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わたしの異世界食配達物語  作者:
家族団欒には手作りの料理を
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『これって不法侵入なのでは?』

「大事の前の小事!犯罪はしません!体に戻ったら謝ります!」

 さっきと言っていることが違うよとか幽霊さんが呟いている気がしましたが私の耳には届きません。

『……変なスイッチ、入っちゃったなぁ……どうしよう、これ』

 お城の城門を見上げつつ腕を振り上げ、勇ましく突進しようとする私の後ろで何故だか遠い目をする幽霊さん。

 だけど幽霊さん曰く変なスイッチが入っちゃっている私はそんなことは気にしない!

「さぁさぁ!いきますよ!目指すは魔術師さんです!」

 あの人ならなんか幽霊でも見えそうだからね!

 なにせ魔術師さんだから!

 理由になってないって突っ込みはスルーです!スルー!

 可能性が高いほうからせめていくよ!

『はぁ~~。普通ならテンションが高いのはあたしの方じゃないかなぁ?』

 お隣から聞こえるぼやきなんて無視して意気揚々と私達は門番達が目を光らせている城門を楽々と通過する。

 通り過ぎる時、幽霊さんが茶目っ気を出したのか門番さんの顔の前で手を振って見せたりして遊んでいたけどやはり見えていないのか全くの無反応。

 見える人間はいないようね。

 堂々と正面から入り、王宮内を闊歩する私と幽霊さんだがいくら歩いても魔術師さんの姿も私たちの姿が見える人にも出会えなかった。

『魔術師さんって……フードかぶった怪しい人って話だけどそれらしい人、いないねぇ~~』

 目の上に手でひさしを作りながら通り過ぎる人たちを見ていた幽霊さんがまた、はずれ、とつぶやく。

『しかし、まさか異世界に食配達なんてことをやっている女の子がいるとは思わなかったなぁ~~』

 道すがら簡単に私の非日常について説明をしたけど……普通なら与太話で終わる話を幽霊さんはあっさり信じてくれた。

 あたしも日本から異世界トリップしたっぽい幽霊だからね、と笑った幽霊さんを見て、この人は幽霊ではなくてこの世界の生きた人間だったとしても信じてくれたかも、なんてことを思った。

「まぁ、普通はそう思いますよね」

 あの成り行きはいくつもの「有り得ない」が融合して起きた非日常だったと今でも思うわ。

『魔術師とかいかにも異世界っぽいわ~~!でも聞く所によると結構性格悪そうだし……この展開にその魔術師が絡んでいるってことはないの~~?』

「……」

 幽霊さんの何気ない一言に思わず黙ってしまう私。

 あ、有り得るかも、と一瞬の疑念が私の頭をよぎってしまったのだ。

『あ、その顔、有り得るわけね』

 私の表情の変化を逃さなかった幽霊さんがうんうんと腕を組んで頷いている。

「い、いや……さすがの魔術師さんでも私を異世界で幽霊にして放置するだなんてそんなこと……たぶん、きっと、しない…………と、いいなぁ……」

 なぜだろう。

 「死ぬわけじゃないし!面白そうだったし!」とか笑ってやいる魔術師さんの姿が浮かんでは消える……。

 実際私はまだ「死んで」はいないわけだし。

 いや、でも。さすがに……でもやりそう……かも。

 信頼と疑念の間で心が揺れ動いてしまう。

『あ、まぁ、その、なんだ!細かいことは本人見つけ出して締め上げれば万事オッケーって奴よ!』

 悶々と悩み始めてしまった私を勇気つけるようにそう言うと幽霊さんは率先して先頭を歩き始める。

 そうだよね。悩んでいても仕方がない。

 少なくとも魔術師さんに会ってみないことには晴れない疑念に頭を悩ますのも馬鹿らしい。


『しかし王宮っていうのは広くて見分けが付かなくて紛らわしいなぁ~~』

 感心したような呆れたような声で幽霊さんが歩きながらそんなことを言う。私もその言葉には全面的に同意だったので頷いておいた。

「本当ですよ。私、こっち来たとき召喚された部屋から用事で何度か王宮の中を歩きましたけど案内なしじゃ元の場所に帰れる自信、ないなぁ~~って思いましたもん」

 まぁ、わざとそんな迷いやすい構造やらインテリアにしてあるんだろうけど、防犯などの観点なんかで。

「とにかく中枢……王様なんかがいる場所に行ければ魔術師さんがいる可能性も高くなるんですけど……」

 今、私たちがいるのがどの辺なのかさっぱりわからないため言葉の語尾が切れていく。

『う~~ん?まぁ、動いていればそのうちそれっぽい所に出るでしょ』

 幽霊さん。アバウト発言だなぁ。

 だけどそれしか方法ないよね。

 ふわりふわりと浮かんでいる幽霊さんを見上げながら私は人気のない回廊を歩く。

 私が生きていたら足音が響くはずの石の回廊はどんなに音を立てて歩こうとしても足音一つならない。

 ……本当に、今の私は幽霊なんだなぁ。

 ちなみになぜ、私が幽霊さんのように浮かんでいないのかというと、浮かべなかったからである。

『たぶん、肉体があった感覚の方が強すぎるからじゃないかな?』とは幽霊さんの見解である。

 ちょっとだけ空飛んでみたかったんだけど……残念。

 そんな風に空を飛ぶことへの憧れに思いを馳せていた私の横でぴくりと幽霊さんが動いた。

『……この気配……』

「幽霊さん?」

 ある方向に顔を向けたまま何かを思案している幽霊さんを私は呼ぶ。

 だけど何に気を取られているのか幽霊さんの反応はない。

 ただただ何かを探すように鼻をひくつかせたり、耳を澄ましたりしている。

 何度私が声をかけても気づいてくれない。

 一体何なのよ!

 もう!

『間違い、ない……こっち!』

「ちょ、幽霊さん!」

 突然目を見開いたかと思うと弾丸のような勢いで文字通りぶっ飛んでいく幽霊さん!

 え、ちょ、何!

 何が起きたの!

 っていうか幽霊さん、あなた、どこに行く気ですかぁ~~~~!


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