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123_あなたにとって大切なこと

 

 大切な話を聞かせてくれたオレリア殿下。

 誰にも打ち明けていなかったという妖精のお友達の話。


「ごめんなさい、なんだか暗くなっちゃったわね」


 無理に笑顔を作るオレリア殿下を見て、私は考えた。


「オレリア殿下、ちょっと気分転換に、私と散歩しませんか?」

「……そうね、それもいいかも」


 そうして連れ立ってやってきたのは、騎士団の訓練場。

 話し込んでいる間にすっかり時間が経っていて、訓練はとっくに終わっていたようで、見学していたはずのシェリア殿下はもちろん、騎士達の姿もない。


「どうしてここに……」


「気分転換って、楽しいことをするのが一番いいんじゃないかなと思うんですよ」


 そう、別に女王になるとしても、大好きな剣を我慢する必要なないと思うのよね。

 ローゼリアが自分のやりたいことを何も我慢しなかったように、自由な王女がいてもいいと思うのだ。


「でも、私が剣を振る姿を誰かに見られてはあまり良く思われないわ」


「なるほど。それでは、見られなければいいですよね?」


「え……?」


 私に任せてほしい。


「闇魔法と聖魔法の合わせ技で、指定した空間をその外から見えなくする魔法とかも使えちゃいますから!」

「そ、そんなこともできるの?さすが大賢者様……!」


 ちなみに、これもローゼリアが何度も何度も抜け出して危険な目にあうから、危ない人に追いかけられて逃げられそうにない時のために編み出した魔法なのよね。


 ローゼリア、あなたのおかげで今、あなたの子孫の役に立てているわ!


 戸惑うオレリア殿下が剣を見つめているのを確認して、魔法を展開しようとしたところで。


「オレリア殿下、ここで何をしているんですか?」

「クリス……」


 あああ、タイミングがとっても悪いわ!まさかクリス様に見つかってしまうなんて。

 あと一歩早く魔法をかければ見つからなかったかもしれないけれど、そもそもクリス様はオレリア殿下を探してやってきたようで、それならばどっちにしろいつか見つかったわねと思いなおす。


 この魔法は万能ではなくて、その空間にいる相手を害意なく探している相手には、じわじわと効果が消えてしまう仕組みになっているのだ。

 おまけにその相手を心配する気持ちが強ければ強いほどすぐに効果が消えてしまう。

 なぜそんな魔法にしたのかというと、ローゼリアを探しに来た城の者からは逃げきれないようにするためにほかならない。


 今思い返すと、ローゼリアってば本当に手のかかる飼い主だったわね。

 まあ、そんなところも大好きだったんだけれど!


 私がそんなことを考えている間に、クリス様はオレリア殿下の目の前に立っていた。


「何をしているのか聞いているんです」


 どこか責めるような口調にも聞こえるけれど、その声には心配の色が見える。

 バツが悪そうに目を逸らすオレリア殿下を前にクリス様はやるせない顔をすると、オレリア殿下の両手をそっと握った。


「剣を握りたいんでしょう?ふるいたいんでしょう?なぜそう言ってくださらないのですか」

「……え?」

「素振りより、相手がいる方が楽しいと、あなたが言ったんじゃありませんか。……あなたがこの訓練場に入り浸っていた頃、お相手していたのが私だったこと、もう忘れてしまいましたか」


 まあ!まあまあまあ!

 これはひょっとして、目を逸らしておいた方がいいかしら?

 いえ、でも、私は今、オレリア殿下のメイドなんだもの、しっかり殿下を見ておかなければいけないわよね?

 そう自分に言い訳して、じっとオレリア殿下とクリス様のやりとりを見つめる。


「見過ぎだろう」

「あたっ!フェ、フェリクス様!」


 後ろからいつの間にかやってきていたフェリクス様に頭を小突かれてしまった。


「あれ?アーヴィン様はどちらに?」

「訓練の見学が終わった後、非番だから可愛い娘を探しに行くだなんだと言って帰ってしまった。暇になったのでルシルを探していたらクリス殿と会って、ついてきたんだ」

「そ、そうですか」


 どうやらアーヴィン様は最初のイメージどおり軟派な男性らしい。


「ああっ!そうこうしているうちに、お二人が剣をとっていますね!?一応、念のため、やっぱり魔法をかけておきましょう。えい!」

「……今はどんな魔法を使ったんだ?」


 そうですね、この魔法は中からだと何の変哲もないですから。

 フェリクス様に今私がしたこと、外から見えなくなっていることを説明する。


「またあなたは規格外な……。いや、もう今更なにをしても驚きはしないが」


 オレリア殿下とクリス様は剣を構え、向き合っている。

 そのまま打ち合いが始まった。


「すごい……!」

「ああ、とんでもない腕前だな」

「そうですよね!?素人の私にも分かります!ああ、エフレンが見たら喜びそう!」

「エフレンって、伝説の勇者だよな……勇者の側でその剣技を見続けていた者をもはや素人と呼んでもいいのか……?」


 オレリア殿下は、騎士であるクリス様にも引けを取らない剣捌きを披露している。

 キン、キン!と剣と剣がぶつかり合う音が響いている中、いつの間にかフェリクス様の髪の中から、毛玉ちゃんがひょっこり顔をのぞかせていた。

 ふふふ、毛玉ちゃんも二人の手合わせが気になるのね。


 無理もない。オレリア殿下の剣は、とても美しいもの!


 その表情も、今まで見たどの顔よりも楽しそうで。

 やがて、二人の動きが手合わせから、舞うような、踊るようなものに変わっていく。


「これは、剣舞だわ」


 オレリア殿下とクリス様の息はぴったりで。そのまま二人は息が切れてしまうまで剣舞を舞っていたのだった。




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パワー型つよつよ聖女の新連載もよろしくお願いします(*^▽^*)!

【異世界から勇者召喚するくらいなら、私(ダメ聖女)が世界を救います!】
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