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バーモンと滋の説得(後編)

「まさか、またUWの隊員が一人増えるんじゃないだろうな。えぇい、面倒なことだ。さあ君、私と組みたいなら組みたいで、さっさと態度をはっきりとさせてもらおうか。私ならもういつでも構わないぞ。君を仲間と認めてやる。上手く私のために働いてくれれば、君の才能を開花させてやることだってできるかもしれない」


 甘言を使って改めて飯塚の気持ちを引き戻そうとするのだが、


「本当に信用して、いいんですか? 彼はあなたのことを悪人と呼ぶ。そしてあなたは仲間と決別しようとしている。そんなあなたをもう一人の仲間は、いけない、駄目だと注意している。あなたの仲間はいったい誰なんですか? 俺がそちらについて、我々二人以外は敵という状況になるという可能性はないのですか?」


 問い返されてドランクはムッとする。四方を見れば、いつの間にか彼一人が孤立無援。感情一辺に物事を決め、打算のみで義理を忘れれば、これも当然というもの。過去を振り返っても、彼に付き従う奇特な人間はバーモンのみ。つまりは生来そういう性分である。そのバーモンすらも、仲間というより都合の良い部下であると見ている。そんな彼にすれば、仲間は誰との問いも、実に珍奇に聞こえて、珍奇故に珍しく彼を思い悩ませる。


「ドランクさん? 大丈夫ですか?」


「バーモン、貴様は俺の仲間か?」


 凄んで聞くが、厚情のバーモンは、


「はい、私は仲間ですから、ですから無茶な考えだけは起こさないでください」


「ふん、そうだ、貴様は仲間だ。仲間故に私と共にいる。だが、それ以外はどうだ、誰が仲間だ?」


「冷静になりましょう。何も敵ばかり作ることもないはずです。考えようによっては皆味方にだってなるはずです」


「ほう、では誰がどういう了見で仲間だというのだ?」


「いや、それは… それはつまり、ドランクさん自身が…」


 バーモンはそう言いかけて口を噤んで肩を落とす。彼の情よりも、ドランクの我の強さが勝るようだ。


「やはりあなたには味方がいないようですね。その方だって本当にあなたの為をと思っているのに、その心を汲み取ろうともしない。やはり売ってくれという話はやめておきます。仲間になるという話も当然なしです」


 飯塚はいつになく毅然として言う。


「ほう、随分とわかったようなことを言ってくれるじゃないか。それじゃあ、素直にキットのすべてを返してくれるということかな?」


「いや、それも断ります。あなたに返すことがとても正しいことのように思えない。俺は戦ってでもこれを死守しますよ。それは別にあなたに限らない。これらアイテムを俺から奪おうとする人はみんな敵とみなします」


「フン! それでは君もまた孤立するだけだろうに」


 さて、どう頭の中が変ったのか、飯塚はドランクの皮肉にも聞く耳を持たず、しかも彼の周りでバットやボール、鍋や石鹸等が宙を舞い始める。おまけにその道の手練のような目付きをしている。先ほど恋の悩みを口にしていた姿とは別人である。


「生意気なことを言う。なら力尽くでねじ伏せて奪ってくれる!」


 喧嘩を売られたと思い込むドランクもまた、手に赤い魔力を纏わせると、飯塚の防衛本能がアイテムを動かす。どれだけシールを仕込んでいたのか、部屋の色んなものが飛来して、ドランクに次々直撃させるのだ。


 まさかの一方的な展開。そのうち包丁まで飛んでくる。そればかりは危険と、ヴァイスが横やりを入れてシールごと刀で両断。介入はそこまでにして彼は滋たちと和室に避難する。と、今度はその部屋の畳が一枚宙を浮いて飛んでいく。フラフラのドランクを畳がブッ叩いて吹っ飛ばすと、窓の外、遠く空へと追い払ってしまう。


「覚えていろよ!」


 捨て台詞が聞こえると、あの男ならば確実にまた戻ってきそうだと、その場の誰もが思ったとか。



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