噛んでいる死体
「君の出番だ。今すぐ来てくれ。」
警察に呼び出される。
私は警察の要請が会った時のみ、事件の記録をしている。それらはニュースに出来ないものばかりで、世の中に情報が出回ることはないため、一般の人は知ることは無い。
いったい今回はどんな怪事件か・・・私は深呼吸をして、現場へ向かっていく。今日もまた・・・。
そこは、高齢者が10人程度しか住んでいない小さな村。その村人全員が死んでしまったということである。
私を呼んだ警察官は初めて会う人だった。警察官っぽくないというか、肩ぐるしくないというか、調子のいい人だった。
「固定電話から通報があって、最初に俺が来たんや。この『障子戸に噛んだまま死んでいる女性』が、おそらく電話してきたひとなんやろうけど、何せここは遠いかったからなあ・・・到着した時にはこの状態やったんや。」
80歳くらいの女性である。食べ物ではない障子戸に、歯ぐきから血が滴るほどに強く、噛みついた状態で亡くなっている。
「他の村人も同じような感じなんですか?」
「そう。この人の情報を集めようと近所を回ったんやけど、どこも反応が無くて・・・入ってみたらみんな死んでいた。枕、たんす、机、仏壇、こたつ、茶碗・・・みんな何かしらに噛んだ状態。」
「亡くなったのは同時期なんですかね?」
「みんなが、だいたい数日以内ではないかってことだけど、全く変な話すぎて、良く分からんのや。」
「通報してくれた人は何て言って通報してきたのですか?」
「あーとか、うーとかしか聞き取れなくて、正直なんて話していたかすら分からんかった。」
「そうですか・・・分かりました。他の遺体も記録させてほしいです。」
「かまへんかまへん。ニュースにすることは無いし、住民がいないから、多分この村全部取り壊してしまう。全て記録しておいてくれや。」
警察官は、遺体がある家々を案内してくれた。
「それにしても・・・」
その最中に突然、家のドアノブに警察官が噛んだ。
「なんで噛みたくなるんやろうなあ?」
「さて・・・。なんででしょうねえ。それがこの事件の一番の謎ですよね。」
「別に美味しくない。」
当たり前である。
―――――
全ての遺体を記録したが、口で噛んでいるモノの違いはあれど、遺体自体の違いは、ほとんどなかった。
ただ、特に時間が経過したものであろう遺体だけ、ちょっとした変化があった。
耳の穴から、2センチほどのキノコが2本生えているのだ。
遺体の栄養で育ったと思われる。もしかしたら、変死の理由と関係があるのかもしれない。
「すいません、片付けても大丈夫でしょうか?」
「あ、はい。どうぞ。記録は終わりました。」
警官が数人集って、遺体を運び始めた。もう、引き上げる時間らしい。
最後に、私を呼んだ警察官に挨拶しようと思ったが、まさかの場所にいた。
「あ、ここにいたんですか!探していたんですよ!」
まさかの、先ほどの家のドアノブに噛んだ状態で膝立ちしていた。
「何しているんですか!お先に失礼しますね、お疲れさまでした!」
「おごごごごごごご!」
警察官は、ドアノブに噛んだまま挨拶していた。
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クビオレ○○タケ




