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至高の雨日
「いや、参ったね、全く。」
傘をバサバサと開閉し、水気を払う。
従業員玄関の床は雨粒と泥で汚れていた。
「シャワーみたいな雨だね。駐車場からここまでの距離で、傘をさしているのに、もうびしょ濡れだよ。」
春先に降る雨じゃない。
真夏日の…そう、夕立のような強い雨。
「嫌だね、全く。」
「おはようございます!どうしたんですか?そんな顔をして!」
元気な声の主は、同じ部署の後輩だ。
「いや、だってこの雨だよ。やんなっちゃうよ。」
「まあ、そうですね。確かに、お互いずぶ濡れになっちゃってますね!」
「しかし、お前さんは随分陽気だね。雨が好きなのかい?」
「いえ、雨は嫌いですよ。晴れの方が気分も晴れる!でも、この時期は特別で、ずっと雨が降っていてほしくて!」
「本当に!?特別って…この春先の何が特別なんだよ!!!」
後輩は、カバンの中に入っている、大量のポケットティッシュを見せてきた。
「自分、花粉症なんです。」




