真偽看破
「いやースッキリしたよ、契約上僕らが手をあげたら問題になっちゃうからね。安心してよ処理はこちらでしておくからさっきの魔獣にやられたことにしておくよ」
護衛のリーダーらしき人が満面の笑みでわたしたちに話しかけてきました・
どうやら護衛の人達にも嫌われていたようですねそうでなければこうも清々しい笑顔などできませんもん。
「良いんですかそれだとあなた達がまずいんじゃないですか?」
「心配してくれてありがとな、だが大丈夫だあんなイレギュラーな魔獣が出たんだむしろあいつが生き残っているんだ多少は経歴に傷がつくくかもしれないが致命的とまではいかんしギルドも大目に見てくれるだろう」
「だけどハゲデブバカ親父が生きてると問題になりそうだね殺しておく?」
「ハゲデブバカ親父か、だが殺したほうが面倒だそれに安心してくれあいつはギルドでも嫌われているから何とかなるさ」
どれだけ嫌われていたのですかねあの商人は。
ですが任せられるなら任せたほうが面倒はないですね。ここは甘えておきましょうか。
「それでしたらわたしたちは先に行かせてもらいますね」
「ああ、君たちもこの先のシルキアに向かうんだろなら何かあったら冒険者ギルドで僕達疾走の刃を頼ってくれ。戦闘面じゃ無理だろうけどそれなりに街には詳しいし人手が足らない時は任せてくれ」
「ええ、その時は頼みます」
商人とのコネは無理でしたがこの人達に恩を売れたんでとりあえずよしとしますか。
「僕らは馬車を起こして行くから今日の夜にはいると思うから。さあ目を覚まさない内に行ったほうが良いそれとこれは助けてもらったお礼だよ」
そう言って渡された袋の中には金や銀の硬貨がいくつも入っておりずっしりとした重さを感じました。
これでお金の心配もなくなりましたね。では街に行きますか。
「ありがとうございます。でわ行きましょうかパパ」
「ああ」
そうして冒険者と別れわたしたちは先へと進み出しました。
「ほえーでかいですね」
冒険者と別れてから数時間歩き続けた結果、大きな城壁を纏った都市シルキアに到着することができました。
シルキアは国境付近の街で他国からの商人が集まる交易都市でありこの聖神教が治める領土の中で首都を除けば一番大きな街だそうです。
何故知っているかと言うとシルキアの街の名を聞いてグランがシルキアを知っていたからです。流石にグランでも有名どこの街くらいは把握しているのですね。
「さて街に入るのに何か必要なものってあるんですかパパ?」
「いいや普通は税や身分証が必要なんだが聖神教の治める地では必要ないとこが多いと聞いたことがあるなその代わり寄付を求められたり聖神教徒の真偽官からの質問に答えなければいけなくて回答次第では聖神教騎士に捕まると聞くぞ」
ほー完全に自由にとはいかないんですね。でもうまいですね下手に一律の料金にするよりも貧しい人は少なく裕福な人は多く払うことができるんですから。
まあ払わない人もいるでしょうが裕福な人は基本見栄っ張りでしょうから一般の人よりも払うでしょうし商人なんかは信用にも関わってきますから払うでしょうね。
真偽官は嘘を見破って害ある人を見つけるんでしょうね。聞くと聖神教は真偽看破スキルを覚える秘技を保有していて都市に配置しているそうです。
ちなみに不正防止で定期的に真偽官にも真偽看破スキルにる調査が行われているそうです。
「じゃあ俺らも並んでさっさと入っちまうか」
「そうだね、楽しみだな」
期待膨らませながら列に待つこと十数分やっとわたしたちの番が回ってきました。
まだ大人になりたての若い青年に連れられ城壁の中に連れて行かれました。
連れられた城壁の中は同じ扉が通路の左右に幾つか配置されていてその中で質問が行われるそうです。
入った部屋は机と椅子だけの簡単な作りで警察の取調室のようです。
「ではお名前をお願いします」
「フェイスだよ」
「グランだ」
そして名前が記入されました。
「それでは手を出して下さい。そしてわたしの質問にははいかいいえで答えて下さい」
先に座っていた真偽官の人は白い髭が特徴的な初老ぐらいのおじいさんでした。
真偽看破スキルの使用条件は相手に触れていることのようで日常で悪用し難いようになっているのですね。答えがはいかいいえかは単純に精度を高めるためでしょうかね。
先にわたしが手を出し質問に応えます。
「では失礼します。あなたはこの都市で法に触れることしないと誓えますか?」
「はい」
「あなたは以前犯罪を犯したことはありますか?」
「いいえ」
「はいありがとうございました。これで質問は終了です。ようこそシルキアへ」
どうやら簡単な質問だけなようですね。しかし真偽看破スキルも甘いですね普通なら馬車襲撃は犯罪でしょうけどあれはアルスがしたことなのでわたしじゃないですし。
だいたいいざとなったら魔眼で洗脳か記憶書き換えで乗り切ろうと考えてましたし。
次にグランの番でしたが最初の質問は良かったのですが最後の質問に問題がありました。
「あなたは以前犯罪を犯したことはありますか?」
「はい」
正直に答えたので真偽官の視線が厳しくなりましたが捕まるようなことはなかったです。
てかグランが犯罪犯してないわけ無いですよね。
「その罪を後悔し償いましたか?」
「いいや法の上では犯罪を行ったが後悔も未練もない俺らにとってあれは正しい行為だった」
「……最後の質問は街に入るのにそこまで関係はありません過去に犯罪を起こしていても反省する機会をくれ贖罪後慈悲深い神はその罪を許すでしょうですがあなたは何か覚悟を決めて事を行いやり遂げたようですね。最後に問いますあなたはこの地で我らが神を否定しますか?」
「いいえ」
「では質問は終了です二人共シルキアを楽しんでいって下さい」
こうしてなんとも歯切れの悪い真偽看破は終了しわたしたちはシルキアへ入ることができました。
もう少し話をどうにかできる気がするんですけどね。
真偽官に名前を言う描写を追加しました。