第15話 全日本U-15サッカー選手権大会ー真空心
全国大会の華やかな喧騒が渦巻くスタジアム通路で、異変は一瞬にして極限へと達していた。
「おい……湊? どうしたんだ、顔色が真っ白だぞ……?」
岩田くんの声が聞こえる。
聞こえている。
けれど、意味として頭に入ってこない。
周囲の音が遠かった。
観客の歓声も。
スタッフの足音も。
太陽くんの声も。
全部が厚い壁の向こう側にあるようだった。
僕はユニフォームの胸元を握りしめた。
指が震えている。
息が浅い。
吸っているはずなのに、身体の中に空気が入ってこない。
目の前が暗い。
いや。
暗いというより、色がなくなっていた。
白い照明も。
緑のピッチも。
人の顔も。
すべてが灰色に近づいていく。
そして、その灰色の奥から、赤いものだけが浮かび上がってくる。
炎。
黒煙。
崩れる天井。
熱。
あの日の匂い。
胸の奥が締めつけられる。
足に力が入らない。
僕はその場に崩れそうになった。
その瞬間――
「――湊!」
強い腕が身体を支えた。
倒れなかった。
誰かが僕の肩と背中を支えている。
「西野、頼む!」
「はい!」
聞き慣れた声だった。
鷹野さん。
そして、西野さん。
二人がいた。
西野さんが僕の背中に手を当てる。
「湊、聞こえるか」
僕は答えられない。
「大丈夫だ。今は何も考えなくていい」
声が近い。
「ゆっくり吐こう」
僕は息を吐こうとした。
うまくできない。
「そうだ」
西野さんの声は、いつもの練習中と同じだった。
静かで。
焦らせない。
「もう一度」
吐く。
少しだけ空気が抜けた。
「それでいい」
背中を一定のリズムで撫でられる。
その感覚だけを追った。
ここにいる。
今は、ここにいる。
火事の中じゃない。
そう思おうとした。
でも、頭の中ではまだ炎が燃えていた。
「剛、太陽、陸」
鷹野さんの声がした。
「大丈夫だ。湊は私たちが見る。お前たちはロッカールームへ戻れ」
「でも……!」
太陽くんの声が震えている。
「湊が……」
「大丈夫だ」
鷹野さんの声は強かった。
「お前たちがここに残って動揺したままピッチに立てば、それこそ湊が困る」
「……」
「神谷監督にも伝える。だから、今は自分たちの準備をしろ」
しばらく沈黙があった。
「……湊」
太陽くんが僕を呼んだ。
僕は顔を上げられなかった。
「あとで……」
その言葉の続きを、太陽くんは飲み込んだ。
「……いや。なんでもない」
足音が遠ざかっていく。
岩田くんも。
陸くんも。
三人の気配が消える。
残ったのは、僕と鷹野さんと西野さんだった。
「行こう」
西野さんが言った。
「医務室まで移動する」
僕は自分で歩こうとした。
けれど、一歩目に力が入らなかった。
鷹野さんが支えてくれる。
情けない。
そう思った。
でも、その感情さえ、うまく掴めなかった。
◇
医務室は静かだった。
スタジアムの外から聞こえる歓声も、厚い壁に遮られている。
僕は椅子に座った。
西野さんから渡されたマスクを口元に当てる。
「無理に深く吸わなくていい」
西野さんが言った。
「まず、ゆっくり吐く」
僕は言われた通りにした。
吐く。
少し休む。
また吐く。
何度か繰り返しているうちに、身体の震えが少しずつ収まっていった。
指先に感覚が戻ってくる。
視界の歪みも薄くなっていく。
心臓の音も、少しずつ普通に近づいていった。
どれくらい時間が経ったのかは分からない。
数分だったのかもしれない。
もっと長かったのかもしれない。
「……落ち着いたか、湊」
鷹野さんが聞いた。
僕はマスクを外した。
「……はい」
声が出た。
さっきよりは普通だった。
「呼吸は?」
「大丈夫です」
「苦しくないか」
「もう、大丈夫です」
鷹野さんは僕の顔を見た。
西野さんも何も言わずに僕を見ている。
僕は二人の視線を受けながら、少しだけ頭を下げた。
「……すみません」
「謝らなくていい」
西野さんがすぐに言った。
「でも――」
「謝る必要はない」
もう一度、同じ言葉が返ってきた。
「身体がそうなっただけだ」
「……」
僕は黙った。
身体がそうなった。
その言葉が、妙に残った。
僕の意志ではなかった。
止めようとしても止まらなかった。
それなのに、僕は自分を責めていた。
弱いから。
集中できなかったから。
全国大会の直前なのに。
こんなところで。
僕は、膝の上に置いた手を見た。
もう震えていない。
「……ご迷惑をおかけしました」
今度は、さっきよりはっきりと言った。
鷹野さんが少し眉を寄せた。
「湊」
「はい」
「今日の試合は、無理に出なくてもいい」
その言葉を聞いた。
僕は顔を上げた。
「……いえ」
「まだ何も決めなくていい」
鷹野さんは続けた。
「体調を優先する。試合に出るかどうかは、それからだ」
「大丈夫です」
「湊」
「問題ありません」
自分でも分かっていた。
まだ身体は完全には戻っていない。
胸の奥に、さっきの炎の感覚が残っている。
それでも。
僕は立ち上がった。
足は動く。
スパイクを履ける。
なら、できる。
そう思った。
床に置いていたスパイクを拾う。
紐を結ぶ。
右。
左。
同じ長さ。
同じ強さ。
いつもと同じように結ぶ。
その作業をしている間だけ、余計なことを考えずに済んだ。
「湊」
西野さんが言った。
「本当に大丈夫か」
「はい」
「今の状態で、無理をしているんじゃないか」
「……」
僕は少しだけ考えた。
「分かりません」
正直に答えた。
「ただ」
紐を結び終える。
「試合には出たいです」
「どうしてだ」
僕は答えを探した。
両親との約束。
全国で試したい。
自分がどこまでできるのか知りたい。
全部、本当だった。
でも、そのどれも今は言葉にしづらかった。
「……ここまで来たので」
それだけだった。
「ここで、やめたくありません」
西野さんは黙った。
鷹野さんも何も言わない。
しばらくして、鷹野さんが小さく息を吐いた。
「神谷監督と話す」
「はい」
「ただし、少しでもおかしいと感じたら言え」
「分かりました」
僕は立ち上がった。
その瞬間。
さっきまで胸の奥を埋め尽くしていた恐怖が、急に遠くなった。
消えたわけではない。
そこにある。
でも、手を伸ばしても触れられない場所へ移ったような感覚だった。
代わりに、頭の中が妙に静かだった。
静かすぎる。
太陽くんの顔が浮かんだ。
家族に囲まれていた。
笑っていた。
岩田くんも。
陸くんも。
あの光景を見ると、胸が痛くなる。
でも。
今は、それを考えない。
考えなければいい。
試合だけを見る。
相手を見る。
味方を見る。
ボールを見る。
必要なものだけを見る。
それでいい。
「行きます」
僕は言った。
「もうすぐキックオフなので」
西野さんが僕を見る。
その目には、練習中とは違う色があった。
心配。
戸惑い。
そして、何かを警戒するような感覚。
僕には、その理由が分からなかった。
医務室のドアを開ける。
冷たい空気が流れ込んできた。
スタジアムの歓声が、また聞こえる。
僕はその中へ歩き出した。
◇
少し前。
全国大会当日。
ピッチ脇のトンネルに立ちながら、鷹野は何度目かになる腕時計の確認をしていた。
選手たちのウォームアップは、もうすぐ終わる。
スタジアムには、普段の試合とは比べものにならないほど多くの人間がいる。
観客。
メディア。
スカウト。
関係者。
そして、選手たちを応援する家族。
華やかな舞台だった。
だが、鷹野にとっては、それだけではなかった。
視線の先には、湊がいる。
いつもと変わらない。
そう見える。
ボールを受ける。
周囲を見る。
短くパスを出す。
次の位置へ移動する。
表情もほとんど変わらない。
けれど、鷹野は知っていた。
湊は、何もないところから突然強くなる選手ではない。
自分の内側にあるものを、ひたすら押し込めながら前へ進んでいる。
だからこそ、普段とのわずかな違いを見逃してはいけない。
それを鷹野が知ったのは、湊がレガルテ横浜のセレクションを受けた頃だった。
入団が決まった後、鷹野は施設の担当者から湊についての説明を受けていた。
幼少期に両親を亡くしていること。
その原因となった火事が、今も強い記憶として残っていること。
普段は非常に自律しており、自分の感情や生活を自分自身で管理していること。
そして、サッカーに対して異常なほど真面目であること。
そこまでは、鷹野もすでに現場で感じていた。
問題は、その先だった。
『湊くんの場合、普段はかなり安定しています』
担当者は、慎重に言葉を選んでいた。
『ただ、家族や強い結びつきを感じさせる場面では、過去の記憶が突然現在に重なる可能性があります』
鷹野は黙って話を聞いていた。
『単純に悲しい思い出が蘇る、というだけではありません』
『……というと?』
『頭では現在にいると理解していても、身体が過去の出来事を現在の危機として反応してしまう可能性があります』
鷹野は、そこで初めて表情を変えた。
それは、本人の意思では止められないものなのだと理解した。
『つまり、湊くんが弱いということではありません』
『分かっています』
『むしろ、普段から自分を強く律している子です。だからこそ、表面上の変化だけで判断しないでください』
その言葉を、鷹野は覚えていた。
湊は、自分の苦しさを簡単には口にしない。
辛い時ほど、黙る。
疲れていても練習を続ける。
失敗しても、自分の足りない部分を探す。
だから、本人が「大丈夫です」と言ったからといって、それだけで大丈夫だと判断してはいけない。
鷹野は、そう考えた。
そして、現場で最も湊の近くにいる西野へ、その話を伝えた。
「湊のサッカーだけを見るな」
その時、鷹野はそう言った。
「……はい」
「練習量や成長だけじゃない」
西野は黙って聞いていた。
「普段と違うところがあったら、必ず気づいてくれ」
「分かりました」
それ以来、西野は湊のプレーだけを見ることをやめた。
練習中の姿勢。
返事の声。
視線。
休憩中の様子。
いつもなら流すような小さな変化まで、さりげなく確認するようになった。
鷹野自身も同じだった。
選手としてどれだけ成長しているか。
どんなパスを出すのか。
どこまで俯瞰できるようになったのか。
もちろん、それも重要だった。
だが、それだけではない。
湊が一人の少年として、今どういう状態にあるのか。
それも、見なければならない。
だから今日も、二人はウォームアップが始まった頃から、ピッチ脇のトンネル付近にいた。
全国大会。
大観衆。
普段とは違う規模のスタジアム。
そして、遠方から駆けつけた家族たち。
湊にとって、刺激の強い要素がいくつも重なっている。
鷹野はスタンドへ視線を向けた。
そこには、すでに多くの家族がいた。
応援ボードを持っている者。
名前を呼ぶ者。
選手の姿を見つけて手を振る者。
どれも、ごく普通の光景だった。
だからこそ、鷹野は警戒していた。
湊にとって、その「普通」が普通ではない可能性があるからだ。
「……西野」
「はい」
「今のところは?」
西野がピッチを見つめた。
「問題ありません」
「そうか」
「ただ、いつもより少し周囲を確認しています」
「湊らしいな」
「はい」
二人はそれ以上、話さなかった。
必要以上に近づけば、かえって湊を意識させる。
だから、見守る。
それが今できることだった。
やがて、ウォームアップが終わる。
選手たちがピッチ脇へ戻ってくる。
鷹野は湊を見る。
まだ大丈夫だ。
そう思った。
少なくとも、その時までは。
そして、太陽の家族が声を上げた。
「太陽ー! 落ち着いて行きなさいよー!」
続いて、岩田の家族。
陸の家族。
スタンドから次々に声が飛ぶ。
選手たちが振り返る。
笑う。
手を振る。
ごく自然な光景だった。
鷹野も、その光景を見ていた。
そして――
「湊も! 湊の家の人も、どこかに来てるのかな?」
太陽の何気ない声が響いた。
鷹野の視線が、湊へ向いた。
一瞬だった。
本当に、一瞬だった。
湊の身体が止まった。
表情が消える。
呼吸が変わる。
視線の焦点が、目の前のスタジアムから外れていく。
「……湊?」
西野も異変に気づいた。
鷹野はすぐに動いた。
「西野!」
「はい!」
次の瞬間。
湊の膝から力が抜けた。
鷹野は倒れ込む身体を受け止めた。
「湊!」
腕の中の身体が震えている。
呼吸が浅い。
指先が強く握り込まれている。
鷹野は、理解した。
恐れていたことが起きた。
全国大会という舞台。
大観衆。
家族の応援。
そのすべてが重なった。
そして、ほんの一言。
それだけで。
湊の中に封じられていた過去が、現在へと押し寄せた。
「西野、頼む!」
「はい!」
鷹野は湊の身体を支えながら、周囲を見た。
太陽。
岩田。
陸。
三人とも、何が起きたのか分からず立ち尽くしている。
その顔には、明らかな動揺が浮かんでいた。
だが、今は説明している時間がない。
「剛、太陽、陸」
鷹野は静かに声をかけた。
「湊は私たちが見る」
「でも……」
「大丈夫だ」
強く言い切る。
「お前たちはロッカールームへ戻れ。神谷監督にも私から伝える」
「……湊は?」
太陽が聞いた。
鷹野は一瞬だけ、腕の中の湊を見た。
まだ震えている。
けれど、必ず戻す。
「任せろ」
そう答えた。
「お前たちが今できることは、試合の準備をすることだ」
太陽たちは、何度も湊を振り返りながらトンネルの奥へ消えていった。
その背中を見送る。
そして、鷹野は湊を支え直した。
「行こう」
西野が頷く。
二人は、湊を医務室へ運んだ。
この時の鷹野には、まだ分からなかった。
身体の震えが収まったあと。
湊の中に、別の危うさが生まれ始めていることを。
そしてそれが、単なる回復ではなく――
自分の感情そのものを切り離すことによって生まれた、静かな「真空」だということを。
◇
ロッカールームへ戻る。
ドアを開ける。
チームメイトたちが、一斉にこちらを見た。
「湊」
神谷監督が立っていた。
「大丈夫か」
「はい」
「本当に?」
「はい」
神谷監督は僕の目を見た。
何かを確かめるように、しばらく黙っている。
「……分かった」
それ以上は聞かなかった。
「ただし、少しでも異変があれば交代させる」
「分かりました」
「無理をすることが強さじゃない」
「……はい」
僕は自分の席に座った。
周囲では選手たちが準備をしている。
スパイク。
テーピング。
ユニフォーム。
水。
いつもの試合前の光景。
僕も準備をする。
すると、隣から声がした。
「湊」
太陽くんだった。
「……さっき、ごめん」
僕は顔を上げた。
「何が?」
「家族のこと」
「……」
太陽くんは少し言いにくそうにしていた。
「俺、何も考えずに聞いた」
「うん」
「嫌だったなら、ごめん」
僕は太陽くんを見た。
謝る必要はない。
そう言いたかった。
でも、すぐには言葉が出なかった。
太陽くんは僕の返事を待っている。
その表情を見ていると、胸の奥がほんの少しだけ動いた。
さっきまでの痛みとは違う。
もっと小さい。
名前をつけることのできない感覚。
「……太陽くんは、悪くないよ」
それだけ言った。
「本当?」
「うん」
「そっか」
太陽くんは少しだけ安心したように頷いた。
「じゃあ、俺、行ってくる」
「うん」
「湊も」
「……何?」
「一緒に勝とう」
僕は答えなかった。
太陽くんは、それ以上何も言わずに離れていった。
僕は、その背中を見た。
さっきまでなら。
その言葉について、いろいろ考えていたかもしれない。
僕がチームに何を返せるのか。
太陽くんがどこに走るのか。
陸くんはどこを使うのか。
岩田くんはどこを守るのか。
でも今は――
頭の中に、余計なものがほとんど残っていなかった。
静かだった。
静かすぎるほどに。
◇
選手入場の時間が来た。
トンネルの中に並ぶ。
前には相手チーム。
後ろには味方。
スタジアムの歓声が、壁を震わせている。
僕は目を閉じた。
炎は見えなかった。
両親も。
家族も。
何も見えない。
ただ、暗い。
真っ暗だった。
でも、不思議と怖くなかった。
感情がない。
そう思った。
いや。
正確には、感情を探すことをやめていた。
怖い。
悲しい。
苦しい。
悔しい。
そういうものを一つずつ拾い上げることをやめた。
今は必要ない。
必要なのは、ピッチだけ。
ボール。
相手。
味方。
空間。
距離。
角度。
時間。
それだけでいい。
僕は目を開けた。
目の前にピッチがある。
緑色。
白いライン。
ゴール。
スタンド。
何万人もの視線。
その全部が、情報として見えた。
感情としてではない。
情報として。
僕は一歩、前へ出た。
◇
試合開始まで、あと数分。
僕はピッチに立った。
中央。
トップ下。
いつもの場所。
ボールがセンターサークルに置かれている。
相手の配置を見る。
味方を見る。
最終ライン。
中盤。
太陽くんの位置。
陸くんの位置。
岩田くんはベンチから試合を見守る。
まだ出番はない。
それぞれの位置が、頭の中に入ってくる。
いつもなら、その中から必要な情報を選ぶ。
西野さんに教わった。
全部を見ようとすると、判断が遅れる。
だから、必要なものに絞る。
でも――
今日の僕は違った。
必要なものだけを見ている。
それ以外が、ほとんど入ってこない。
まるで世界そのものが削ぎ落とされているようだった。
僕は相手の最終ラインを見る。
一人。
二人。
三人。
その間隔。
太陽くんの位置。
空いた場所。
ボールが来た時の選択肢。
全部が静かに並んでいく。
速い。
いつもより、判断が速い。
でも、それは僕が急に成長したからではない。
見ているものが少ないだけだった。
太陽くんの顔も。
陸くんの声も。
観客の歓声も。
家族の応援も。
僕の中から遠ざかっている。
残っているのは、サッカーだけ。
そして、それは僕にとってあまりにも扱いやすい世界だった。
感情がなければ、迷わない。
痛みがなければ、躊躇しない。
怖さがなければ、前へ出られる。
そう思った。
でも、その考えの奥に。
僕自身が気づいていない小さな違和感があった。
これは、本当に強くなったということなのか。
それとも――
ただ、何かを感じないようにしているだけなのか。
答えは出なかった。
主審が時計を確認する。
選手たちが配置につく。
観客の歓声が一段大きくなる。
僕は前を向いた。
キックオフ。
その瞬間、僕の世界から最後の余計な音が消えた。
ボールが動く。
僕は走り出す。
相手の位置を見る。
味方を見る。
空間を見る。
そこに一本の道が見えた。
僕は迷わず、そこへ向かう。
まるで何も失っていないかのように。
まるで何も感じていないかのように。
けれど、その静けさの奥には。
まだ、消えていない炎があった。




