1年ぶりの更新が最終回で申し訳ないです <(_ _)>
……つぎは、なんて予告しましたがトリックネタ全てパスして最終回です。
理由は、根本的な自分の勘違いに気付いたからです。
そこで、最後ぐらい推理小説っぽくエッセイを書いてみようかなと。
だからこのエッセイにはちょっとだけの謎が含まれています!
……たぶん。
▽ △ ▽
まず勘違いが何だったかと言うと。
……誤解を覚悟で書くと、日本ではWhat done it (ホワットダニット)は推理として認められてないんですね。
正確には日本の多くの読者(推理ファンも含む)には、どうもこの小説の組み方は別ジャンルに思われてるようだと。
本当は推理小説のルールとかトリックの方法論とかを書きながら、最後に『組み方』の話を書こうと思っていたんですが、この『組み方』の認識に問題? があったのかなって、そう思って、急遽こんな形になりました。
なんか自分勝手で申し訳ないです。
仕切り直して……
伝統的な推理小説の組み方は、大きく分けて4つだと言われてます。(日本だと3つで紹介しているところもチラホラ)
作品が多い順で並べると……
1>「フーダニット(Who done it)」(犯人当て)
2>「ハウダニット(How done it)」(トリック当て)
3>「ホワイダニット(Why done it)」(動機探し)
4>「ホワットダニット(What done it)」(何が起きたのかの謎を解く)
この上3つは、代表作出しやすいと思います。
事件が起きて、「犯人はお前だ!」と探偵や刑事がクライマックスで叫ぶのが1のフーダニットで、多くの推理小説がこの組み方をしてます。
例えば犯人がもう分かっていて、探偵や刑事が犯人の隠している謎やウソを暴くタイプが2のハウダニット、トリック当てですね。アリバイ崩しや密室殺人なんかはこのパターンが多いです。
それで、上記の謎やウソが「トリック」じゃなくて「犯行動機」に変わって、心理的な駆引きなんかが主題になると3のホワイダニットになります。
この辺でグッと作品数が減りますから、3のホワイダニットまで作品がイメージできる人は、相当な推理ファンでしょう。
じゃあ4のホワットダニットは?
何が起きているか分かんなくて(あるいは勘違いしていて)その謎が最後に解ける。
この組み方の好きな作品がありましたら、感想欄に書いていただけると嬉しいです。
以前のページでも書きましたし、またあらためてなんでこんなことを書いているかと言うと……
日本語で書かれた(日本の作家の)ホワットダニット小説を最近読みまして。
ああ、ちゃんとホワットダニットもこんなに人気なんだ(今年の春、国内の大きな賞を受賞したり、AmazonやTSUTAYAの売り上げランキングも1位を獲得してます)
と、喜んで……その本を読んだ人たちのレビューを読んだら。
まあ簡単に申しまして「これってジャンル間違ってね?」みたいな感想もあり。
そのほとんどが作者や作品に対してではなく、出版社さん等による売り出し戦略の失敗だと批判されてました……
ちなみにその作品は、ホワットダニットとしては最も基本的なパターンで。
<1>
少女が突然特異な状態に陥り、その状態を解除するための試練が提示される。
<2前>
仲間が集まり試練に挑み始めるが、謎が解けない。
<ターニングポイント>
仲間とは特異な状態でないと会うことができない。(現実社会に仲間が存在していない)
<2後>
試練は一向に進まないが、少女や仲間がどうして特異な状態に陥ったのか、謎が解け始める。
<3>
それがキーとなり、試練が完遂する。
三幕構成でわけるとこんな感じになります。
こう書くと「このプロットが推理なら、どんな小説でも推理になってしまう」とおっしゃる人も多いのではないかと思います。
実際、上記の作品が推理なら「ハリポタ」も推理小説じゃね? って言う書き込みもありました。
では推理小説の定義、これも沢山ありますが…… 『組み方』の例を書くと。
1「発端の不可思議性」
最初に奇妙な事件や謎を提示して読者を引きつけること。
作者は論理的に解明していくが、同時に読者が自ら推理を試みることを期待し、作者との知恵比べが行われる。
2「中途のサスペンス」
謎の提示と最終的な解明をつなぐ部分。
推理の手がかりを提供しして、読者の興味を引き離さない工夫がなされる。
3「結末の意外性」
それらを受けた最も重要な部分であり、読者の予想を裏切る形で謎や真相の解明がなされる結末のこと。
こんな感じになります。
これは日本の推理小説の評論家、翻訳家でも作家でもある方が提示したのが始まりのようですが、同じような内容が欧米の推理小説家 (クリスティやチャンドラー)もエッセイなどでも述べているので、定説のひとつとして取り上げました。
通常の三幕構成との違いは……
作品のテーマが『謎』と直結してる事です。
そして読者にフェアにヒントを提示して、矛盾なく謎を解き、最後に読者が納得できる意外な結末を提示できることです。
だから上記の作品は「伝統的な推理小説」と呼べるものでした。
……少なくとも僕の中では。
ここまで書くと。
じゃあ、あの映画もあのドラマもと。
海外の作品が思い浮かんだ人もいるかもしれませんが。
アメリカでpuzzle storyとかclassical whodunit 謎解き推理、伝統的な推理小説と呼ばれる、「本格推理」……これは日本特有のジャンルで、たぶん上記がそれにあたる英語かなあ。で、それがホワットダニット「何が起きたかの推理」作品になると。
紹介文から「推理」の言葉が消えちゃうんですね……
実際アメリカでpuzzle storyとかclassical whodunitとして注目を集めた人気映画やドラマを幾つか検索したんですが。
「この作品にはある秘密が含まれています」
ぐらいが、なんか推理っぽいあおりで。
他は「感動のファンタジー」とか「SF超大作」とか……
レビューなんかも「どんでん返しが面白かった」とか「絡み合った伏線がちゃんと回収できていた」と言った感じで、「推理」なんて単語は入る隙間が無さそうでした。
じゃあ、なにが原因かと考えると。
例えば日本の推理小説の発端は「探偵小説」で、犯罪の謎を解くものが原則として取り上げられたこと。
その後「謎」を解く過程が主体の作品が、海外と同じように「推理」と定義し始めた頃……
「新本格推理」として、また探偵小説がブームになったこと。
そして「探偵物」が主流になったために、伝統的な推理小説の定義のひとつ「ホワットダニット」がはじかれちゃったこと。
なんかが想像できます(違ってたらごめんなさい)
そして最大の問題は……
最近まで僕自身がこのズレを正確に把握してなかったことですね。
まあ、多少の認識はあったんですが。
犯罪の謎を解くのが推理小説で、それ以外の推理は本道から外れている。
ファンタジーやSF要素があれば、それはフェアな推理ではない。
たとえ謎を解くテーマであっても、探偵やそれに準じる存在が謎解きをしなければ、それは推理小説とは呼べない。
多分コレが日本のローカル・ルール……
あるいは、イメージなのかなと。
▽ △ ▽
ここしばらく作品も書かないで、そんなことばかり考えてました。
なんせ僕はこのホワットダニットを必死になって書いていましたから。
でもいろいろ考えて、上記で例にあげてる作品がホワットダニットなのに出版社から「推理小説」として出版されていること。
また作者が多くのホワットダニット作品を書きながら、自身を「推理小説作家」と呼んでいること。
それを思い直して、連載を再開することにしました。
あの作品は、僕のいつか到達したい目標にもなりましたし。
興味がわいたなら是非手に取ってもらいたい作品です。
これぞホワットダニットだ! って、読み進めるほどハラハラドキドキして、最後にドーンと感動が押し寄せる作品でした。
さて、ここで皆様にご質問です!
ここで例にあげた作品が何なのか聞いたら、それはpuzzle storyぽくって、犯罪が絡んでなくても推理として認められるかもしれませんが……
質問は。
「犯罪の謎を探偵が解くのが推理小説の本道であって、それ以外の亜種は推理のサブジャンル、ましてやSFやファンタジー要素があるものは卑怯な作品」
という価値観(世界)は、間違っていない。
のでしょうか……。
これならちょっと、ホワットダニット「あなたに何が起きているのかの推理」になるんじゃないかと。
――そんな気がして。
あるいは上記のような言い方は卑怯なのかもしれません。
同じことの繰り返しですが、日本でホワットダニットは推理として認められるのか。
つまんない質問ですが、誰かこの謎を解いてもらえると嬉しいです。