1話 チートルーム内見
本日8/19より
拙作の四巻発売中です
下にもリンクがありますので、何卒よろしくお願いします
黒い渦を抜けると、そこは真っ白でだだっ広い空間……ではなく、やや広めに作られた玄関のような空間であった。
いや、右手にダンジョン産の木材で作ったシューズボックスがあったり、数メートル先にそれっぽい扉もあるので、普通に玄関にしか見えないだろう。
実際玄関なんだが。
「あ、靴は脱いでくださいね。スリッパは来客用がそこにありますが、自分用のが欲しかったら自前で準備してください」
「「「「……」」」」」
微妙な空気となった中、全員が靴を脱ぎ、スリッパに履き替えたのを確認した俺は、数メートル進んだところにある扉を開ける。
そこにあったのは高級な家具を揃えたモデルルームのような空間であった。
「こいつは……」
「正直だだっ広い倉庫みたいなん想定しとったんやが……」
「……予想以上に【部屋】ですなぁ」
恐る恐る【ルーム】の中に入ってきた但馬さんたちが驚きの声を上げると。
「これが支部長の秘密、ですか」
「珍しい、なんてモノじゃないですね」
「すごい! ちゃんと部屋があるよ!」
「この人、もうなんでもアリなんですねぇ」
次いで入ってきた少女たちもまた、それぞれ感想を口にしていく。
それぞれ微妙に反応は違うが、その根底にある感情が”驚愕”であることは一目瞭然。
それはそうだろう。
そもそも【ルーム】の効果は、読んで字のごとく”部屋となる空間を作り出すという”単純極まりないモノだが、世界規模で今よりも探索が進んでいた一五年後の世界にあっても、俺以外の使い手が見つかっていなかった特殊極まるスキルなのだ(どこぞの国や権力者が隠して抱え込んでいた可能性はあるが、公式には存在していない)。
ギルドが勝手に作った系統の中では【アイテムボックス】の上位互換とされているが、当然【アイテムボックス】がこのスキルに昇華した実例は確認されていない。
あと、使い手が俺一人しかいなかったせいで、ダンジョン黎明期に他のジョブで行ったような非人道的な実験などができず、研究者たちを随分とやきもきさせていたことも覚えている。
だからといって、依頼料を受領するために俺個人のサインが必要とされている書類の中に、極めて細かい字で『解剖されても文句は言いません』なんて書かれた契約書を挟んでくるのはどうかと思うが、言い換えればそれくらい再現性が求められていたスキルであった。
なぜそれほど執着されたのか?
単純に、中に人が入れたからだ。
それも、使用者しか利用も内容の把握もできない【アイテムボックス】と違い、使用者以外の人間も入れたからだ。
しかも、レベルが上がるにつれて規模が拡張し続ける機能と、決まった容量の中であれば間取りを自由に設定できるリフォーム機能付きである。
俺が【ギルドナイト】の連中に酷使されることになった原因でもある。
この事実が判明したことにより、かつてこのスキルは”他人が出入り可能な倉庫を任意の場所に設置できるスキル”として認識されていた。
普通にダンジョン探索に役立つだけではなく、盗難、密輸に加え、誘拐や密入国が簡単にできるようになるスキルなので、それ系の仕事を生業としている人間にとっては垂涎のスキルと言えるだろう。
当然、政府の要人やギルドの役員たちからも後ろ暗い仕事を回されることも多々あったが、それはまぁいい。
「これが俺の切り札の一つです。どう思います? 使い勝手が良いスキルだと思いませんか?」
「言いてぇことは色々あるが……まぁ、そうだな。凄く、過ごしやすそうだ」
「ですよねぇ」
そう。
元々俺の【ルーム】内の間取りやらなにやらは、ギルドの役員や【ギルドナイト】の連中に管理されていたこともあって、連中が使いやすいように改造されているので、普通に過ごしやすいのだ。
具体的には、リビング・ダイニング・男性用寝室・女性用寝室・男性用トイレ・女性用トイレ・男性用シャワールーム・女性用シャワールーム・調整室・各種倉庫・給水タンク・排水タンクと、探索中に休憩を取るには十分すぎるほどの設備を整えている。
もはや家電がないモデルルームのようなモノ、と言っても過言ではないだろう。
また、連中の監視下にないのを良いことに、最近では『俺の部屋』を二つほど増設しているので、俺にとっても過ごしやすい環境となっている。
ついでに言えば、リビングやダイニングに備え付けられている家具は、贅沢になれた政府の要人やギルドの役員らが、自分で使っても不平や不満を抱かないようそれなり以上の品質のモノとなっていたりする。それらは勿体ないから継続して使う心算だったので手は加えていないが、寝室に置かれていたベッドは男性用も女性用も全部”そこそこ良い”程度のヤツに買い替えているので、社長令嬢である先輩は少し不満を覚えるかもしれないが、一般市民出身の奥野や切岸さんは気兼ねなく眠れるのではなかろうか。
シータさん?
正直彼女の生活レベルは良くわからないので、本人に聞いてみたいところではある。
もし具体的な要望があったら考える心算はある。
もちろん対価は貰うけどな。
男性陣に関しては、まぁ、アレだ。
探索者になりたての女性陣と違って、元々過酷な探索になれている彼らは『普通に休めるだけで十分』という価値観があるはずなので、備え付けられている家具の品質に文句を言うことはない、と思う。
文句があるなら持参すれば良いだけだしな。
さて、そろそろ呆けている皆さんに簡単な説明をしよう。
「部屋は見た通り。装備品は他人の邪魔にならない場所なら好きな場所に置いていいですが、管理は自分でお願いします。シャワーやトイレは向こうです。洗濯はシャワールームに併設してある洗面所でお願いします。使用する水はすでに魔法で出していますので、好きに使ってください。なくなったら補充します。お湯が欲しい場合は自分で魔法やスキルを使ってください。俺に用意させる場合は有料になります。それと、食料に関しては保存食をそれなりの量と種類を用意していますが、所詮は保存食なので、品質には期待しないでください。あとは……なにか質問があったらその都度受け付けますので、遠慮なくどうぞ」
まぁ普通のホテルとほぼ同じなので、質問もなにもないと思うけどな。
あ、そうだ。
「トイレットペーパーは流しても大丈夫です」って言い忘れた。
山小屋とか外国だと流せないから、一緒にするかもしれないな。
変に意識されて隠されても困るから、後でちゃんと追加で説明しなくては。
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拙作の4巻が発売となりました。
各種修正と約15000字の加筆もしておりますので、何卒よろしくお願いします。


















