」

 僕の膝の上にはまだ半分以上残った弁当があった。

 二人ともいつの間に食べ終わったんだよ。


「祢援昼休み何してたの?」

「なんで?」

「いや、昼休み終わったのに早弁の顔してるから」

「濃い昼休みだった」

「そっか」

「ごめんて笑真」

 適当に返事したの謝るから椅子蹴らないで。

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