夜のキツツキ
夏の夜といえば、昆虫採集。
お父さんと一緒に近くの山へと向かった。
お父さんは昆虫採集に詳しい。昼間のうちに樹液が出ている木を探しておいてくれたらしい。
ボクよりもやる気がある。
「よし、着いたぞ。あとはここから山道を歩くよ。懐中電灯は持った?」
「うん。持った。」
「危ないから、足元に注意するんだぞ。」
「うん。」
ジメジメした、気持ちが悪い夜だった。
でも、虫たちにとっては、こういう日の方が元気に動きやすいらしい。
「ほら、見てみろよ。こんなにいっぱい集まってる。」
「すごい!カブトムシがこんなにいっぱい!」
木の汁に、大きなカブトムシが5匹は集まっていた。
「誰かがここに釘を打ったんだな。ほら。よく見たら、ここにも刺さっている。そこから樹液が・・・。」
お父さんは急に黙ってしまった。
「どうしたの?」
「帰ろう。」
「なんで?」
「いいから。」
「なんで?」
「いいから!!!」
お父さんはボクの手を無理やり引っ張っていった。
『カーン』
その時、すぐ近くで甲高い音がした。
『カーン』
「お父さん、これ、何の音?」
「・・・キツツキだよ。」
「キツツキ?この山にいるの?」
「うん。いたんだね。」
「ボク、見て見たい!向こうの方からだよね。」
ボクは、咄嗟に懐中電灯を、音が鳴る方に向けた。
「バカ、やめろ!」
お父さんはすぐに懐中電灯の電源を消した。
「暗くて、危ないよ。どうして消すの?」
「キツツキさんが驚くから。それに、ほら、もう車に着く。」
お父さんは慌ただしく車に乗り、ボクがシートベルトを付ける前に車を発進させた。
「お父さん?」
「・・・どうした。」
「夜のキツツキさんって、もしかして人間?」
「・・・・・・・・・・どうして?」
「だって、車の後ろから怖い顔をした人が追いかけてきてるよ。トンカチを持って。」




