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天使長の調べ

ここキロス島は、この世界で唯一我が主の神殿がある場所。


我らは主に従いこの地に降り、主と共に戦いました。

しかし主は創造神ユリアーネ様に封印され、お隠れになってしまわれたのです。


あれからどれだけ月日が流れたでしょうか。




地上を席巻し、自ら神と名乗り驕傲であったヒト族から虐げられていた種族を守らんがため、主は地上に降り立ちました。

それが天界の不文律を破ることであっても主は躊躇いませんでした。


我らの望みはただ一つ、主と共に在ることです。

主を助け、主の望みを叶えること、それが我らの存在意義でした。


そんな我らは、主と共に戦い、消えていくはずでした。

ところが創造神ユリアーネ様は、


「何れ復する(とき)がこよう。お主達は、その時そばにいてやるのだ。」


我らにこう言い残し、去っていかれました。

残された我らは主の復活を願い、ここで祈り続けています。



我が主は気高く慈悲深いお方でした。

そして、森羅万象に通じ誤ることがありませんでした。

そんな主は我らにとって至高の存在だったのです。


ユリアーネ様によって創造された物すべてを慈しみ、深い愛情を注いでおられました。

それが故に、この地に生まれた種族たちが、他の種族に虐げられ、害されている姿にどれほど打ち拉がれたことでしょう。

我が身を厭わず、刻苦の末に訪れた安寧を壊され、裏切られて、その心中如何許りであったか計り知れません。




我が主、シシュリアーネ様は知恵の女神であり、創造神ユリアーネ様の妹神として天界におわしました。

美しく気高い我が主。

創造神ユリアーネ様は少々特異な御姿をしていらっしゃいますが、我が主は女神と呼ばれるに相応しい御姿でした。


姉神であるユリアーネ様と、妹神であるシシュリアーネ様はとても仲の良い姉妹でした。

側にいる我らまで心暖かくなるほどです。


神ともなれば唯我独尊な方もおわします。

しかしあのお二方は違いました。

互いを思いやり、慈しんでおられました。

そのお気持ちそのままに地上世界をも慈しんでおられたのです。



そんな主がこの地に眠っています。

我らはひたすら主の魂の安寧と覚醒を願うばかりです。


神の封印がどれほどのものなのかわかりません。

ですが創造神様は何れ復すると仰せでした。

我らはそのときを信じ、お傍に控えていたいのです。


主の封印は時とともに、呼吸のようにマナを取り込むようになりました。

そのせいなのかマナが薄くなり、所々瘴気の気配を感じます。

主の身に何か起きたのでしょうか。


しかし、女神が瘴気を発するなどあるはずのないこと。

………封印により女神ではなくなったのでしょうか。

闇に取り込まれ、邪気に支配されたのかもしれません。

そう、邪な不死者のように。


忌々しいことに、我が主の神殿があるすぐそばに不死者の国があります。

何故斯様な場所に住まうのでしょうか。

そもそも、一度現世を離れた者が地上に住み暮らすとはどれほどの矛盾でしょう。

彼の地を焼き払おうかとも思いましたが、彼らもまた創造神様の子。

ぞんざいには扱えません。


そのことがまた諦念となって我らを襲います。

滅ぼすことが憚れるなら、罰を与えるのは許されるでしょう。

そうです、死してなお現世に留まる者は罰せられなければなりません。


彼の地より出る者、彼の地を訪れる者には天上より戒めが施されるでしょう。

これは輪廻を(たばか)る者への罰なのです。

天上より降りた我々こそが手を尽くさねばなりません。


我が主の神殿があるこの地を守り、輪廻を嘲笑う者たちを巡邏する。

これこそこの地にある我らの役儀。

生ある限り務めてまいりましょう。



日々我が主の声を聞かんがため祈ります。

どうか我が声が主に届きますよう、願いを込めて祈ります。


そんなある日、祈りの途中でマナの揺らぎを感じました。

こんなことはこれまでなかったこと。

これはどうしたことでしょうか。

まさか、他世界からの干渉?


あり得ません。

そのようなこと、創造神様がお許しにならないでしょう。

それなら何故?


それとも、創造神様が外より何かを取り込んだのでしょうか。

何のために?


こうしていても答えは出ないでしょう。

分かっているのはこの世界の外から何らかの干渉があったこと。

それができるのは、数多の神のうち創造神様だけ。


ということは、創造神様が外の世界から何かを招いたのかもしれません。

何れにしても我々の与り知らぬこと。

我らにできることは祈ることです。


今日も主のために祈り、謳いましょう。


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