ブリーダー
大学の友人はクワガタを飼っている。
家に行った際に、自慢げに紹介してくれた。
「これは、セアカフタマタクワガタっていうクワガタでね。気性が荒いタイプ。」
「へえ・・・初めて見たよ。なんか俺が小さい頃捕まえていた奴と違ってゴツいなあ。」
「当然さ。これは外国産のクワガタなんだ。」
「こんなに沢山いるものだから、外で採取してきたものだと思ったよ。」
「まさか!・・・ブリードしているんだよ。だからこの子たちは、みんな同じ親から生まれた兄弟。」
ブリードとは、人工的に交配して繁殖させることらしく、友人はブリードをメインにしている、つまり『ブリーダー』らしい。
「特にこいつは俺の最高傑作。今年のレコードを記録した個体なんだ。」
「レコード?」
「そう。ブリーダー同士でサイズを競い合うんだ。ブリーダーはより大きくて格好いい個体を求める。どうだい、男のロマンだろ?」
「まあ、確かに・・・格好いい。」
手に乗せたクワガタは、威嚇のポーズをとり、上にガッツリと顎を開いている。
「挟まれたら痛そうだね。」
「痛いなんてもんじゃないよ。同じ空間で複数飼育すると、その気性の荒さから、その立派な顎で喧嘩して、最悪相手の胴体を切断しちゃうのさ。・・・例えメスでさえも。」
「メスとも喧嘩しちゃうの?」
「そうだよ。お構いなしに殺しちゃう。」
「え、じゃあどうやって交配させるの?」
「難しいことはしないよ。こんな風に・・・封じちゃう。」
友人は小さな輪ゴムで、クワガタの立派な顎を閉じて、ぐるぐる巻いて縛った。
「・・・こうすれば、顎は開かないし、殺すことはないのさ。」
「なんか、こう言っちゃアレだけど、見た目とかは気にしないの?せっかくの牙なのに。」
「見た目?まあ、次の世代の為だからね。こいつには種親になってもらって、いっぱい子孫を残してもらわなきゃ・・・。」
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