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東方物語集  作者: Ra
紅色の歴史
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紅月と七色の宵闇 5

「フランー?フランは何持ってくのー?」



そう言いながら彼女はベッドの上にいる妹の隣に腰掛ける。

自分と同じ妹の金色の髪をなんとなく見ながら「あぁ自分たちは姉妹なんだ」だなんて時々自覚する。



「やっぱりぬいぐるみかなぁ…それとお洋服ばっかりだよ」



姉妹で考えることはやっぱり同じだったようだ。

結局姉妹で服の趣向の話をして、ただ駄弁るだけ。いつもどおりの彼女たちの日常。

吸血鬼の娘たちとは言え、人間の子供達と何ら変わり無い彼女たちの会話は彼女たちが吸血鬼であることを忘れさせるほど微笑ましい。




そんな彼女たちを人間たちは忌み嫌った。

今回彼女たちが引っ越す原因は人間たちが吸血鬼狩りを始めたからなのである。



吸血鬼たちは人間を襲っても、殆どの吸血鬼は人間が死ぬほど血液を飲むわけではない。

吸血鬼たちが最初に現れた四世紀頃、人間たちと吸血鬼たちは共存関係にあった。




吸血鬼の食事の元になる血液を人間側が提供し、吸血鬼達は人間にそのお礼として高価なものを人間たちに渡すという共存関係にあった。その高価なものとは、吸血鬼たちが嫌う銀である。

人間にとっては物々交換のようなものであったが、吸血鬼にとってはある意味一石二鳥の取引であった。

人間側からすれば銀製の物は「吸血鬼のグッズ」という名目で大変貴重で、大変高価な扱いをしたのだ。



吸血鬼は誇り高いが故に、食料を提供してくれる貧弱な人間にも敬意を払い礼儀正しく接するものが多かったのだ。

人間達もわかっていた。人間より吸血鬼達の方がずっとずっと遥かに強力であるということを。



しかし時が経つにつれ一部の人間がそれを恐れるようになり、吸血鬼に対する態度は次第に余所余所しくなっていった。

また中世ヨーロッパでは銀製の食器が王侯貴族達のような金持ちの間で多く使われるようになった。銀は毒と反応し変色をするため、銀食器を使うことにより毒殺を防ぐことができるからだった。


銀の需要が上がり吸血鬼を恐怖したという二つの理由によって、人間たちはこの共存関係を自分たちから壊し始めた。



とはいえ吸血鬼側も仲間が殺られているのを黙って見過ごすわけにはいかなかった。

吸血鬼たちもまた人間たちを襲うようになった。脅迫に始まり殺傷、婦女暴行などさまざまな方法で人間を虐げようとした。



それが人間たちにとって更なる火種となった。そうして本格的に吸血鬼との争いは激しくなっていった。

人間たちはクルースニク、つまり吸血鬼ハンターを人間たちは用意した。

また婦女暴行によって吸血鬼と人間との間に子供も生まれ、その子供達はダンピールと呼ばれるようになった。

最初は人間から忌み嫌われていたのだが吸血鬼を倒す力を持っている事が分かり、人間たちとの取引を行うようになった。陵辱によって半人半妖という宿命を背負わされた自分たちを産みだした吸血鬼たちを憎んでいたことから最終的に人間側についたのであった。



それ故にクルースニクとダンピールによって組織された吸血鬼ハンター達と、吸血鬼たちは15世紀から17世紀の間ヨーロッパを中心に激しく争ったのである。




それ故に吸血鬼の名家、スカーレット家は分家を本家で受け入れるようにしたのだ。スカーレット家の分家を本家に集中させ、吸血鬼たちを存続させるために。

彼女たちはスカーレット家の分家だった。彼女たちの家の付近まで人間たちは侵攻していた。そして急遽彼女たちも本家に集合がかかったのである。だから引越しをすることになったのだ。



そんな事情を知る由もなく、ただ姉妹で談笑していた二人を母親が遠くから呼ぶ。その声を聞いて談笑していた二人は部屋を後にしたのだった。

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