タコス指
先輩と一緒に、タコスを食べに行った。
私は、タコスを食べるのは初めてである。
「タコスは好き嫌いが大きく別れる食べ物だからね。果たして、口に合うかどうか。」
箱に入った3ピースのタコス。
薄い皮にサイドを包まれたそれを、手に持って食らいつく。
独特な香りが口から鼻へと通り抜ける。
独特と言ったって、臭いわけではない。スパイシーなかんじというか、この香りに似た料理が頭に浮かばない。味も、しょっぱいような、酸っぱいような、辛いような。絶妙なものである。口を大きく開けてかぶりつくが、刻まれ、細かくされて、びちょびちょな具材が、それでも、手元にこぼれた。
「美味しいです!初めて経験した味です。」
「そう。口にあったなら良かった。」
「この、何とも言えない香りがたまらないです。この、緑の葉がいいアクセントをしていますよね。ハーブですかね。」
「どれどれ?・・・ああ、それはね。多分パクチーだよ。カメムシの臭いって表現されたりもするんだけど、嫌じゃない?」
「全然。全く。値段が安ければ、毎日食べたいくらいです。」
あっという間に3ピース食べきってしまった。
タコスのエキスが指先にいっぱいついており、それも惜しみなくしゃぶりついた。
「やっぱり汚れるよね。手が汚れるから、タコスが嫌いって人もいるんだ。」
「そうなんですね・・ぺちゃっ。こんなに美味しいのに・・・ぺちゃっ。」
「そんなに食べ終わった後、指を舐めるやつは初めてだなあ。また買ってやるから。ほら。ティッシュで拭きな。」
「ありがとうございます。」
先輩と別れて、家に帰る。
お風呂に入ったあとに、ふと香るタコスの臭いがした。
指先からだ。
巷ではインフルエンザが流行っているから、手洗いうがいはしっかり行っているのに。
それでも存在を残すタコスの香り。
「ペちゃ。ぺちゃ。ぺちゃ。ぺちゃ。」
私はたまらずその指を、舐めまわした。




