闇夜の使者(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋の始まりの物語。
平成11年12月24日。未来が転校してきてから半年経ち、龍は本来の性格と楽しい毎日を取り戻していた。
あれから龍は未来の助力を得て、自らの手で徐々にいじめや無視を減らしていき、今ではそれらが無いどころか、正人やクラスの者達とも仲良くなっていた。
それもこれも全て、大親友になった未来のおかげだと感じていた龍はこの日の午前10時頃。日頃のお礼をしようと、プレゼントを片手に彼女の家を訪れた。
未来の家は庭付きでそこそこデカく立派なものだったが、龍は見慣れてるせいか、躊躇せず呼び鈴を鳴らし、ウキウキしながら待っていた。
彼女の驚く顔が早く見たい。そう思いながら待っていたが、出てきた未来の表情は悲しみに満ちていた。
いつもと違う様子の彼女に龍が面食らっていると、未来は龍に抱きつき涙を流した。
「ど、どうしたの? 未来さん。いったい何があったの?」
「龍君……お父さんとお母さんが…………死んじゃった…………」
突然の訃報に龍は仰天した。ノーベル賞候補とまで言われた彼女の両親の死は、龍にとっても世間にとっても衝撃的だったが、話はそれだけでは終わらなかった。
家に入りテレビをつけると、そのニュースがすでに報じられていた。
それによると、昨夜未明に彼らが勤める大学の遺伝子研究室で火事があり、焼け跡から未来の両親と助手達の焼死体が発見されたらしい。
マスコミは実験中の事故だと断定していたが、出火当時その場にいなかった助手の・敷島京介や手塚賢助いわく、警察は遺体に外傷がある点から、事件性が高いと見ている。
つまり、未来の両親は何者かの手によって殺されたのだ。
ニュースと未来の話からそれを知った龍は、現実味の無さから言葉を失ったが、犯人の動機だけは容易に想像できた。
「もしかして、犯人の動機って叶教授の研究データ?」
「うん。おそらく。『この研究は善人が扱えば、世界の役に立つ。だけど、悪人が手にしたら、戦争の火種になる』ってお父さんが言ってたぐらいだから」
未来から語られた信博の言葉に龍は、間違いなく悪人の手に渡ったと確信した。
そんな気分になった龍が、悲しむ未来に笑顔でプレゼントを渡せるはずがなかった。
『誕の書』はここから急展開を迎えます。
叶教授の研究の正体については後ほど。




