第二十二話 白蓮、二色に咲く
ヴァレスの空間槍が、距離を無視して襲いかかる。
伊織は《雷纏・紫電》で弾くが、刃の届く前にヴァレスが別の場所へ移る。
「速いだけでは空間を越えられん」
無数の裂け目から槍が突き出す。
伊織の肩と脇腹が裂けた。
「ぐっ」
「右後ろ!」
フィアの声で身を沈める。頭上を槍が通過した。
「あいつの転移は、出る前に空間が少し縮む。私なら分かる」
「なら指示を頼む」
「信用するの?」
「今さら聞くな」
フィアが目を閉じ、空間の揺らぎを探る。
「左、三歩!」
伊織は風を足へまとい、指示された場所へ滑り込む。
「上!」
雷で反応速度を高め、頭上の槍を斬る。
フィアの声と伊織の剣が、一つの動きになる。
ヴァレスが舌打ちし、峡谷全体を空間の檻で閉じた。
「まとめて潰してやる!」
岩壁が折り畳まれ、四方から迫る。
伊織は白蓮へ風と雷を同時に流した。
二つの属性が刀身の上で反発することなく、美しい螺旋を描く。
風が身体を加速し、雷が神経を研ぎ澄ます。
《雷風纏・迅雷》。
一歩で兵士たちの間を抜ける。二歩目で空間術の要となる杭を断つ。三歩目でヴァレスの懐へ入る。
キンッ
伊織が白蓮を納めた。
遅れて無数の斬撃が現れ、空間の檻が崩壊する。
しかし伊織の右脚も限界を超えていた。筋肉が裂け、膝をつく。
だが、ヴァレスはまだ倒れていない。
「その力を扱える身体ではないようだな」
ヴァレスの槍が伊織の胸へ向かう。
フィアが二人の間へ転移した。
「退け!」
「嫌!」
槍が迫る瞬間、伊織は最後の力を振り絞り白蓮へ氷を流した。
《氷纏・白華》。
刀身が槍へ触れ、白い氷の花が咲く。凍結が柄を伝い、ヴァレスの腕を封じた。
「二属性を、連続で……」
「一人なら、ここまでだった」
伊織は立ち上がる。そして、フィアを一瞥する。
「だが今は、間違える前に止めてくれる奴がいる」
白蓮の峰がヴァレスの胸を打ち、意識を刈り取った。




