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12.湖の町2(湖の異変)

楽しかった昨夜と異なり何か異変が起こっています。

女神様たちとのわぁわぁ騒がしい夕食の後、

貸切り露天風呂とウサナで一気にみんな出来上がった。

みんな上気した顔で部屋に戻ったところで

アツシは新作スイーツを披露した。

主な素材はこの世界の物を使ってのものだった。

「チーチアイスクリームのフルーツパフェ」

「チーチアイスクリームのチョコレートパフェ」


これに使われるチーチアイスクリームは、

火の妖精さんがじっくりと

チーチを温めてトーサを入れて甘味を追加。

若干チーチ臭さが目立つため、

少量のバニラエッセンスを加えて匂いを消す。

そのチーチ溶液を入れた金属製の筒を

氷の妖精さんにゆっくりと冷やして貰いながら

アツシがずっと長時間回して作った力作だった。


土妖精のグリンさんに作って貰ったパフェ型容器を並べて

氷妖精さんに容器を冷やして貰い

底へカリカリに焼いたスライス蒸しファンを敷いて、

その上へチーチアイスクリームを大きく丸く削って置いた。

その各パフェ用容器を女神様やグリンさん、爺ちゃんの前へ置いた。

近くのお皿にはこの世界の果物

(アプリ、オランゲ、ストベロー、パーナなど)

を色とりどりに並べている。

隣の2つのコップには、

火の妖精さんが溶かしたチョコと

魔蜂ビーが仲間と集めたミエル(蜂蜜)を入れている。

「これで皆様専用のお好きなパフェをお作り下さい」

「「「『きゃー、すごーく、おいしそう・・・』」」」

火と水と風と氷の妖精さんも興味津々で集まって来ている。

いつも料理ではお世話になっているからお礼のつもりで

彼女達用に作っていた小さい容器へ盛って一人一人へ渡した。

彼女達は嬉しいのか、アツシの周りをクルクルと飛んでいる。


「妖精さんの協力は、もうわしよりもアツシの方が上じゃなぁ」

『ノリリンは、指示の説明が大雑把なのよ。

 アツシ君は、じっと見てくれながら力の調整を教えてくれるの。

 だから私たち妖精は、色々な力の使い方を覚えたのよ』

「確かにわしはそうじゃのう。でもそんな細かい事をわしはできんのう」

『だからノリリンは、それでいいんじゃない?

 アツシ君はアツシ君、ノリリンはノリリンなのよ』

「グリンちゃんはそういうが・・・

 妖精使いのわしとしては何となく寂しいのう」

「爺ちゃんがいるから彼女達はいてくれるんだよ。ありがとうね」

「そ、そうか?ならいいんじゃ。まぁアツシがんばりなさい」

「うん、妖精さんの笑顔は爺ちゃんのおかげだよ」

「アツシや妖精さんが喜ぶならそれが一番じゃ」


翌朝、爺ちゃんとこの町にギルドへ顔を出した。

実は朝起きた時から昨日までの町の雰囲気が

がらりと変わり殺伐としていることに気づいたからだった。

ギルド受付には困った顔をした受付嬢がいる。

「いらっしゃいませ。湖の町のギルドでございます。

 えーっと、ノリオ様とアツシ様。どんな御用ですか?」

僕と爺ちゃんがギルド証を出しても、

ギルド嬢は心ここにあらずの風情でギルド証を全く見ていない。

「わしらでこの付近で何かクエストでもないかと思ってきたのじゃが・・・」

2人をジロジロと上から下まで見て、

「うーん、今のところ、お爺ちゃんとボクのコンビに用は無いわ」

「この前来た時の受付嬢とは違うんじゃが・・・ミズキさんは?」

「ああ・・・あの人は、玉の輿で先月この町を出て行ったわ。

 えっ?なによ。私じゃ不満なの?悪かったわね。

 この町は大変なことになっててあなた達のお世話は出来ないの」

「何があったんじゃ?」

「お爺ちゃんとボクじゃあ聞いても無駄だから、今日は帰ってよ。

 ただでさえ冒険者がみんな嫌がって、この町を離れてるんだから」

「そう言わずに話すだけ話さんかのう、何かできるかもしれんしのう」

「・・・はぁ・・・わかったわよ。

 無駄な時間だけどどうせヒマだから話してあげる」

この失礼な受付嬢の話では、湖に化け物が他から来たらしい。

昨夜、龍みたいな魔物が遠くの方から飛来して何かを湖へ落としたそうな。

今朝から湖の色が黒く汚れて漁をしても一切魚が取れなくなって困っている。

湖の中への探索は、誰もクエストを受けないらしい。

「どうせ聞いただけで断るんでしょ?・・・はぁーあ・・・」

「そのクエスト受ければいいんじゃろ?オッケーじゃ」

「???お爺ちゃん、大丈夫?もしかして・・・頭が・・・」

「爺ちゃんは大丈夫ですよ。僕達がクエストを受けますよ。

 調査だけですか?それとも退治までですか?」

「あのーボクちゃん、わかって言ってる?

 もしかしたら大きな魔物かもしれないのよ」

「まぁまぁ、では僕達がクエストを受けましたからね」

僕はギルド嬢の手からクエスト票をもぎ取って足早にギルドを出た。

「しかし、失礼なギルド嬢だったな。

 あんな女のクエストなんぞ受けたくないが・・・」

「そうだね。でもこの町の人達が困っているし、

 この美しい湖が魔物に汚されるのは許せないから」

突然二人の脳裏へ湖の女神レイク様の声が響く。

『アツシ君。ノリリン、助けて・・・』

「レイク様、どうしたんじゃ?

 すぐにアツシと二人で助けますからちょっと待ってちょ」

「レイク様、声が少し弱いです。大丈夫ですか?」

『湖の汚れで身体の力が抜けてるの・・・早く助けて・・・』


「アツシ、一刻も早く行くぞ。レイク様が危ない」

「わかったよ。じゃあ先ずは船着き場まで行こうよ」

「そうじゃな、ほれ」

一瞬のうちに船着き場に立っている。

湖の水の色が、昨日青い色とは打って変わって黒く変色して、

湖面には濃い魔素の生臭い匂いが充満している。

ここまで魔素が濃いと生物は生きていけないため魚影は一切見えない。

「爺ちゃん、風と水の妖精さんに頼んで、

 僕達二人の周りの空気と一緒に丸く球にして水の中に入れないかな?

 そうすれば水の中でも息ができるし攻撃も出来るでしょ?」

「アツシ、ナイスアイデアじゃ。じゃあ風と水の妖精さんよろしくのう」

僕と爺ちゃんは、フワリと浮かんで湖へと入って行った。

黒く濁った水に入るとドロリとして気持ち悪い感じがする。

水の妖精さんの示す方向へ向かうと、

大きな海龍みたいな魔物が金色に輝く球を身体で守っている。

近づくと金色の玉の中に、横になっているレイク様の姿が見える。

その海龍が威嚇している先には、赤黒い大きな怪物の頭が見える。

湖の底に蹲った怪物の姿は濁った水のためよく見えない。


「爺ちゃん、あの化け物が良く見えるように空中へ浮かせられないかな」

「ああそれは大丈夫じゃ。ほれ」

とたんに大きな丸い頭を持った怪物が、

その巨大な身体がじわっと湖底から浮き上がっていく。

その化け物は必死で湖底へ戻ろうとするもそのまま浮き上がっていく。

やがて湖面から身体を出していく。

その化け物は、本来海に棲む筈の巨大魔蛸だった。


名前:スルクタンテ

種類:海棲生物★(タコ)

用途:食用★そのままでも煮ても焼いても美味しい。

産地:サイショ大陸の近海 ※現在の大陸


ロマン湖湖水に含まれる非常に濃い魔素の原因は、

海棲生物が淡水湖に落ちたため、浸透圧で身体の細胞へ水分が入りこみ、

その代わりに深い海底で貯めていた体内の魔素が外へ滲みだしたためだった。

「爺ちゃん、あのタコの足を1本だけ切れる?」

「ああ簡単じゃ、ほれ」

とたんに巨大魔タコの足が1本千切れ飛んで、

僕の方へ跳んで来る。その巨大な足を指輪へ格納する。

「タコの足はすぐに再生されるから心配いらないんだ」

「全身細断しなくていいのか?」

「大丈夫、料理に使う分だけだから」

「それでこれからどうするのじゃ?」

「海の方向ってどっちなの?」

「海へ一番近い所ならこっちの方向かのう」

「じゃあそっちへの方向へそのタコを飛ばしてよ」

「わかった。海までとばせばいいのじゃな」

「うん、ただし沖の方だよ。船とかいないか注意してね」

「色々と注文が多いのう。

 ふーん、船は一隻もいないのを確認したぞい」

「じゃあそこにこのタコを飛ばしてあげてよ」

「細断したり一気に燃やして殺せるけど本当にいいのか?」

「だって海からこの湖に連れて来られて、

 このタコも困ったんじゃないかな?」

「確かにタコは何も悪い事はしていないからのう。

 ただ魔素が湖の水へ染みでただけで・・・」

「でしょ?だったらタコさん殺すの可哀想じゃん。海へ返してあげようよ」

「わかった。何でも殺すのはいかんな。すまんな。

 ついついすぐにやってしまう癖がついてしまったのじゃな、

 今後はアツシを見習って、気をつけなければのう」

「じゃあ僕は湖の魔素を取るから僕を湖の上空へ連れて行ってよ」

爺ちゃんと僕は、ロマン湖の上空へ上がっていく。

それから僕は、食材から魔素を抜く要領で湖水から魔素を抜き始めた。

抜いた魔素は僕の影の世界へ集まり、魔物の仲間たちの栄養になる。

しばらくするとロマン湖の湖水が、元の青い綺麗な色へと戻っていく。

『アツシ君、ノリリン、ありがとうね。いつかお返しするね』

「この美しい湖を守るためだったからお返しは不要ですよ。ねえ爺ちゃん」

「そうじゃよ。レイク様、お返しは不要じゃ。

 またいつでも顔を出して下され」

『グスン、この湖を守ってくれて、二人とも本当にありがとうね』

『ノリリン、アッツン、最高の活躍だったわ。レイクを守ってくれてありがとう』

『ノリリン様、アツシ様、妹を助けて頂きありがとうございました』

『レイク様をお助け頂きありがとうございました』

と三人の女神とグリンさんからお礼の言葉を賜った爺ちゃんとアツシだった。

なぜ海の魔物が内陸部の湖へいたのか・・・その前の黒い大きな影の存在が気になります。

とにかく女神様達のアイドルのレイク様が助かりほっとする爺ちゃんとアツシでした。

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