表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死獣神~誕の書~  作者: 天馬光
5/23

希望の光(2)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。

 いじめに耐え続ける毎日を送っていた龍は、正人らに今まで言えなかった事を代弁してくれた未来に心から感謝し、昼休みに彼女を体育館裏に呼び出して礼を述べたが、未来は当たり前のことをしただけだと、見返りや恩を一切求めなかった。


 それだけに龍は、何故彼女が自分を弁護してくれたのかわからなかった。

 状況を把握できずに首を突っ込んだのではとも考えたが、未来はちゃんと、自分の正義感に基づいて行動しているため、余計に謎が深まるばかりだった。


「あの、叶さん。どうして僕を庇ってくれたの?」

 あまりの難解さにお手上げになった龍が答えを求めると、未来は自分も親と離れ離れで、彼の気持ちがわかるからと答えた。

 もっとも、彼女は龍と違い、捨てられたわけではないのだが。


 彼女の両親は信博(のぶひろ)聡美(さとみ)といい、兵庫の一流大学で癌の特効薬と遺伝子の研究をしている科学者である。

 ノーベル賞に最も近い教授夫婦と世間的にも有名な彼らは、その名声のせいか、私生活も上手くいってると思われがちだった。

 だが、実際はその逆で、研究に時間を費やす分、未来のことはいつもほったらかしで、一般家庭のような親子の楽しい思い出というものは何一つ無かった。。


 予想外の家庭環境を聞いた龍は、彼女に同情し、強く共感した。自分も才能重視の親のせいで、辛い思い出しか無かったから。


「……そんなひどい親を嫌いになったりしないの?」


「そう言う龍君は?」

 未来に聞き返された龍は、親の顔を思い出し、


「僕は嫌いだよ。才能が無いからって子供を捨てるなんて間違ってる。いつかは反省して戻ってくるかもしれないけど、それでもやっぱり許せないよ」

 と、苦虫を噛み潰したような顔をして答えた。

 それを聞いた未来はその辛さを察することはできたものの、彼より恵まれてる分、やはり少しだけ考え方が異なっていた。


「ひどい親だね。でも、私は自分の親が好きだよ」


「え!? どうして?」


「だって、もし研究が上手くいったら『私は叶教授の娘です』って胸を張って言えるし、信じてるから。いつかちゃんと家族になれる日が来るって」

 自分とは違い、親を信頼している未来の言葉を受けた龍は、彼女が眩しく見えた。


「だから、青山君。最悪許せなくてもいい。でも、信じようよ。家族に戻れるっていう可能性を」

 そう言われた龍は、彼女の示す可能性を信じてみようと思い、自信なさげではあったが頷いた。


 これを機に未来と親しくなった龍は、彼女のおかげで心に光が灯り、前を向けるようになった。

 龍を変えたそれは、今まで親が仕方無く送ってきた金よりも遥かに心強く尊いもので、それをもたらした未来の存在は彼にとって、まさに真の希望の光となった。


 だが、そんなかけがえのないものを得た龍と未来を見つめる不気味な影がいたことを、この時、2人はまだ知る由もなかった………………

 もうお気付きかもしれませんが、今回の作品のキーパーソンは、ヒロインでもある未来です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ